いきなり絶対絶命!?
騎士であろう男の人達は慌しくこちらに駆けて来る。
どうしよう、どうしよう。っていうか、彼らが探してた人ってどこにいるの? 早く騎士達と一緒に出て行ってくれなきゃ、私が見つかっちゃう!! あぁ、でもやっぱり幽霊だったら出てこないでください! 切実に!
別にやましい事してないし、隠れてる訳でもないけど、でも出来れば騎士とは関わりたくない。この国の騎士って要は警察。 何か私が不味い事しでかして、お世話になっている村の人達に迷惑かかったら困る!
思わずぎゅっと目をつぶり、石像にぴったりと身を寄せる。結局隠れてるわけだけど、騎士の人達はなんだか異様な雰囲気だし、今更出て行ける空気じゃない。
(お願いだから私には気付かないで……)
何とかやり過ごそうと息を殺す。あぁ、今も暢気にキャベツを食べている野うさぎがうらめしい。お願いだからそのまま大人しくしていてね。
直ぐ傍まで足音が近付いている。自分の心臓の音さえ煩く感じたその時、声がした。
『近付くな』
騎士達の声じゃない。それはお腹の底に響くような、けれど重低音ではなく寧ろハスキーな不思議な声。何故か落ち着く声だ。それが一体誰の声なのか、私は直ぐに分かってしまった。だって、ぴったりと張り付いていた石像から音が響いてきたのだから。
(あれ? しゃ、しゃべった? これ石像じゃないの??)
混乱する私を他所に、石像は尚も言葉を続ける。
『そこから一歩でも踏み出してみろ。お前たちの命は無い』
物騒っ!!!
どうやらこの石像は彼らが近付く事に怒っているようだけど、これって私はどうなるの? 物凄い近付いているけど。それどころか密着してるんだけど……。 まさかその怒りの矛先は私にも向いている?
「しかし、このまま王城へ帰る事はできません。どうか共にお戻りください」
(あれ……?)
騎士の人が今話しているのはこの石像だよね? 石像に『お戻りください』ってどういう事? この竜、元々お城に置いてあった彫刻とか? 日本の付喪神みたいに何百年も時を経て本当に命が宿っちゃった……なんて、そんなわけないよね? 御伽噺じゃあるまいし。
(あっ……!!)
そうだ。自分には関わりが無いから忘れていた。この国はそもそも御伽噺のような話がゴロゴロしてるじゃない。何せこの国の祖先は竜で、国民は皆竜の血を引いていると言うのだから。
(あれ、待って。なら……)
しゃべる竜の石像はまさか……本物の竜?
(まずい!!!)
咄嗟にくっつけていた体を離す。
今まで私が休憩中に背もたれ代わりにしていた石像はまさかの巨大生物!!? 寄りかかったり隠れたり壁代わりにしてごめんなさい! お願いだから命だけは取らないで!!!