義姉と義弟の野望
十数以上の様々な形や大きさの大陸と、大小様々な無数の島が浮かぶ世界があった。雑多で様々な外見をした種族が暮らし、相争い、身に受けた祝福や魔力と積み上げた叡智を駆使して己の種族の繁栄を求める世界でもある。
この世界には、他の世界からの”転生者”や”転移者”と言った異物が稀に現れる。
ほぼ人族だけの”転移者”とは異なり、前世の記憶を持って生まれる”転生者”については、ある法則がまことしやかに伝わっている。
「種として劣勢になっている、形が人族に近い種族」
それが、条件だと。
事実、かつては最弱の地位に居た人族には数多くの”転生者”が現れた。彼らは強力な祝福を得て生まれ落ち、古い時代の記憶と経験を幼少の頃から受け継ぎ、また一部においては外の異界の知識を有す者も居た。受けた祝福により世に出れば例外なく、繁栄と叡智をもたらした。
人族が増えすぎた結果、長耳族や土精族、獣人族と言った、比較的人族に友好的だった種族が圧迫、あるいは迫害され始めるとそちらに”転生者”が多く現れ盛り返すと言った具合だ。
その繰り返しの果てに、今の世界が存在していると。
だが唯一、”転生者”を認めていない種族が居る。それは、かつて世界全体を支配下に置いていた魔族だ。
神代の時代から現在に至るまで、謀略や戦いを自分たちでも繰り返しつつも、全体で3桁にも満たない数ながら、幾度と無く世界を恐怖に包んだ魔族たち。
標準で千年を超す寿命、膨大な魔力、大型の魔獣も片手で捻り潰す膂力、強靭な生命力、種族特有の強力な特性発現、今尚支配下に置く数多くの魔獣ども。
上級以上の魔力量と特性を持つ魔族は、いつの頃からか魔貴族と名乗り、広大な領地を支配している。
魔王や強力な魔族であれば、事前の儀式での転生と継承を行うが、魔族としてのメンタリティを持たない”転生者”の出現とは弱者の証なのだ。
よって、その徴候が確認され次第、それが生まれた一族の手によって抹殺、あるいは軟禁される事となる。
「でもさー、同じ時代に生まれて出会ってる事自体、衰退の兆候だよね」
「…お願いですから、外では公言しないで下さい、義姉様」
玉座に座り、いつもの愚痴を零す城の主にして義姉に対し、義弟はまたいつものようにため息混じりに言葉を返した。
ここは、魔族との大戦争の後、人族が開拓を進める大陸にほど近い大きな島。島全体が魔族の支配地域であり、幾人かの魔貴族がそれぞれの領地を分割統治している。その分割統治された領域の内、人族の居る大陸を海を挟んで対峙するある魔貴族の小さな領地に二人の住処がある。
空はどんよりとした雲に覆われ、大地にはねじれた植物や樹が繁茂し、樹海の中からは不気味な叫び声や魔物の叫び声が響く。小高い山の上に、まるで光を反射しない石材を使って立てられた城が一つ、ぽつんとあった。その城の中の玉座に、見晴らせる一帯を領地として支配する魔貴族の一人が、義弟にして配下の一人と、日がな一日、愚痴を言い合っている。
「堅い堅いよ、おねーちゃんは悲しいよ我が義弟よ」
「迂闊な事はお願いですから言わないで下さい、いやほんとマジで」
何十年かに一度、魔貴族評議会に出席する日があるのだが、そんな時に先ほどのような発言をすれば魔族至上主義者達に袋叩きに遭いかねない。
「魔貴族って言っても、めっさ暇だしなぁ、いっそ魔王に立候補とかする?」
「やめてください、しんでしまいます。特に俺が。弱いので」
魔族において、力や魔力は絶対だ。強ければ正しく、弱ければ間違いだ。意見を通したければ、基本的に力づくである。義弟は中級魔族であり、上級に分類される魔族相手には、真正面からかち合えばほぼ勝ち目は無い。
義姉なら上級魔族のため中々の地位に立つ事はできるが、最高でも魔王直属の後宮兼身辺警護に入るのが精々だ。
また今現在、魔王に就任するほどの強大な魔族は居ない。かつての四天王は一人を残して今は居ないし、その四天王の生き残りは「我と同じ力を持たねば、新四天王どころか魔王を名乗ることは許さぬ」と言ってるものだから、魔族全体の方針決定やら調整はともかく、全体を動かすカリスマは居ない状態である。
「分体作って人族んとこ遊びに行くのがいいかなー、探索者とか面白そうじゃね、冒険者みたいで」
