プロローグ
初めて書いた小説です。
暖かい目で見ていただけると助かります。
「うわぁぁぁ」
今俺は、空を飛んでいます。
飛んでいると言っても、ものすごい勢いで地面に向かって落ちていく形で。
何故、そんな事になってしまったのか。
それは、神様のせいだ。
それは、俺が飛ぶ少し前のことである。
****
「大学受かりますように」
俺は、明日に控えた大学の合格発表の前に、最後の神頼みに来たのである。
正直、近所の古ぼけた神社なので、あまり期待はしていなかった。
ちなみに、自己紹介をしておくと、名前は東雲出雲18歳。どこにでもいそうな黒髪で癖毛な、高校3年生である。
「お参りもしたし、そろそろ帰るか」
俺は、少しかじかんだ手を擦りながら参拝を終え帰ろうとした。
昼間だというのに、辺りには木々が鬱蒼と生え、薄暗く、人影すらない。
「それにしても不気味だな……」
思わず、声に出してしまうくらい辺りは静まり返ってる。
出雲は、足早にその場から立ち去ろうとした時だった。
「そんなに大学に行きたいの?」
後ろから急に声をかけられ、心臓が飛び出しそうになった。
振り返るとそこには、まるでシルクのような美しく長い銀髪の少女が立っていた。しかし、瞳の色がすべてを飲み込んでしまうような漆黒で、この世のものとは思えない感じだった。
「マジで脅かさないでくれよ。てか、お嬢ちゃん迷子?」
まじで焦ったわ。てか、さっきまでこんなところに女の子なんていたか?
そんな小さな疑問が頭に浮かんだが、目の前の女の子は、俺の話なんか無視するかのように、
「東雲出雲、あなたは大学行きたいの?」
質問を質問で返したのは、悪かったけどこっちの話も聞いてほしいわ……っん!? 今俺の名前言わなかったか!?
「だから、さっきから行きたいのって聞いてるのだけど、聞こえてる?」
「聞こえてるけど、てかなんで名前知ってんの?」
全く話が通じないな……
そもそも、俺はこの少女と初めましてだし、ロリコンでは全くないので、知り合いもいないし。
テンパってる俺を見て、謎の少女は一言、
「はぁ……。 約束すらも覚えてないのね」
少女は、少し寂しげな顔したと思ったら、急に、
「忘れてるなら、思い出させてあげるわ」
「……え?」
不敵な笑顔と共に、すべてを包むような光を放った。
その瞬間、今まで立っていた神社の硬い石畳がなくなるのを感じた。
「何がどうなってんだよ!?」
あまりに強い光だったので、目が見えるようになるまで、時間がかかってまった。
段々と目が見えるようになると、そこはさっきいた神社とは全然違う、まるで、全部雲で出来てるみたいにふわふわの空間になっていた。
しばらくテンパってると、例のごとく後ろから
「思い出した?」
「うぉい!?」
ほんと、後ろから声をかけてくるのはやめてほしい。
次あたり、口から心臓がこんにちはしてしまう。
「思い出したも何もない、俺こんなとこ知らないし」
「嘘でしょ?昔ここで約束したじゃない」
約束?なんのことだ?このちょっと頭の痛い女の子の妄想か?などと思っていると、女の子が、
「これも覚えてないの?」
女の子の手には、泥だらけの紙の切れ端みたいなものが握られていた。
その紙を押し付けるように渡され、見て見ると、そこには、『なんでもけん』とミミズが這ったような汚い字で書かれていた。
「これは……!?」
それは、すごく見たことあるモノだった。
昔俺が小さい時、家族でキャンプに行ったことがあったんだが、初めての森でテンションが上がってしまい、気づいたら遭難してしまったことがあったんだ。
マジで、小さいながらこのまま死んじゃうんだなって思ったんだけど、ホントたまたま外国人の親子に助けられたことがあった。
その時、お礼として俺が女の子に渡したのが、今俺の手の中にある紙だったのだ。
「お前、あの時の女の子か!」
「ようやく思い出したの……。普通こんな姿なんだから覚えてるでしょ」
ごもっともです。自分が情けないな。でも、
「俺こんなところに来たことないけど」
「あっ……」
少女は、眼を泳がせながら早口で説明してくれた。
