1話 始まり
朝ご飯を食べそそくさと家を出ると、携帯のアプリでレインシールドを発生させた。
便利な世の中になった物だ。
雨が降っているので変異生物と遭遇して濡れたくないので安全な道を通る。
シールドも速い動きにはついてこられない。遠回りにはなるが、ずぶ濡れで授業を受けるのは御免だ。
空は相変わらず雲に覆われていた。今日中にやむことはなさそうだ。
シールドに弾かれた雨粒を見ながらとぼとぼと歩いていると、幼なじみが歩いていた。
彼女の名前は春夢。暴力女で巫女さんである。
僕は変な巫女さんと一緒に歩いているところを見つかりたくなかったので、最近手に入れた魔法の隠れ蓑を使った。
この隠れ蓑はすごく貴重な物だが、本当にたまたまコロポックルにぶつかってしまって親切にしたところ貰ってしまった。しかし使うと言っても羽織る訳では無い。
僕は物の能力を魔法として使うことが出来る才能が生まれつきある。まあこの魔法を使う対象となる物は、魔法にするとそのもの自体が消えてしまうし、魔法に変えられないような気がする物は魔法に変えられない。
しかもそんな気がする物を無理に魔法にしようとすると物が消えてしまうだけで覚えられないという悲惨なことになってしまう。
しかも魔法を使っている間息を止めているみたいな感覚に襲われると言う制約がある。
まあこの制約だらけの才能を使って隠れ蓑を魔法にしたのである。
隠れ蓑を使いつつ忍び足で追い抜いた。多分普通なら見えていないはずだ。
なんかこっちを凝視しているが…試しにあっかんべー、としてみた。
「馬鹿なの貴方…」
彼女は何も見えないところを見て何を言っているんだろうか…。いやいや見えてないよね?やっぱり変人だ…
僕は気配を殺し、スカートを捲ってからかってやろうと、手を伸ばした。
すると彼女はバックステップをし、思いっきりこちらに向かってキックを放ってきた。
当然彼女の奇行を察知できるわけもなく猛烈な左ミドルが僕の腹をついた。
「かさ見えてるわよ、せっかくの魔法も馬鹿が使うと役に立たないのね。」
シールドの電源を切り忘れたのか…。
何も入っていないシールドを見て不審に思って透視魔法でも使ったのか、春夢の目は赤く輝いていた。
僕が馬鹿にしていたのをちゃんと見ていたらしい。
「ぐゥゥゥゥううう…おまえ、コレ絶対骨折したぞォォォうううう…」
「大丈夫よ、私骨折も直せるから」
「彼女はニコッと般若のような顔をして、イヤ鬼だな、変人で鬼。しかしむごたらしくも僕に回復魔法をを!!!!って、何で妖術?」
「思ってること口に出てるわよ。本当に死にたいみたいね、ちなみに妖術も使えるわよ、最近智慧打ちって言う回復系統の覚えたからつかってあげよっか?」
「明らかに回復系統じゃないよねそれ?」
ザクッと体の奥からイヤな音がした。
「うっ…」
「悟りの世界へようこそ」ニコッ
何も本気で撃つこと無いだろ…
僕の意識はここでとぎれた。
巫女さんいいよね。