第5話 「練習1」
ようやく魔法の練習編になりました。いつも読んでくださる方本当感謝です。
あの後俺とアイリスは、食堂からしばらく脱出できなかった。
ギルドマスターが俺に抱きついてきたり、酒を飲ませてきたりと、やりたい放題だった。
アイリスは俺を助けようと頑張ってくれていたが、全く歯が立たなかった。
日付けが変わる頃には、ギルドマスターは力尽き、テーブルに突っ伏したまま寝ていた。
流石のアイリスも、部屋まで運ぶ気力が残ってなかったらしく、毛布だけかけて俺と一緒に食堂から脱出した。
そこからはお互い疲れきっていたので、各自部屋に戻ったのであった。
「本当疲れた。今日1日色々あり過ぎたな」
ベッドに倒れ込みなが、俺はそう呟いていた。
そのまま意識を手放した。
ドアをノックする音で俺は目を覚ました。
一瞬自分がどこで寝ているのか、わからなかったが、すぐ記憶が蘇った。
「夢じゃなかったんだ」
「何がですか? 朝ごはんできましたよ」
アイリスはすでに部屋に入ってきており、恥ずかしい独り言を聞かれてしまった。
「何でもない。それよりアイリスは早起きだな」
「そんな早くないですよ。もう日が昇ってますから」
アイリスは今日、昨日の件で寝坊してしまったらしい。普段は日が昇る前に起きるそうだ。
「ギルドマスターは起きてるのか?」
「おばあちゃんはまだ寝てると思います。いつの間にか、自分の部屋に戻ったみたいですけどね」
あれだけ騒いでいたんだ。お昼くらいまで寝ているだろうなどと思いながら、食堂へ向かった。
「寝坊しちゃったんで簡単なものしか作ってないですが大丈夫ですか?」
「全然大丈夫。むしろ今までは朝あまり食べてなかったからな」
「そうだったんですね。これからは、ちゃんと食べなきゃダメですよ。」
アイリスに怒られてしまったので、この家で生活している間は朝頑張って食べるとするか。
ちなみに朝食はパンみたいなモノと、スクランブルエッグ、後サラダが並んでいた。
朝食を食べ終え少し休んでいると、顔を歪めたギルドマスターが食堂に入ってきた。
「ゔぅぅ••••••頭が痛いわい。アイリス水をくれんか?」
「いい歳してい飲み過ぎだよ、おばあちゃん」
そう言いながら水を差し出した。
「面目ない。今日からは少し控えるかのう」
「いつもそう言ってい控えてくれないじゃない !」
「大きな声は出さんでくれんかのう。頭に響く••••••」
「もう! 次やったら知らないからね!」
二日酔い大変そうだな。今日から大丈夫か?
「わかったわかった。それよりアイリス、今日からしばらくギルド頼むよ」
「わかってるよ。何があったら連絡するからね。それとイズモさん頑張って下さいね」
そう言いながらアイリスはギルドに出かけた。
「それじゃイズモ、後1時間くらいしたら裏の空き地に来るのじゃよ」
「わかったがあまり無茶するなよ。」
「年寄り扱いするな」
そんなやり取りをした後、俺は部屋に戻った。
部屋に戻ったのだが、時間まで特にする事もなくしばらくベッドでゴロゴロしていたが、魔法をこれから使うとあって、ワクワクとドキドキで居ても立っても居られず、30分も早く空き地に行った。
さすがに空き地という事もあり、草が生えている以外何もなかった。
とりあえず時間までストレッチをしたり、体を動かしたりとウォーミングアップをした。
あまりやり過ぎて疲れてしまっては意味がないので、程々の所でやめギルドマスターを待った。
来るまでの間、ちょっとだけ魔法を練習する事にした。
昨日巨大なスライムを倒した時みたいに、イメージしながらやってみた。
すると、普通に昨日と同じ様な火の魔法を使う事が出来た。
調子にノッた俺は、次々にイメージし魔法を使った。
火、水、土、風、氷、雷、光、そして闇。
気づいた時には、辺り一面何も無くなっていた。
「まずい、やり過ぎた」
「まったくだのう。巨大なスライムを倒したとアイリスから聞いておったが、これ程とは思わんかった」
いつの間にか時間になっていたらしく、ギルドマスターが来ていた。
「初心者にしては上出来じゃのう。今日教えようと思っていた事自分でやってしまうとはな」
「それじゃ今日は何やるんだ」
「これだけ出来れば次の段階じゃな。ちょっと見ておれ」
そう言うとギルドマスターは、手のひらにリンゴ位の大きさの赤い光を出した。
「こうやって魔力を一点に留める練習じゃ。イズモは、魔法を使う時の魔力消費に無駄が多過ぎるからのう」
