第2話 「ダーズリ」
今回は、ちょっと長くなりそうだったので、少し中途半端な感じになっちゃいました。
しばらくして、ようやくダーズリの街に着いた。
アイリスがすぐ近くと言っていたので、数分かと思っていた俺は、大分予想を裏切られた。
「全然近くないじゃん」
俺は愚痴をこぼした。
アイリス曰く、隣の街までは3、4日かかるのでこれくらいは、近い部類らしい。
確かに、さっきの戦闘で大分派手にやったのに、なかなか応援が来なかったのも頷ける。
ただ先ほど戦闘で、かなり疲弊してアイリスだったが、俺より疲れた顔をしていない。
すごい回復力だななどと思っていると、
「街に着いたので、とりあえずギルドに報告しなくちゃ行けないので、着いてきてもらえますか?」
「了解。それでギルドは近いのか?」
「街の中なので、さっきより近いですよ」
軽くアイリスに毒づかれてしまった。
「近いなら、もう少し頑張るかな」
そう俺は、独り言のようにつぶやいた。
ダーズリの街は、中世ヨーロッパを彷彿とさせる、煉瓦造りの建物がキレイに並んでいる。
ただ、前の世界とは違い、様々なところで魔法技術が使われている。
例えば、街のいたるところにある街灯は、一見ガス灯の様にみえるが、火の魔法を応用したものであったり、水道なんかも水の魔法の応用だったりするらしい。
とりあえず、生活に不自由はしなそうだ。ただお金があればの話だが。
そうこうしていると、ギルドに着いた。
今回は本当に近かった。
そこは、周りの建物とは明らかに違い、かなり頑丈に作られた、要塞みたいな建物だった。
「すごい建物だな」
「みなさん最初はそういいますよ」
なんでも、こんな要塞みたいにしたのは、昔、冒険者達が暴れて、めちゃくちゃになってしまったことが、あったそうだ。それで今みたいな凄く頑丈そうな建物に造り替えたらしい。
ちょっと過剰防衛な気もするが••••••
ギルドの中に入ると、沢山の冒険者らしき人たちがいた。
筋骨隆々のマッチョや、怪しげな雰囲気の魔法使い、新人のような初々しい感じのヤツまで、多種多様な人がいた。
「私は、さっきの件と穴報告をしてきますけど、着いてきますか? それとも中を見てますか?」
「ついて行くよ。 さっきから殺気がすごいから」
「••••••わかりました」
何故だかわからないが、このギルドにいる男の冒険者達全員から睨まれている。
多分一人になったら、殺られると思う。
まだ死にたくはない。
と言う訳で、俺はアイリスについて行った。
アイリスは、何食わぬ顔で受付へと向かった。
「相変わらず、モテモテだねぇ。アイリス」
「何を言っているんですかサリー!」
サリーと呼ばれた受付の女性は、俺らより少し年上そうな、メガネをかけた茶色いロングヘアで、アイリスとは仲が良さそうだった。
「冗談ばかり言ってないで、仕事してください」
「わかってるよぉ。これにまとめてだしてねぇ」
そう言うとサリーは、アイリス紙を手渡した。
「イズモさん、私ちょっと報告書書かなきゃなので。もしギルドとか興味があればどうですか?」
「そうだな••••••」
「それとも、もう何処かのギルドに所属してるのですか?」
「いや、俺ギルド初めて来たからそれはない」
「そうですか。なら説明してもらってはいかがでしょうか?ね、サリー」
いきなり話をふられ、一瞬凄く面倒くさそうな顔をしたサリーが、ギルドについて簡単に説明してくれた。
・登録了解は銅貨10枚。退会する際は返金される。ただし、なんらかの理由で強制退会の場合は返金されない。
・ランクがありSランクが1番上でその下がAと続き、1番低いランクがGランクである。又、ランクによってカードの色が変わる。Sが虹色、Aが紫、Bが青、Cが水色、Dが緑、Eが黄色、Fがオレンジ、Gが赤である。
・ランクは、ギルドが主催する試験や、モンスター討伐による功績など、様々な要因で上がるらしい。
・クエストは、自分のランクより1上までしか受けることが出来ないが、例外もたまにだがある
・ギルドと提携している宿、武器屋、道具屋などランクによって割引がある。
「他にも、かなり色々あるけどぉ、関係してきそうなことはこれくらいかなぁ」
かなり色々あるんだな••••••ただ問題なのは、
「俺そういえばお金ないんだけど••••••」
すると、報告書を書いていたアイリスが、
