青年期
「ちょっと待っててね」
そう言って1人で綿菓子を買いに行った幼なじみを止める間もない。
一緒に行こうと思ったが幼なじみはもう屋台のおじさんと話している。
また2人で来たのかい、おじさんのにやけ顔がそう言っている。
喧騒の中、ふと星空を見て思う。この夏祭りに幼なじみと来るのもちょうど10回目か。
あの時もこんなふうに母親に言われたな……
「たーだいま」
考え事をしていて幼なじみが近くまできていることに気付かなかったから純粋に驚いた。
それを幼なじみはよしとしなかったようだ。
問い詰められたが、別にやましいことを考えていたわけではない。
それでも言えないことはある。例えば、幼なじみへの想いとか。
子供の頃のことを思い出していただけだと言葉を濁し、屋台のおじさんを見るとずいぶん上手くなったウインクをしてきた。
ニヤニヤ顔が殴りたくなった。
これ以上問い詰められないよう綿菓子を受け取り歩きだす。
友達というには近すぎて、恋人というには遠すぎる距離で。
子供の頃は無邪気で、距離なんか気にならなかったのに。
「ほらー、また口の周りにくっつけてー」
そういいながら頬の綿菓子をつまみ自分の口に運ぶ。
そんな幼なじみを直視出来ずにそっぽを向く。
見えたものに驚き、立ち止まる。
幼馴染に確認すると覚えてないという。
でも、普段なら気付かないような獣道の前にある木には10年前と全く同じ目印があった。
「綺麗……」
10年ぶりに訪れた草原で満天の星空を眺め幼なじみは言う。
6歳の頃、ここを2人で探したが見付からなかった。
それが今、見付かった。
幼なじみが小走りになる。
距離が離れたところで振り向き、手を振った。
その手に向かって流れ星が落ちる。
そんな偶然に驚き、想う。
今なら言える気がする。
10年間想い続けたこの気持ちを。