「単身の侵攻とか、今の評議会に許可取らないとまずいです」
「大丈夫だ、問題無い。偵察とか情報収集って名目だったら、お隣もやってるし」
今の魔貴族評議会の方針は、人族が来れば打ち負かすが、侵攻はせず力を全体で蓄えるようにとのお達しである。歴代でも随一と言われた故魔王様と、それぞれが以前の魔王と同じと謳われた四天王、それが人族が中心となり結成された勇者や英雄の連合軍と全力でぶつかった結果、魔王様は勇者と相打ち、四天王は一人を残してこれまた討ち死に、魔族も働き盛りの上級魔族の半数が討たれた事もあり、流石にびびったと言う事だ。
現在は人族の領域に近い魔貴族達が偵察と称して魔力で分体を作って探るのがトレンドになっている。中には人族に広がる文化や美食に傾倒し、こっそり楽しんでいる魔族も居る。この島の魔貴族はそんな変わり種ばかりだ。特にお隣はその傾向が強い。滅びた四天王を輩出した元名門だが、生き残ったのは御歳僅か50歳の幼い姫君とお付の執事魔族と僅かな家来たちだけ。財宝は有り余る程有しているが、元の領地だった大陸一つは統治が行き届かないと返上しこの島に越してきた。父の敵について知ると情報収集を始めたはいいが、今はすっかり人族の文化や美食に魅せられているという。
尚、その姫君が最も傾倒しているのは、人族の間で流通する恋愛話を集めた本の収集である。
「いいんだろうか…、って私じゃ分体作る程、魔力無いですよ」
「後で手段について教えるから、ばっち任せておきたまへ」
妙に自信たっぷりの義姉。流し目で見てくるがそこは一応、家族である。
「不安すぎる…」
目を逸らし、今日何度目かのため息を吐く義弟であった。
さて、この姉弟であるが血は繋がっていない。え、知ってた?
魔王直属の騎士団に所属していた父の息子と、これまた直属の淫魔が集められた傾国部隊に所属していた母の娘、という組み合わせである。
それぞれ、傍系ながら古い血筋であり、伝統ある魔貴族的な考え方を持っていて、最初の伴侶はそれで選ばれた見合いだったのだが、一つ前の大陸間戦争においてお互いの伴侶が死ぬと、これまた本家の介入で結婚した。それぞれの立場を鑑みての結婚であり、愛なぞ一切無く、大戦争の折に二人揃って討たれた。
義姉と義弟には共通点があった。
特定の世界における前世の記憶持ち、魔族における禁忌、”転生者”だったのだ。父や母とは殆ど顔を合わせた事が無く、魔貴族と言うだけあって結構な頻度で(仕置やら壊れたりやらで)世話役が入れ替わったので特定の親しい相手なぞ居ない。ん十年単位でボッチ生活である。魔族の精神耐性というか図太さが無ければ発狂しかねない子供時代だ。
再婚後、幼いころはお互い妙な距離感と緊張感を持って接する不思議な姉弟だった。腹の探り合いとも言うべきか。
戦争の中盤、両親の領地から使用人や領民を脱出させようと飛空艇を用意した際、大陸からの航海中、暇すぎた飛空艇の船上で言ってしまったある言葉がきっかけでお互い、わかってしまった。
「ぬるぽ」
「ガッ」
「「…」」
「OK、同輩ゲット」
「流石だな義姉者」
なんとも酷い。
その後は避暑地であった島の領地を接収、管理しきれない領域に落ち延びてきた魔貴族や魔族を受け入れ、他の大陸に移りたい連中を送り出して、領地支配を安定させて今に至る。
父の主立った領地は元々、隣にある大陸の端に存在していたのだが、人族が支配するに至り避暑地代わりだったこちらの島に姉弟は居を構える。大戦争の火種は飛んでは来なかったが、戦後、この島の支配の権利と財産だけが残された。顔を覚えていない父や母直属の使用人達はさっさといなくなってしまい、今は領地内に移住してきた下級魔族を使っている状態だ。
「ま、なんか腹に一物抱えてそうな中級魔族とか目だけギラギラした下級魔族とか、部下には流石に要らないのですしおすし」
「家の財産、持ち逃げしそうになったときは流石に俺もキレちまったよ」
その際、一人残らず粛清した。中級魔族であった義弟がありとあらゆる技術や罠を総動員して捕縛、義姉はまだ未熟で中級魔族だったのだが、効率は悪いながら触れた相手より生気を吸い取り上級魔族となった。
