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主人公学園  作者: 幽夢
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第五話

 学校生活が始まって五日が経過したとき勇者こと日比谷がランキング三位の山吹先輩との決闘に挑戦したという話題で学校中が持ちきりになった。


この学校では強さのランキングがあり上位の者ほど優遇される。例えば専用の個室や娯楽施設の使用、武具のレンタルなどだ。


十位以上の者はその能力が学校中に公表され対策も取られやすいという。しかしそこは最上級の強さを誇るだけあってそうそう負けることはないらしい。


順位の変動については順位が下の者が上位の者に勝利した場合勝者は敗者の順位まで上がりそれ以降の者は一位ずつ順位が下がっていく。自分から挑戦すると一週間挑戦権を失うなどペナルティもある。


俺たち一年生の順位は入学時の成績で決められているようだ。能力について話して以来仲良くなった陽明と美冬を誘い観戦に行くことにした。名前で呼んでいるには順に


「せっかく仲良くなったんだからさ、名前呼びでいいんだぜ?」


「三千院という名字で呼びにくいでしょう。特別に名前で呼ぶことを許して差し上げますわ。」


と本人たちに言われたからだ。俺だけ名前で呼んでては悪いから俺も名前で呼んでもらうことになった。


観戦席に三人並んで座る。周りにはほとんど人がおらず快適だ。もちろんこの決闘は全校から注目されている一戦だ。ではなぜ周りにほとんど人がいないのか。俺たちのいる観戦席は特別で基本的に偉い先生なんかが観戦するときに使う部屋だ。そしてなぜそんなところにいるのかと言うと・・・


「まさか京介が理事長と仲が良かったなんてな。」


「まさかの人脈ですわね。さすがは東雲家といったところでしょうか。」


「私としては京介にこんなすぐに友人ができたのが『まさか』だな。」


理事長である霧隠紫吹(きりがくれしぶき)が言う。俺としては「失礼な!」という思いでいっぱいだ。


「それにしてもこんな部屋を使わせてもらってよかったのでしょうか。他の先生方は?」


ここにいるのは俺たちと理事長、そしてその幼馴染みだという早乙女右京先生だけだ。


「あー、あいつらは自分のクラスの生徒に発破かけるためにわざわざ生徒たちと同じとこで観戦してるからな。いいんだいいんだ。」


「いや~、特別扱いされてるみたいに思われそうなのは嫌なんだけどねぇ。」


すっかりこの空気に慣れたのかタメ口で陽明が言った。


「まぁ気にしなくていいんだぜ。なんたってこの紫吹が勝手に誘っただけだからな。」


ちなみに理事長も早乙女先生も女性である。


「そんなことよりそろそろ始まるぞー。」


「確か山吹先輩は忍でしたよね。」


「忍?名前ですの?」


「しのぶじゃなくてしのびだよ!」


「冗談ですの。」


「京介の言う通り忍だぜぇ。純粋に忍術のみであそこまで登り詰めたんだ。かなりの強者さ。」


忍という戦国時代を連想しそうなワードがぽんぽんと出てくるところが凄いと思う。いないわけではないがその数は両手両足の指で足りるほどだ。


「そもそもランキング上位って時点で強いことは分かってるんだがこんな時期に挑戦するなんて日比谷には勝算があるのか?」


「ないんじゃないのー?ただ上位陣の中で数少ない体術基本のスタイルだからね。与しやすいと思ったんだろうね。せめてもうちょっと順位の低い生徒でもよかったんじゃないのかねー。」


早乙女先生はあまり日比谷が勝てそうだとは思っていないらしい。投げやりな言い方からそれが窺えた。


「日比谷も無謀ですわ。最強の体術は魔法では崩せないというのに。」


「そんなスタイルで戦う人がいましたよね、理事長。」


「体術じゃなく念動力(サイコキネシス)だがな。」


「まぁ大差ないでしょう。単純な力という点においては。」


そこに今回の決闘の進行を務めている風紀委員のアナウンスが入る。


『これより高等部2年山吹半蔵と高等部1年日比谷流星の決闘を開始します!』

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