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最強の道具は四次元ポケット

 仮説と言って美波さんが話してくれたのは、あたし達がこの世界にきた“仕組み”についてだった。


「例えば布に小さな穴が開いたとします。そこに少し穴より大き目の石を押し込む。すると僅かに穴は広がります。二つ目の石を入れれば、当然一度目よりも穴は大きくなり、石は通りやすくなる。布は私達の世界とこの世界を隔てるもの、石が私達だとすれば……」

「“最初の一人”がそこをくぐり、次に風音ちゃんが穴を通って徐々に穴が拡大。穴が広がって通りやすくなった後に燈里ちゃん、私、美波ちゃんが連続してそこを通ってしまったってこと?」

「この世界に来る間隔が段々短くなっていったのはそういう事だと思います。問題は……」

「その穴がどのようにして開かれたのか」

「その通りです」


 おぉ、ちょっと待って待って。美波さんの仮説に千紘さんとレビエント王子がポンポン意見を交わしていくけど、あたしはついてくだけで精一杯だ。つまり、どっかに穴が開いてて、あたし達はそこを通って来たってことだよね? どこでもドアみたいな? いや、穴なら通りぬけフープか?


「故意なのかあるいは事故なのか。それが分かれば対策も立てられます。故意であれば同じ事をもう一度行えば良いのですから。それに加えて先程も言った言語の問題です」

「言語というのは?」

「私達は全員この世界に来た瞬間からこちらの言語を理解することが出来ました。同じ世界であっても国が違えば言語は違う。それなのに、全く違う世界で言葉が通じるのは不自然です」

「確かに。それで?」

「“私達にとって”あまりに都合が良すぎる。だから、千紘さんは誰かの意思が介在しているのではないかと……」


 え~、えっと……、つまりどうゆうこと? 首を捻るしかないあたしを他所に、レビエント王子の次はアーク団長が神妙な表情で頷く。


「そうなると、『穴』は故意に開けられた、という事になるな」

「そうですね。それが一番自然な推理だと思います」


 え? それってさ、やっぱゲームとか漫画みたいにあたし達をこの世界に“呼んだ”黒幕がいるってこと!? 召喚!!とか言って? やべ、それスゲーじゃん!!


「私達の世界には他の世界へ行く技術はありません。そうなると、やはり何らかの『働きかけ』がこちらの世界からあったのではないかと思うのです」


 するとそれを聞いたレビエント王子が少し難しい顔をする。


「しかし、私達もそのような話は今まで聞いた事が無いね」


 やっぱそうなっちゃうのか。わざと『穴』を開けたことが分かった所で、あくまで仮説だモンな。犯人探しは難しいのか。

 けれど美波さんはそう思っていないみたいだった。


「……竜」

「へ?」


 彼女がポツリと呟いた言葉に思わずあたしがまぬけな声を出してしまった。竜って竜でしょ? つまりこの国の王様とか王子達の事だよね?


「この世界は私達の世界にとても似通っています。自然も植物も動物も、そしてここで生活している人々も。けれど私達の世界には無くて、この世界にあるものが一つだけあります。それが……」

「竜、なのですね」


 言葉を継いだレビエント王子に美波さんは真剣な表情で頷いた。

 

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