俺の場合、1でいいところを10使う位無駄に魔力を消費しているらしい。
「とりあえずやってみるのじゃ」
言われた通り、とりあえずやってみた。
何これ、全然出来ない。
「出来んでも無理もないじゃろ。昨日初めて魔法を使ったのじゃから。むしろあれだけの威力の魔法を使った方が驚きじゃ」
それからしばらく魔力コントロールの練習をしたが、全然出来なかった。
「全然出来ない。なんかコツみたいのあるのか?」
「そうじゃのう••••••たまごをイメージするといいかもしれんのう」
たまごか•••••••ちょっとやってみるか。
俺はイメージに集中してやってみた。すると今まで全然出来なかった事がすんなり出来た。
ただ大きさが、優に1メートルを超える大きさだった。
「随分と大きなたまごをイメージしたのう。でも感覚としてはそんな感じじゃ」
俺はふぅーーっと息を吐き巨大な魔法で出来た球を消した。
「かなりしんどかった。あれ以上小さくとか無理だな」
「それをやる練習なんじゃがのう。ところでイズモ、体に不調とかはないかのう?」
「そうだなぁ••••••強いて言えばお腹が減ったくらいかな」
「そうか••••••確かにもう昼じゃからそろそろメシにでもするか。食べたらまた練習するじゃからな」
(かなりの魔力を使ってるはずなんじゃが、全然魔力が切れる気配がないのう。どれだけこやつは魔力をもっているのじゃ?)
「そんなに時間がたっていたのか。それでメシはなんなんだ?」
「わからんのう。アイリスが朝何か作ってくれてたと思うが」
いつの間に作ってたんだ!?
「それじゃ一度家に戻るかのう」
そうして俺とギルドマスターは、お昼ご飯を食べる為に家へと戻る事にした。
食堂にはアイリスが作ったと思われるサンドウィッチが置いてあった。
お昼も食べ終わり、少しの休憩の後練習を再開した。
コツは掴んだがなかなか小さくする事が出来ない。
「本当に難しいな。思う様に行かない」
「あまり難しく考えず、楽にやればいいんじゃよ」
そう言われてもな••••••
「時間はたっぷりあるのじゃからゆっくりやればいい。儂ちとギルドの方に顔を出してくるから、体にちょっとでも異変が起きたらすぐに練習やめるんじゃよ」
「わかった。そういえば今日も俺、この家に泊まるのか?」
昨日は仕方がなかったから泊まらせてもらったが、今日はまだ日も高い。今からであれば、宿くらい取れるだろう。
「そのつもりじゃが?正直、行き帰りが街だと面倒くさい。後アイリスの婿候補じゃな」
「何言ってんだ!? アイリスの事は冗談かと思ってたら本気でそんな事考えてたのか?」
「もちろんじゃ。だから頑張ってのう」
そう言い残しギルドマスターは、ギルドへ行った。
行き場を無くした思いを発散するかの様に、魔法を使い続けた。
時間にすると1時間位。それだけの時間、全力で魔法を使い続けたのだから、さすがにフラフラになった。
「やり過ぎたな。気持ち悪い」
魔力が残り少ないのか、力があまり入らない。
俺は少し休憩する事にした。
改めて辺りを見ると、所々地面がえぐれていたり草木はもちろん、何も無くなっていた。
「魔法ってすごいな••••••」
始めは使える事に興奮したが、今の惨状をみると使い方次第でとんでもなく恐ろしいものになってしまうと思った。
「頑張って上手くコントロールしなきゃな」
ほんの少しだが回復したので、また練習を再開した。
思うがまま魔法を使い、気分的にも大分スッキリしたので、お昼前よりリラックスしていた。
「たまごをイメージして••••••」
俺は右手を前に出し集中した。
すると赤い光の球が現れた。今までみたいに巨大なモノではなく、ピンポン球くらいの大きさのものが。
「ようやく出来た!! しかもかなり小さく」
この感覚を忘れない様にしなくちゃな。
その後、しばらく練習をしほぼ完璧にできる様になった。
「とりあえずものにできたな。まだみんなギルドから帰ってきてないし、明日にでも見せるか••••••」
そう思い練習をやめ家に戻ろうとしたところで、俺は意識を失った。
「無茶しよって。倒れるまでやる馬鹿どこにおるのじゃ••••••。でもよく頑張ったなイズモ」
しばらく姿を消して様子を見ていたギルドマスターが微笑みながらつぶやいていた。
「ここで寝かしとくわけにはいかんから、さっさと家に運ぶかのう」
そう言うとイズモの両手を持ち、引きずる様に家へと帰って行った。
次回も練習編を予定してます。