「…もっと効率良く吸い取ればよかったのに」
「やです、好みがあるので」
「左様ですか」
昼を過ぎ、魔族に取っては早朝、義姉と義弟にとっては午後というかおやつタイム。
義姉はクッキーと紅茶を楽しんでいる。
「所で分体の件ですが」
「ふむ、早速ですか。そういや、幼なじみちゃんどうしてる? 城の行動範囲違うから最近、滅多に合わないけど」
「…何故そんな事を聞くんですか。いやま、元気にしてますけど」
幼なじみちゃんとは、義弟の専属メイドとして雇っている下級魔族だ。背は低いがメリハリのあるバディをしており、顔がゆるふわ可愛い系でもあるので義姉にとってもお気に入りである。尚、義弟がこの城に一人住んでいた際、抜けだして遊びに行った先にあった下級魔族の集落での出会いが馴れ初めである。
「離れに家族まるごと移住して、彼女は専属でメイドさんしてくれてるんだよね」
「ええ、執務とか手伝ってくれてます。家族も庭師やってくれてます。みんな優秀です」
「成程、やっぱ知性や器用さについては、下位魔族も雇用しないとならんね」
「私も中級入って毛が生えた位ですしね、それについては同意です」
今現在、支配地域に住むのは多数の下級魔族だけだ。島は全体的に地脈の位置があまり良く無いため、地霊を得て階梯を上げる以前に、日々必要な魔力を得るのがやっとである。ただ、下級とはいえ魔族は魔族であり、生息する魔獣程度には遅れは取らないので、専ら領民の魔力補給は魔獣狩りである。
「片手で魔獣狩る、本気狩専属メイドかー、夢が広がるよね、メイドさんだよメイドさん。服は私の趣味で英国風です」
「仕事に支障を来す恐れのない衣装なのは助かってますが…」
義姉のおふざけはスルーして、自分の分の紅茶を飲む義弟。義姉は少し不満気である。
正直な所、魔力と腕力で殆ど解決しようとする脳筋気味の中級以上の魔族と比べると、下級魔族の方がちゃんと知性を使うので二人にとっては馴染みやすい。手作りの教科書を領地民に配っており、識字率も向上中だ。
「あ、幼なじみちゃんに手は出した?」
紅茶を吹きそうになる。
「ぐごほっ…知ってる癖に」
ジト目で義姉を見るが、それ以上の爆弾が投下される。
「うん、知ってる。こないだ人族の記録魔法式手に入れてさ、遠隔設置に改造して録画と録音もばっちり護符に。昨日はイチャイチャ系でしたね、ごちそうさまです」
「今すぐ破棄して下さい!」
悲鳴じみた声を上げるが、義姉は何処吹く風と言った顔だ。
「やだよー、私にはしてくれないのに。おかずは必要でしょ」
「オカズって言うな、曲がりなりにも女でしょあんた。あと私、義弟ですからね」
あれだ、それなんてエロゲという所だ。黙っていれば美人の義姉であるが、中身や言動が残念すぎる。確かに顔立ちは義弟にとってドストライクで、魔族特有の不健康に白い肌を除いて好みではあるのだが、義姉であることと普段の言動があまりにもマイナスだった。
「いいじゃん別に、魔族って近親婚とか普通だし、遺伝病とか無いし」
「もうやだこの義姉」
「脅す訳じゃないけどさ、おねーちゃん夜が寂しい訳ですよ、おまけに…処女だし?」
恥ずかしそうに言うが、義姉の魔族としての発現因子は淫魔である。それも上級だ。触れただけで相手の生気と吸い取れる。口付けや生殖行動であれば、同格以上の魔族からも生気を奪い取る事ができる程だ。義弟は特殊能力は無いが魔力と生命力に優れた魔族らしい魔族で、中級魔族としての能力を防御に費やす事で義姉の無意識や意図的な誘惑の魔力に抵抗できている。
「…嘘つけ、淫魔系だろあんた」
「嘘じゃないです、今の所、吸ってきたのは奴隷で手のひら接触だけなので」
「だから奴隷購入予算が余ってたのか…」
両親が残したというかこっちの元避暑地に隠していた財産は、贅沢三昧はできないが魔貴族としての普通な生活をするにはかなり余裕がある。領民から献上される魔獣の素材は、他の魔貴族との交易の他、人族にもこっそり輸出する事で領地規模に比べて大きな収入になっているのだ。
「節約の為もありますが、最初はやっぱり、好きになった人がいいじゃないですか」
いやん、と言った具合に顔をうつむかせる義姉に胡乱げな目線を送る義弟。