「さっき拾ったスライムの心臓を売れば大丈夫じゃないですか?」
「なるほど。サリーさん、これ換金できる?」
俺は懐から、先ほどの戦いで手に入れた、スライムの心臓を出した。
「随分と状態のいいやつですねぇ。これなら十分大丈夫ですよぉ」
「そっか。ならそれ換金して、ギルド登録したいのだが」
「わかりましたぁ。ならこちらの書類に、必要事項を書いてくださぁい」
そう言うと、登録用紙をくれた。
その紙には、名前や性別、身長体重など、書く欄が様々あった。
ただちょっと書けない欄があったので、サリーに質問した。
「俺、魔法の属性がわからないんだけど」
「ならここでお調べしますねぇ」
するとサリーは、引き出しの中から、占い師が使うような水晶の球を取り出した。
「ここに手をかざしてもらえますかぁ」
俺は水晶に手をかざした。
が、しばらくても何も起こらない。
「壊れちゃったのかなぁ?」
そこに、報告書を書き終えたアイリスが来た。
「何をしてるのですか?」
「イズモさんの魔法属性を調べようとしたんだけどぉ、全く反応しないのよぉ〜。アイリス、ちょっとやってみてぇ」
アイリスが、水晶に手をかざすと、水晶が赤く染まった。
「壊れてないじゃないですか。」
「おかしいなぁ。イズモさんもう一度やってもらっていいですかぁ?」
俺は、また手をかざした。
すると今度は一瞬白く光り輝いて、水晶が割れてしまった。
一同、一瞬何が起こったか分からなかった。
「ギルドマスターにきいてみるのでぇ、その欄はとりあえず書かなくていいですぅ」
ちょっとしたハプニングがあったが、一応書類を書き終えたので、サリーに渡した。
「魔法属性の欄以外は大丈夫ですねぇ。さっきもいいましたがぁ、ギルドマスターに聞いてから登録になるのでぇ、ちょっと時間がかかっちゃいますぅ」
「別に大丈夫。どれくらいかかりそうなのか?」
「遅くても1時間くらいですかねぇ。なんならぁアイリスとデートでもしてきてはどうですかぁ?」
その言葉に、アイリスが顔を赤くして、
「サリー! ふざけてる暇があったら早く仕事しなさい!」
「怒らないでよぉ。なるべく頑張るからぁ」
そう言うと、急ぎ足で奥へと消えていった。
「サリーの冗談は気にしないでくださいね! あの子いつもあんな調子なので、ほんと困っているんですよ」
「アイリスも大変なんだな。まあ、デートではないけど、時間も出来たことだし、本題の服を買いに行かないか?」
俺がついて来たのも、アイリスが、自分のせいで服をダメにしてしまったと勘違いをし、お詫びがしたいって言ったためだ。
「すみません。私が言いだしたのに」
「気にしなくていいよ。そもそもアイリスのおかげで助かったし」
「ありがとうございます。ではサリーが早めに戻ってくるかもしれないので行きましょうか」
と言うわけで、俺たちは服を調達しに向かった。
「こんにちは。ケイトおじさんいますか?」
防具屋に入ると、アイリスが店の主人を呼んだ。
この防具屋は、実はギルドの真ん前にあり、大体の冒険者はここを利用するらしい。
「おぅアイリス! よく来たな! 今日はどうしたんだ?」
まるで熊のような、髭面の大きなおっさんが、店の奥からでてきた。
「ちょっとこの人の服をボロボロにしちゃったので、そのお詫びを買いにきました」
「そうか! ボウズ大変だったな!」
そう大きな声で言うと、背中を叩かれた。
憎しみというより、スキンシップによるものだが、俺は軽く吹っ飛ばされた。
「悪りぃーなボウズ! 大丈夫か?」
「イズモさん大丈夫ですか?」
俺は痛みをこらえながら、
「大丈夫。慣れてるから」
おれはこっちに来てから、散々なめにあっているので、ある意味大丈夫であった。
「ケイトおじさん、丈夫で、動きやすそうなものってないて、何かないですか?」
「そうだな••••••これなんてどうだ?」
ケイトは、黒を基調としたゆったりめのレザーパンツとレザープレート、フード付きのコースを出してきてくれた。
「かっこいいな! 着てみてもいいか?」
「もちろんいいぞ!」
了承を経て、試着することにした。
見た目ほど重さを感じず、凄く着心地がいい。
「そいつは黒炎龍の皮が使われているから、ちょっとそこらでダメになることはないからな!」
黒炎龍ってなんなんだ?まさかこの世界にはドラゴンがいるのか!?
