世界遺産はうろ覚え
「すげー」
「アカリ。口が開きっぱなしですよ」
隣のイースにそう言われ、慌てて口を閉じる。行儀が悪い事は分かってんだけどさ、しょーがなくね? だって今居るのは白の国の王城前。初めて見る大きなお城にあたしはびっくりしっぱなしだ。紅の国の王城はさ、アラビアンな雰囲気で、横には広いけど高さはそれほどないんだ。だけどここのお城は高い高い! 一体何階まであんの?と訊きたくなる高さ。見た目はあれに似てる。……えーと、なんて言ったっけ? サクラダなんとか。サクラダサクラダ、サクラダモンガイ? あ、違う違う。それは多分日本語だ。あれはどっか外国だったはず。思い出せないけどまぁ、いっか。
「アカリ? 行きますよ?」
「あ、ちょっと待ってよ! あのさぁ……」
「なんです?」
「今更だけど、本当にあたしも入っていいの?」
そうなのだ。今あたしはイースと共に王城の中へ入ろうとしてる。けどあたしは一般ピーポーだよ? そりゃあイースは外交に関わる事もあるだろうから、他国のお城くらい慣れてるんだろうけどさ。
ぐるぐると考え込むあたしを見て、イースがふっと口元を緩める。
「珍しいですね。緊張してるんですか?」
「まぁ……、ちょこっとは」
「大丈夫ですよ。レビエント殿下とレティシア姫は既に入城していらっしゃいます。それに今は警備が普段より厳しくなっていますから。ぐずぐずしていると不審者と間違えられて騎士達に目を付けられるかもしれませんよ」
「分かったよ!」
イースの言葉にあたしは慌てて階段を駆け上がる。そこはいわゆる裏口で、王族貴族や客人以外の人達が利用する通用口らしい。きっとレビエント王子達は大きな表口から入ったんだろうな。しかも沢山の人達の目線と喝采を浴びながら。何せ明日から新節祭。護国恒例のドラゴンの格好で他国を訪問する期間なんだから。
勿論変身して空を飛ぶなんてハイスペックな事出来ないあたしとイースは馬車に揺られて此処まで来ていた。
今までは別に子守だからといってレティシアが他国を訪問する時について行った事は無い。他国のお城にだって世話してくれる人が沢山いるから、王子達も従者をつれていかないのだ。ま、ドラゴンになって飛んでいく彼らについて行けっこないしね。
あたしは今日、黒の国にいる千紘さんとまだ会った事のない蒼の国の美波さんと一緒に新節祭を探索する予定だった。でも彼女達が一旦王城に集まると聞いて、イースに此処まで連れてきて貰ったのだ。知らない国に、しかも王城になんて一人で行ける気がしない。そう零したらイースが案内役を買って出てくれた。
あ、別に強制なんかしてないよ?
すいません。
燈里が思い出せなかったのはスペインの『サグラダ・ファミリア』の事です。
桜田門外とは似ても似つかないので良い子の皆さんは間違えないように気をつけてくだs(ねぇよ