第六話
風紀委員のアナウンスとともに決闘は始まった。
『双方動かない!どちらが先に動くことになるんでしょーかっっ!!』
進行というより実況だ。
「京介くんはどう見る?」
「二人の実力は然程知らないんで何とも言えないですね。小規模な魔法はまずきかないでしょうし大規模な魔法は大雑把になりがちなものです。結局純粋な武器のぶつかり合いになるでしょうね。」
「なるほどぉ、そういうものなのか。俺は純粋な術士だからそういう戦況の予測みたいなのはあんまできないな。戦況の予測って言葉に違和感あるが。なんで京介はできるんだ?」
「自分の体を色々と魔改造してるんだよね。それのおかげで強度が上がってるから近接戦も練習してたんだよ。だからどんな風に戦況が動いていくのか考えることが多かったからな。術士ってそういうのあんまりしないよな。」
『おおっと、ここで日比谷君が動いたぁ!!正面から斬りかかる!!』
まずはひねった攻撃などせず文字通り真っ向勝負ということか。恐らくはこの攻撃で山吹先輩の実力を推し量ろうとしているのだろう。
日比谷の攻撃は小太刀でいなされる。テクニックについてはかなりのものだ。正面から受けてはいないのでまだパワーは分からないが。
『今度は激しいラッシュだ!山吹君はまさに柳に風といった感じで全ての攻撃を受け流していくぅぅぅ!!!』
かなりのスピードで繰り出されるラッシュ。後になるほどスピードが上がっている。それを涼しい顔して流す山吹先輩はかなりの実力者だ。
『ここで山吹君攻めに転じたぁぁぁーー!!!』
超スピードのヒット&アウェイ戦法で日比谷を翻弄している。
そのスピードに日比谷は対応できていない。このままではすぐにでも体力が尽きるだろう。
『何やら光のようなものが日比谷君を包んでいっていますね。これはどういうことでしょう。山吹君も攻撃の手を止めています!』
光属性魔法・・・?いや、あれは違うな。
「何なんですの、あれ?」
「日比谷は勇者だぜ?と、いうことは純粋に考えると行き着くのはどこだろうなぁ?」
「...勇者の力、しかもこの状況で考え得るのは自己強化くらいだな。」
「ご明察。あれは勇者の強化術だってことさ。京介くんなら想像できると思うんだけどさ、あれはどういう自己強化だと思う?」
早乙女先生が尋ねる。試されているのか?
「純粋に速度を上げて何とかなるようには見えませんね。反応速度なども上昇させるんでしょうか。普通そんなことができるのは高位の無属性魔法の使い手くらいですがね。」
「あぁ、あとはスピードと腕力を上げるんだぜ。結構な凶悪さじゃぁないか。」
「勇者というのはその絶対的な力でもって悪を滅する者だからな。馬鹿げた強さでも仕方ない。」
俺なら・・・負けないだろうな。
『おぉっと、日比谷君、山吹君の攻撃をガードし始めました。先ほどのは身体能力を上昇させる力だったのでしょう。しかぁしっ!山吹君速度を上げる!まだ実力を隠していたのかぁぁぁっっっ!!!』
これはもう決まったか・・・。
『ここで日比谷君は必殺技の使用を宣言したぁぁぁ!!』
日比谷の体と剣に眩い光がまとわりつく。バチバチと爆ぜているところを見ると光と雷の複合だろうか。
一瞬で距離を詰め山吹先輩に斬りかかる。砂煙が舞い観戦席からは何も見えなくなる。
「さーて、どうなる。」
楽しそうに理事長が言う。
砂煙が晴れるとそこには粉々に砕け散った地面と壁が見える。そして人影が二つ。どうやら山吹先輩はあれを耐えたようだ。そして・・・
「終わりましたね。必殺の一撃を防がれてまともに戦えるはずもない。」
「だろうねー。」
峰打ち。
『日比谷君の戦闘不能により山吹君の勝利ぃぃぃぃーーー!!』




