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2話 遠い昔に

気が付くと、僕は真っ赤な世界にいた。

さっきのパンチで気絶したらしい。

心は落ち着いていて、ここは夢の中だと分かるくらい冷静だった。

(またこの夢か…)

辺りを見渡すと真っ赤な空と朽ちた建物の残骸が無数にある赤い液体に満たされた異様な景色が目にうつった。

足元の液体は生暖たかった。

生々しい夢だなあと思いながらも好奇心で、向こうの残骸まで歩こうとすると、足を捕まれていることに気が付いた。

熱い、ただただ熱かった。振りほどこうと焦って足掻いた。


この世のものとは思えぬ叫び声が聞こえた。聴くだけで頭が焼ける様な感覚に襲われた。

そして、怒りと、悔しいと言う感情が頭に流れ込んできた。

足を捕まれただけなのに、目も見えなくなってきた。

そしてただただ、焼けるような声が頭の中に響いた。

夢の中だが激痛だ。目眩がする。

叫んだ。




「うわーーーっ!!!!!!!!」


「うるさいわね。黙りなさい」


どすっと、拳が頭に振ってきた。痛い。

どうやら僕は保健室のベッドに寝かされているようだ。春夢がこちらを可哀想な物を見るような目で見ている。

天井の模様を見ながら思考を働かす。

先ほどの景色を思い出した。おぞましい夢だった。

どうやら起きられたらしい。

時計は10時を指していた。

シャツが汗に濡れて肌に張り付くのを感じた。

呆然としている僕を見て、さすがに心配したのか春夢が話しかけてくる。

心配するなら最初から殴らなければ良かったのに。


「またあの夢?」


「うん。」


春夢が言うように、同じような夢を小さな時からよく見るのだ。

そのため、一度自分に憑きものでもいないかと寺と神社、教会と様々な場所へ出向いたがどこに行っても何もついていないと言われ、ついには親の知り合いの精神科まで連れて行かれたが、頭が悪いこと以外、異常はないと診断された。あの藪医者死ねばいいのに。だから科学は嫌いだ。


「最近増えたんじゃない?前も授業中居眠りして、雄叫び上げてたし」


だれが雄叫びなんか上げるか…


「まあね、2週間に一回ぐらいの頻度で見るね…」


「本当に憑きもの居ないの?一回家の神社で見てあげようか?お金取るけど。」


「いや、いい。出雲で見て貰ったんだから多分絶対だと思う。」


「出雲ね…、確かにあそこ安いし確実だけど…、(別に家にきてくれても良かったじゃ無い…)」


ボソボソとツンデレ発言しているので、一応友達なのでフォローをしておく。


「いやいや、見て貰ったっていっても、5年くらい前の話だしな。今度春夢のとこにも行かせて貰うよ」


「あらそう?それじゃあ予約入れといてあげるわ。ついでにお茶でもだしてあげるわ」

と、なんだか嬉しそうに素っ気のない振りをしている。どうしてもからかいたくなってしまう。


「いいよ別に予約なんて、暴力巫女が居るせいで客なんてどうせいないだろ」


春夢は、そうよね、暴力巫女がいるものね、とほほえんでいた。

僕もほほえみかえし、二人でははははは、さわやかに笑いあう。


「そうよねー、今回はちゃんと準備してね」


と言った瞬間春夢から赤色の術式が組み上がってきた。

相変わらず人間とは思えない速度で組んでいく。

僕がシールドを張るまもなく術は完成したようだ。

さすがは学年主席。

おい、ここ保健室だぞ、と無駄な抵抗をしつつ術式を見てどの技がくるか確認した。

…またあの技か、というかまた気絶せせる気か?

さすがに何度もあんな技を食らっていては体が持たないので今回は応戦することにした。

打撃技なんて避ければいいだけの話。知っている技なら簡単に避けられる。しかもこちらは寝ている。相手の体勢からも打撃がくる場所は予想しやすい。

打撃のコースを捕らえ、避けようと思いきり体を起こした。

すると、壁に頭をぶつけたような感覚が頭に走った。


「痛いいいいいいいっつ」

「きゃっ…」


春夢もぶつかったらしい。

頭を押さえつつ、ぶつかった方向を見てみるとシールドが張ってあった。


「保健室で暴れてはだめよ」


「振り向くとそこには保健室のおばさんがたっていた」


「誰がおばさんなのかしら、頭打っておかしくなったのかな?お注射打たないといけないかもしれないわね」


思わず声に心の声が出ていたようだ。

頭を打ちすぎて本当におかしくなったかなと心配しつつも、話しかけてきた相手を見る。

彼女はメディックの教授のおもひかね先生だ。

誰かさんに気絶させられるたびにお世話になっている。

医療界では名の知れた名医らしいけど、この学校の保健室の先生なんかをしている変わった人だ。

機嫌を取るために訂正しておこう。


「すいませんでした美人なお姉さん」


すると先生は僕の腕をつかんで血圧を測っているらしい。先生からさわやかな香りがする、ぐへへへ。

にやにやしている僕を見て春夢はゴミでも見るような目でこちらを見ているが気にしない。


「分かればよろしい。まあ様子を見る限りでは元気そうね。血圧も正常みたいだしもう授業に行ってもいいわよ」


毎度すみません、とお礼を言いつつベッドから出る。

春夢がいつもありがとうございます、と先生に言いつつ、鞄を渡してくれた。

一応春夢に釘を刺しておく。


「いい加減手加減を覚えたら?」


「あれで最小火力よ、というかあの程度で気絶するの貴方位よ」


「せめて素手で殴れよ」


「素手ねえ…相手が結界とか張ってたら手が痛いじゃない。というか結界もシールドも張らずにこの町を歩くって正気?」


「そんな事したらレインシールドが消えるっつうの」


「うっさいだまれ」



そんなことをぎゃあぎゃあ、わあわあ言い合っていたら予鈴の音がした。

話が進まない。

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