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異能力バトルスポーツでチームを結成! ~ルールはまったく知りません!~  作者: おかかむすび
一章.始まり

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27.責任は私にある

 シオンがゲームブースを立ち去った後、クレアは後ろを振り返った。

 そこにはもちろん、クレアのアクターたちがいる。


 クレアはひとりひとりの顔をゆっくり見てから、大きく頭を下げた。


「ごめんなさい! 今回負けたのは、私のせいです!」


 誰も、言葉は発してこなかった。少し身じろぎしているような気配はあったが、それだけだ。

 クレアは一度頭を上げて、次の言葉を伝えた。


「それから、私はずっと、足りない知識のことばかり考えてて……私、みんなのことを見てるつもりで、見てなかった。ごめんなさい」


 クレアはもう一度、大きく頭を下げた。


「負けたのは、クレアだけのせいじゃない」

「メイカーが責任を持つものだって私はずっと言ってきたし、今もそうであるべきだって思ってる。だから……!」


 興奮してまくしたてようとするクレアに、ポルクスが待ったをかけた。


「その考えは間違ってない。組織として、リーダーである人物が最終的な責任を負うという構図は正しい。それとは別に、負けたことへの反省は全員がするべきだと、俺は思ってる」


 ポルクスの言葉にハッとしたクレアが、もう一度みんなの顔を見た。


 ティルは少し自信なさげにしながらも、ポルクスの意見に賛成するように小さく何度も頷いている。バラムはあくびをしていて、いつもどおりだ。

 そして、ハルマサはものすごく申し訳なさそうにしており、無意味に手を動かしたりしていてせわしない。彼なりに、何か思うところがあるようだ。


 言ったそばから、みんなのことを見ないで自分一人で決めてしまうところだったと、クレアは猛省した。


「じゃあ、みんなで反省会、する?」

「うん……うん! ティル君も、私と一緒に怒られてね?」

「あっ」


 すっかり忘れていたと、ティルは墓穴を掘ったことに顔を青くしていた。


 ♢


 ルールベースで移動し、個室を借りた一行は、早速反省会を始めた。

 クレアとティル、ついでにハルマサもグランドアクトのルール確認を行い、抜けている部分がないかなどのチェックがされた。


 結果として、細やかなルール抜けはあったものの、ポルクスから及第点を貰い、事なきを得た。

 クレアとティルは泣いて喜んでいた。


「今回の敗因についてだけど」


 ルール確認が終わったのを見計らったところに、バラムが直球の話題を投げ入れた。

 ずばり、シオンとの練習試合で負けた原因はなんだったのか、ということである。


「私の指示が甘かったから……」

「俺が一撃でやられちゃったから……」

「俺がエースとしての役目を果たせなかったからだ」

「俺がうまくエースと対面できなかったこと、かな?」


 みんなが思い思いに負けた原因を上げていく。

 これらを聞いて、バラムは息を吐いた。


「建設的なのはティルの意見ぐらいかな。ちなみにだけど、この試合はそもそもとして、勝てる見込みはあったと思う?」


 途端、全員が黙り込む。

 良いところまで行けたという手応えは、確かにあった。だが、今の時点でもう一度試合をしたとして、今度は勝てるかと聞かれたら、誰もうんとは頷けなかった。


「負けた要因は色々あるし、それぞれ思うところがあるのもいいけど。僕としては、地力の差が出たと考えてる。それを除いてって話をしたいなら、僕が戦犯だから、そんな考えなくていいよ」