「黒炎龍ですか!? そんな貴重な素材を使ったものなんて、よく手に入りましたね」
「まーな! 企業秘密だが、合法的なルートで仕入れたから品質は間違いないぞ!」
確かにものは凄く良さそうだ。
ただ、その分値段がやばそう。
そう思い、違うもっと安そうなのにしよとしたら、
「イズモさん、それ凄くお似合いですよ。それにしますか? 性能も良さそうですし」
「いいのか?かなり高そうだが」
「大丈夫ですよ。私こう見えても、Aランクなので」
そう言うと、おもむろにギルドカード出した。
確かにアイリスのカードは、紫色でAランクの表示がある。
まさか、アイリスがAランクだとは思わなかった。
「というわけでケイトおじさん、今イズモさんが着ているやつでお会計お願いします」
「まいどあり! 金貨2枚だ」
「わかりました。カード払いでお願い致します」
このギルドカードには、クレジットカードみたいな機能が付いていて、重たい硬貨を常に大量に持っていなくても、楽に買い物ができる。
ただ、ギルドの加盟店でしか使えないので、多少は硬貨を持っていなければいけないが。
ちなみに後から聞いたのだが、銅貨<銀貨<金貨の順で価値があり、大体金貨一枚枚で100万円くらいの価値である。
と言うわけで、買い物も無事終わった。思いのほか早く済んだので、アイリスが、
「そういえば、お腹空きませんか?」
「確かにお腹減ったな。 何だかあっちから、いい匂いがしないか?」
匂いのする方を見ると、そこには肉の塊を串に刺し、タレを何度も付けながら焼いて入る串焼き屋があった。
香ばしい匂いのせいで、お腹がやたら鳴る。
「あれなら、すぐ食べれますね」
「ホントうまそうだな」
「それじゃ、あれ買ってきますね」
お金を持っていないのであれだが、何だかヒモみたいな感じで、ちょっと嫌だな。俺も頑張ってアイリスに、何かしてやらないとな。
「おばちゃん!串焼き2本頂戴」
「やーアイリス。串2本だと、銅貨4枚ね!」
アイリスから串焼きをもらい、俺は肉の塊に食らいついた。
「これ滅茶苦茶うまいな!」
豚肉のような感じだが、筋張った感じはなく、ただ焼いただけなのに凄く柔らかい。そして何と言っても、このタレが絶品である。甘辛い感じだが、あっさりしていて食べやすい。
「そうなんですよ! ここの串焼き目当てにいろんなところから人が来ているって噂ですよ
俺は、自分で稼げるようになったら、また来ようと思った。
あっという間に食べ終え、俺達はやる事もないので早めにギルドへと向かった。
ギルドに入ると、最初来た時のような賑やかさはなかったが、皆一様に、俺たちの方を見てきた。
先ほどのように殺気ではなく、好奇の眼差しを向けてきた。
「どうなんってんだ?」
「本当どうなんてるんですかね?」
二人とも疑問に感じていると、
「遅かったですねぇ。本当にデートに行くなんて思わなかったですょ」
ニヤニヤしながら、サリーが声をかけてきた。
「だからデートじゃないから!」
アイリスは顔を赤くしながら否定したが、
「そういう事にしときますよぅ。そんな事より、イズモさんの事で、ギルドマスターがお呼びですぅ」
サリーは、アイリスの言葉を軽く流し、口調とは裏腹に真剣な感じでそう言った。
「おばあちゃんが呼び出すなんて、何か重要な事でもあったの?」
「そこまではわからないよぉ。ただ来たら部屋に呼んできてって言われただけだからぁ」
なんか色々大変な事になってるな。だからみんなが注目していたわけだ。
それより、
「アイリスのおばあさんて、ギルドマスターなのか!?」
「そうですよ。今は優しいですけど、昔はすごい魔法使いだったらしいですよ」
まさかの事実に、俺が驚いていると、
「今だって、すごい魔法使いじゃよ!」
そこには、アイリスと同じ様な、金髪で少しウェーブがかかった若い女性がいた。ただ語尾がやたら年寄り臭い。
「全然来ないから来てみれば、無駄話ばかりしよって。」
そう言いながら、近くにいたサリーの頭を叩いた。
「痛ぁーい! 私なにも言ってないじゃないですかぁ」
「すまんの。近くにいたもんでつい。それよりお主がイズモじゃな」
いきなり名前を呼ばれ、思わず驚いてしまった。
「そんな驚かんでもよかろう。とって食うわけじゃあるまいし。兎に角、早く儂の部屋に来い」
そう言いながら、アイリスのおばあさんであるギルドマスターを先頭に、俺らは部屋へと向かった。
なるべく次回の話を早めに投稿しますので、よろしくお願いします。