キャラ崩壊
「ゲームじゃない!」
顔を真っ赤にして怒る本由良に僕は呆れ声で言う。
「何のキャラ設定か知らんけどさ、僕、君に落とされたゲームを取れたから早くやりたいと思ってるの。じゃあね」
制服の袖をまたキュッと引っ張ってきた。
「あ、あのゲームは・・・溝呂木くんにあげようと思ってたの・・・」
目をウルウルさせて、上目遣いで彼女は言う。
「ごめん。もう落としちゃったし。君は君で楽しんでよ」
「・・・溝呂木くん、もしかして、デセプション・オークションに手を出したの?」
「何でそれを!?」
「あー、まさかとは思ったけど、やっぱりそうだったか・・・悪いことではないけど、あまり私はオススメしない」
普通に話している本由良に違和感を抱く前に、コイツがあのオークションを知っていたことに驚いている。
「じゃ、またね。溝呂木くん」
そう言って、本由良は踵を返していなくなった。
家についてパソコンを点けてから何故彼女はあのオークションサイトを知っていたのか疑問を持つ。
アイツも一部の人に含まれているのだろうか・・・
そうとしか考えられない。
こんな身近にあのサイトを知っている人がいたとは思わなかった。
考えていても、仕方がないので、デセプション・オークションを開く。
メッセージが来ていた。きっと、発送したとかそう言うのだろう。
その通りだった。
翌日、学校から帰ると、例のあのゲームが届いた。
「やった・・・ついに、ついに・・・!!!」
嬉しさのあまり、僕は涙を流す。
財布がほぼ空っぽになるが、ゲームを手に入れた喜びの方が大きい。
さっそくP2Pに入れて起動する。
その晩は、夢中になって攻略をした。
さらに翌日、眠い目をこすりつつ家を出ると、本由良が家の前にいた。
「・・・・・何で?」
「溝呂木くん、ついにあのゲーム手に入れたみたいだから」
「それで家の前にいたわけ?」
「あ、いや。その、一緒に、学校へ・・・」
少し大きめのカーディガンを着ている本由良の袖からは、指しか見えていない。
そして口元へ持って行き、目を逸らしながら言った。
「み、溝呂木くんと・・・一緒に学校へ、行きたいナ☆」
「・・・・・・やっぱり、お前、恋愛ゲーマーだろ・・・」
校内一のヘンテコ女と登校することになった。
こんなところを虎姫や玖波に見られると、終わりだろう。
「ね、溝呂木くんは、この前のアレ、考えてくれた?」
「何のこと」
「世界崩壊するから、手伝ってくれって話だよお!」
キャラが全然違う。多重人格ってやつか。
それにしても、眠すぎて、全く思考が働かない。
「あーあー。そうだね。うんうん」
「本当に!? 良かった! 溝呂木くんならきっと協力してくれると思ったよ!」
「あーあー。そうだね。うんうん」
「じゃあ、今日学校終わったら図書室来てね! 待ってるから!」
「あーあー。そうだね。うんうん」
「やっぱり溝呂木くんは最高だ!!」
つづく
今回は少し短めですが、面倒だったわけではないです。
話を進めるためには半ば仕方ないので・・・
近いうちに話を更新します。