後悔2
翌日、学校へ行くと虎姫が玄関で僕を待っていた。
「おはよう」
「おはよう。ハル、誰か待ってんの?」
「裕貴を待ってたのよ・・・って、学校であまり下の名前で呼ばないでよ!」
「あ、ごめん。ついうっかり・・・」
「まあ、良いわ。それでね、何で昨日あんなことになったの?」
「夢の内容、って言うか、僕が寝ぼけていたときに勝手に約束しちゃったから」
「んー、もう単刀直入に聞くわ。本由良と、どういう関係になったの?」
息を荒くして虎姫は聞いてくる。
「変な関係には、なってないよ」
目を逸らして僕は言う。
「・・・嘘。裕貴、嘘吐くのが下手だもん」
学校内では名前を呼ぶなと言っておきながら、自分も使っていることに気付いていない。
昔から何も変わっていない。
「本由良に、世界が崩壊するから、一緒に救ってくれって、言われた」
「世界崩壊ぃ? そんなゲームの話、本当に信じてるわけ?」
「結構真面目に話してたんだよ。嘘じゃないかもしれない」
予鈴が鳴った。
同時に玖波も来た。
「あれ? お前ら俺のこと待っていてくれたの? いやーやっぱり持つべきものは友達だね!」
何も知らない玖波は息を切らしながら何か言っていたが、僕も虎姫も聞いていなかった。
昼休み、部室へ行くため、玖波や虎姫も誘ってみたが、玖波は購買へ、虎姫は一人になりたいと言うので、一人で部室へと向かった。
世界が崩壊・・・ね。絶対にありえないと言い切れない。
何故、僕なのだろうか。ゲームの主人公じゃあるまいし。
僕は黙々と惣菜パンを食べ、紙パックのコーヒー牛乳を飲み干す。
「考えていても、仕方ないよな」
主人公なので、誰もいない部室で主人公っぽく呟いて、P2Pを起動した。
放課後、虎姫と玖波が僕の元へとやってきた。
「溝呂木、私を、本由良のところまで連れて行って」
「・・・え?」
P2Pの画面から目を離して、虎姫の顔を見る。真剣な眼差しだった。
「あんたら二人に、辛い思いはさせたくない。だから、私たちも一緒に、世界を救うよ」
「ハル・・・」
「よく分からないけど、ゲームっぽいじゃん? 俺も参加させてくれよ」
「紘斗まで、お前ら・・・」
何だか分からないが、実際このような状況になると涙が自然と流れるのだと実感した。
本由良が一人でゲームをしている図書室へ三人で向かう。
僕以外にも戦ってくれる仲間がいると知れば、本由良もきっと心強いだろう。
後ろでは玖波と虎姫が世界の崩壊について語っていた。
図書室内はシンと静まり返っていた。
しかし、奥へ行くとカチャカチャとゲームのボタンを押す音が聞こえてくる。
長い髪を地べたに着けて、一生懸命ゲームをしている小さな女の子がいた。
「本由良、聞いてくれ。彼女達も一緒に世界崩壊を食い止めてくれるそうなんだ」
本由良は長い前髪の隙間からチラっと虎姫と玖波を見て少しだけ口元をあげた。
スリープモードにしたあと、カバンの中からある紙を渡してきた。
「・・・書いて、名前。ここに」
出たよ、倒置法を駆使した話し方。これも演技なのだろうか。
虎姫は本由良から紙を奪取すると、サラサラと名前を書き、続いて玖波も名前を書く。
玖波が僕に紙を渡してきたので、それを本由良に渡す。
本由良はうつむいていた。
「本由良、これからどういう状況になるのか分からないけど、一緒に食い止めような」
「気に食わないけど、今はそんなこと言ってる場合じゃないもんね。よろしくね本由良」
「よ、よろしくね。ほんゆりゃ・・・本由良」
本由良は紙をギュッと胸元で握りしめると、いきなり笑い出した。
そしてすぐに思い出す。校内一のヘンテコ女だと言うことを。
「お、おい・・・本由良? 大丈夫か?」
「あっはははは・・・はは・・・いや、まさか・・・あははは! こんなに、こんなにあっさり承諾してくれるなんて・・・思わなかったから・・・ゲホゲホ」
「な、何が言いたいんだお前は!」
「じゃあここでネタバラシ。ようこそ、私の設立したオークション部へ」
「「「オ、オークション部ぅぅ!!?」」」
つづく
お久しぶりの投稿です。
無理矢理オークション関連の話にしなければと思って、こんなことになりました。
次週から本編であると思っても良いです。
どうでも良いけど、最近オークションしてないなあ・・・