一日一度、淫魔である義姉は奴隷から生気を吸い上げる訳だが、人族なら一日一人を空っぽにしてほぼ廃人にするのが淫魔的には普通な所、10名近くいる奴隷全てが夜から朝方にかけてぐっすり寝こむ程度であり、ここ数十年は密輸業者への新たな奴隷の購入要求は殆ど無い。
尚、奴隷の待遇だが元はご飯だった所、今は人族の密輸業者との交渉に当たらせている。一日三食で数日に一度は風呂に入れる上、領地内であれば行動自由としており、一日一度、当主である義姉の生気吸収によるだるさを除いて、楽な生活を送っている。去りたければ魔獣を狩って密輸業者に売り、代わりの奴隷を用意すればいいと伝えてある。ただ、家族の顔が見たい、骨を故郷に埋めたいと去った幾人かの奴隷を除いて、殆どがここの生活を望んで続けている状態だ。中には領内の下級魔族と結ばれ、奴隷から開放されてなお領内に住み着く物好きも居る。
閑話休題。
「初めてが義弟だったら萌えますが何か」
「この義姉、遅すぎたんだ、腐ってやがる!」
「前世だと腐女子でだめんずうぉーかーで中古でしたが、貢いだ挙句に借金苦で身投げしましたので、愛に餓えてるんですよほんと」
「さらっと暗くなる事いうな、こっちが凹むわ!?」
義弟は施設の出身ながらそこそこ充実した社会人としての生活を送った記憶があり、不幸な事故で電車にひかれてマグロ扱いから転生した。
だが、目の前の義姉はさらっと言った割にかなり厳しい最後を迎えたようである。
「それに昨日、幼なじみちゃんに義弟の愛が欲しい、寂しい、二番でいいからって泣きついたら許可もろたので」
「何聞いてくれてますかこの義姉ー!?」
幼なじみは下級魔族。この領地の主である義姉には基本的に逆らわない。命を賭してこちらに意見する時は稀にあるが、それは二人を慮っての事であり、それを咎めた事は無い。
義姉は「一緒に愛して愛されたい」と言ったら全力で応援してくれたとも付け加えた。義弟は頭を抱えた。
「下は未使用ですが、上の口はばっちりです、前世では同棲相手が生活費を使い込むパチンカスだったせいでピンサロとデリヘルで働いてもので」
「さらっときついカミングアウトしないで!?」
「火男バキュームでディープスロート対応です。ごっくんはオプションですが義弟サービスで無料にします」
「やめて! 子供の頃から見慣れた顔が変形とか、なんかトラウマになりそうだからやめて!」
お互い一緒に過ごしたのは100年余り。知性はともかく外見が幼児(ただし50歳前後)であった頃からの付き合いである。それぞれ”転生者”とわかったのは50年程前だ。人族に換算すればお互い15歳程度だったりする。それでよくもまあ我慢したものだと、今更ながら二人はそれぞれ、自分を褒めてやりたい気分だった。根本的に二人共変である。
「えー、それが背徳感で燃えたりしない? がっつりご奉仕の後は房中術で力付与してぐるぐる魔力を回転です、花弁回転は身が足らないのでごめんなさい」
「近親相姦の属性無いから!? おまけにそんな事を申し訳なさそうに言わないで!?」
椅子から立ち上がり、じりじりと逃げようとする義弟。
椅子から身を乗り出し、わきわきと手を伸ばす義姉。
「大丈夫、死んだ親たちの再婚でしたから元は他人です。魔族のそれも上級淫魔の処女を貰って更に房中術、倍率どん、更に倍、多分上級に上がるので軽く分体作れるようになります、お得ですね、やったね義弟ちゃん、家族が増えるかも?」
「おいやめろ」
思わずツッコミを入れてしまった。その隙に義姉が飛びかかった。触られた途端、生気が吸われて身体が脱力する。そこに<束縛>の魔法が襲いかかり、義弟は縛り上げられた。声も上げられない。弱った所に介入されて、口元に<沈黙>がかけられたからだ。そしてわきわきと動いていた指が、がっしりと義弟のズボンにかかった。
「では、いっただっきまーす♪」
「…! …!」
「まあ、お久しぶり?」
魔法で口元近くに冷えた水球を作り、それを吸い付くように飲み干す。乾きを癒し、体調を治癒魔法で整え、荒い息を落ち着けた所で義姉が口を開いた。
「…凄かった。あれですね、義弟くんは欲望開放すると野獣でしたね」