まぁーあれだ。話を要約すると、少女は神様で、その時ちょっとしたアクシデントがあり、その森にいたのだが、俺が偶然巻き込まれ、死にかけたらしい。もともと死ぬ予定のなかった俺は、魔法で治療を受けだそうだ。しかし、ただの人間に神の存在を知られるのはまずいので、記憶を改ざんしたんだと。
「それ教えちゃっていいのかよ?」
「それは大丈夫。もうあなたは元の世界に戻らないから」
……っは?どういうことだ。言ってる意味がわからない。
「だってあなたは、これから違う世界に行ってもらうんだから」
全く話が理解できない。超展開過ぎる。また軽くパニックを起こしていると、追い打ちのように、
「ちなみに、拒否権はないから。そのなんでもけん使うから!」
目の前の少女は、神様というか、悪魔の笑顔で俺に言ってきた。
「てか、元々お前が原因で起きたことなんだから、そんな約束ちゃらだろうが……」
早く、家に帰してくれよ。そう言うと、少女は、
「あなた、明日の8時52分に死ぬけどそれでもいいなら帰してあげるけど?」
まじですか!?どういうことだよ……
急な死刑宣告のせいで身体が震え始めた、涙目になっていた。
「あなたを死なせたくないから、無理言って他の世界に行かせてあげるんだから。感謝しなさい」
そう言うと、優しくハグをしてきた。
さすが神様というか、その瞬間、安堵というか安心というか、震えは治まった。
ただ俺は、少女の、いや神様の不敵な笑みを見逃していた。
「落ち着いた?」
離れながら聞いてきた。
気持ち的には大分落ち着いたが、一つ疑問があった。
「俺が元の世界からいなくなったら、みんな大変なことにならないか?」
「その辺は大丈夫。うまく処理してくれると思うから」
なにそれ?神様って会社的なやつなの……?
「だからそんな事気にしなくていいから。早く行くか行かないか決めて」
まぁー普通に考えたら、死にたくないし、行くしかないけどどうする。
「ちなみに、もし元の世界に戻った時の、俺の死因はなんだ?」
「えぇっと……水たまりが凍ってて、それを避けようとしたんだけど、目測を誤り滑って後頭部を強打して死亡らしいわよ」
すごくダサいじゃん!!友達とか後々絶対馬鹿にするタイプの死に方じゃん。
「行きます!違う世界とやらに!」
クソダサい死に方するくらいなら、訳のわからない世界の方がよっぽどマシだ。
「ようやく決心がついなのね。それじゃ、ちょっと右手を前に出して」
言われるがまま、俺は右手を前に出した。
すると、神様がなにやら呪文みたいなものを唱え始めた。
程なくして、右手首が淡く光り出し、呪文を唱え終わると同時に、光は消え鈍い痛みが走った。
「これで、契約は完了ね」
契約?まさか!?
「騙すつもりはなかったんだけど、今回も私絡みのアクシデントなの。巻き込んでごめんなさい。でもその力があれば、向こうの世界でも生きて行けると思うから♪」
完全に騙された。しかも一度ならず二度も。
「伝えるの忘れてたけど、今から行く世界は、剣と魔法の世界だから。前の世界のゲームとかアニメとかでよく出てくるヤツね」
「まじで!?それじゃ俺も、魔法とか使えるのかよ」
「使えるとは思うけど……」
さっきまでの事を一瞬わすれ、わくわくしてしまった。しょうがないよね、男の子だから。
「というわけだから、そろそろ向こうの世界に移動させるわよ。最後に言い残す言葉とかある?」
「そうだなぁ……『息子は元気に旅立った』と言っといて」
「……そう、わかったわ。そう伝えといてもうわ」
目の前の少女は、かなり困惑した表情をしてた。
正直、俺自身も、将来の自分に宛てた手紙くらい、どうでもいい言葉だと思う。
「そういえば、言葉とかは通じるのか?」
「それは大丈夫。さっきの契約のやつの力で自動変換されるから」
なら安心だな。話が通じませんじゃ、なにもできないからな。それにまた勉強とかしたくないしな。
「それじゃ、あなたにとっての新しい世界に行ってらっしゃい。後これは餞別だか受け取っときなさい」
そう言って、漆黒の指輪を出雲は貰った。
「ありがとう。頑張って生きるわ」
なんか騙されたけど、神様実はいい奴なんだなぁ、などと思っていると、足元が急に無くなり、落とされた。
「頑張って生き延びてね!」
落とされながらも、神様の顔を見たら、子どもが大好きなオモチャで遊んでいる時の、最高の笑顔をしてやがった。
次回は出雲の異世界での冒険がはじまります。