義姉は身体を起こそうとするが、辛うじて動くのは上半身だけだった。時折、思い出したかのように身体がぴくりぴくりと動く。既に身体を離しているのだが、身に受けた行為の余韻が今もなお反響しているのだった。
「ごめんなさい…」
顔を向けると、何故か寝台の上で正座をしている義弟がそこに居る。身体にはくちづけの跡と爪で刺したような跡が無数にあった。
「思い出したらまた興奮してきました。今度は吸い取っていいですか全力で」
「やめてくださいしんでしまいます」
上級淫魔の吸精は上級魔族でも無ければ防げない。性的接触の場合、全力なら中級魔族程度はほぼ一瞬で魔力も生気も根こそぎ吸い取ることができる。
「大丈夫、今の私の全力でも吸い取りきれない位です、房中術の成果ですね」
そう言われた義弟は、疲労がある筈なのに身体に漲る精力と魔力に気づく。
「これが…上級魔族の魔力?」
「その通り。後半は義弟くんのペースだったでしょう?」
「…ええ、まあ」
「流石に貪られ過ぎて腰が抜けました。胃もお腹もお尻も同じ位に一杯になって膨らんでますが、尚余る感じじゃないでしょうか。今入れられたら溢れます」
「初めてだった義姉に欲望の限りとか自分が鬼畜すぎて死にたくなってきた」
肉付きが少し良い幼なじみとはタイプの違う義姉の肉体であったが、どうしてあれほど貪ってしまったのか。魔族ではあるが背徳的なシチュエーションと淫魔の因子によるものだったのだろうか。
そんな事を思いつつ、義弟は全て記憶のある自分の獣っぷりに今更ながら涙目になる。途中、義姉がアヘ顔になってしまった事も思い出して下半身が反応してしまったのをどうにか魔力で抑えこむ。
「ちっ」
「今舌打ちしたよね!?」
「理性が緩む魔法をかけたのですが、予想以上で想定外でした。激しすぎて緩んでないか心配ですというか義弟くんの形に緩んでるのわかります、抜いた直後は少しすーすーしてました」
「あんたのせいかー!? いや、お願いですから説明しないでくださいお願いします! …所で、拭いた方がいいですか、タオル持ってきます」
身体を離した直後は、腹部にまるで子供でも居るかのように膨らみがあったのだが、今はほぼ元の体型になっている。だが、流石に注ぎ込んだ量がリットル単位に近い。魔族でなければ死んでる量だ。
「あ、上級淫魔の私は大きいのは排泄しないし全部エネルギーと魔力になります。最後に貰った分で力が増してます、あれですか覚醒とか言う奴ですか、祝福凄いですね」
「それほどでもない。…なんていうかほんと、義姉様ごめんなさい」
「謝る必要なんてありません。さあ、階梯上がって今は上級魔族です、房中術は理解したでしょう? 後は幼なじみちゃんこと義妹ちゃんもがっつり上級にしてあげて下さい」
義姉は華のような笑顔で微笑んだ。
「いいんですかそれで」
「いいんですよそれで」
面食らってしまったが、その意図を察した義弟は答えるように苦笑する。
お互い”転生者”である。身体を繋げ合い、房中術で円環を成した時にそれぞれの身に宿した祝福も知った。
どうやら、この世界は二人を起点にした数百年単位の長大な計画を期待している。
今は戦争と戦争の合間だ。力を蓄える時期だ。血気盛んな他の魔族がちょっかいを出してしまうかもしれないが、人族は強い。僅か数百年で魔族が全力を傾けても大損害を食らう程の力を蓄えたのだ。
そして、そこが二人が介入する余地でもある。長い寿命と魔族らしからぬ繁殖力で力の強い子や子孫を増やし、後の魔貴族同士の婚姻による意識改革を期待しているのだ。
「幸せで爛れた生活を送りつつ、私達の王国を築いて魔族を足元から侵食していきましょう! …あ、ハーレム展開したいなら、私とあの子、両方がちゃんと気に入った子だけにして下さいね?」
「てか二人でいっぱいいっぱいです!?」
「あと今の嗜好的にリアルに男と男の娘は遠慮願います。まあ女の子でいっぱいにおっぱいあれば夢一杯(ジョルジュ長岡)でおっぱいおっぱいじゃないですか」
「BL属性無いしそもそも増やしませんよ!? というか全然上手くないですからね!?」
義弟の叫び虚しく、島の全体を支配地域に収め終わった頃には、島に居た魔貴族や元奴隷の長耳族など、妾が増えていたという。