「バラム君が戦犯は、一番あり得ないんじゃないかな……」


 むしろ、バラムがいなかったら手も足もでないまま負けていただろう。

 指示を出していたクレアはそれを一番感じているので、すぐさま否定した。


「僕が希望が再び芽生えますようにを使用したターン、ポルクスに交代をしてたら多分勝てたよ」

「えっ、あの場面で交代!?」


 相手が物理型だと分かっているあの盤面で、なんの対策もなしに交代するなどとてもじゃないがクレアには選べない。

 だって、もしあそこで攻撃されていたら、ポルクスはそれで退場だ。


「相手がエースだったから、ポルクスもエース効果が発動できた。アシストとエース効果で防御力を三段階まで上げれば、ワンチャンあったんじゃない?」

「仮にやられても、次はティルが対面する一撃入れて落ちた後は、今度こそバラムがスキルを使って俺と呼ぶってことか」

「それでもやっぱり、一撃足りないような……?」

「あっちのアシストも結構硬かったから、そうかもね。とまあ、色々考えてもやっぱり足りないって答えになるなら、それはもう地力の差が出たんだよ」


 つまり、足りなかったのは日頃の鍛練、ということらしい。

 クレアはなんだか納得が行かなかったが、じゃあ分岐点としてあげられたあのターンで交代を選ぶ勇気はあるかと問われれば、今になっても出てこなかった。


「防御力の高いアクター控えにいたら、交代してたのかなあ……」

「もしいたなら、十分あり得た選択だろうね。特に、ブレイカーが物理耐久に優れていたなら、一も二もなく出すことを僕は勧めてた。これらのことから分かるように、答えを知っている状態でも、現状だとあの場面での交代はあり得なかったわけ」


 地力の差以外に足りないものと言えば、次に上がったのはメンバーという話になった。

 確かに、現時点では防御力に優れたアクターはバラムしかいない。だが、彼に攻撃性能はない。このままいけば、今日のリュミエールにされたように、バラムを起点にしてくる相手にいいようにされてしまう。


「あのさ、ちょっといい?」


 ここで、話に割り込んできたのはハルマサだった。

 彼は負けてからずっと、こちらの様子をうかがっていたが、とうとうしびれを切らしたらしかった。


「色々理由を上げてるけど、負けたのは明らかに俺のせいだよね。お前はクビだって、はっきり言ってもらって良いんだけど……」

「へぁぁ!? クビィ!?」

「え、そこでクレアちゃんが驚くの?」


 ハルマサがとんでもないことを言い出すので、クレアは思いきり立ち上がり、がくがくと震えはじめた。


「や、辞めちゃうんですか!? 私が下手な指示をしたばかりに……! ど、どうかもう少しだけ、私と一緒にグランドアクトを続けてみませんか!? どうか、どうかぁ!」

「え、この流れおかしくない? 普通はメイカーの方から弱い奴なんかいらねぇ! って、解雇宣言するもんじゃないの?」

「どっちも両極端だぞ」


 一回負けたぐらいでクビを言い渡すメイカーなんてヤバイ奴だし、ここまで平身低頭して許しを乞うメイカーも、はっきり言ってやりすぎである。


「俺、まだこのチームにいていいの?」

「いてください!」


 クレアがハルマサの手を掴んで、ぶんぶんと上下させる。

 ただ、自分の方が先に疲れたため、すぐに腕を振るのをやめて肩で息をしていた。


「いやさ……俺ってば正直なところ、グランドアクトを舐めてたんだよね。俺のデータを見た彼女が強いって褒めてくれたから、プロでもCランクぐらいなら余裕だろうって、思ってました。はい」

「これに懲りて、ちゃんと鍛錬すればいいんじゃない?」

「仰るとおりです……」


 自分のデータに驕っていたハルマサは、今回のことで完全に鼻っ柱をへし折られたようだ。ものすごく反省していた。


「そんなわけだから、足りていないのは鍛錬と新しいアクティブスキルの習得だね。パッシブでもいいけど」

「俺も、スタイルアクティブスキルを一つでも覚えたいな」

「ティルは一番成長してるからね、期待してる。ポルクスの方はどうなの」


 バラムに問われ、ポルクスは苦虫を噛み潰したような顔をした。


「まだ……うまくいかない」

「そう。君はエースだから、その場に留まって大きくダメージを与えるスキルが欲しいんだよね。エアライズシフトで何度も旋回されるのは、正直負担になる場面が多いから。回数も少ないし」

「分かってる」


 指摘されたことは、ポルクスが一番理解しているのだろう。うまくいかない自分にひどくイラついているようで、クレアはおろおろした。


「ハルマサは、とにかくステータスを伸ばすことだね。クレアは君を両刀として採用したから、まずは体力をつけて、相手の一撃を受けれるようにするところから」

「りょーかい」


 このままではバラムに全部言われてしまうと、クレアは焦る。

 だが、こういった育成論については本当に何も分かっていないので、とにかく両手を振ってわたわたすることしか出来なかった。


「こういうのは正解がないから、ゆっくりね。それに、クレアが一人で考える必要もないよ。理想はあるけど、やっぱり出来る出来ないがあるからさ」

「みんなに話を聞いて、出来そうだったらそれを目指してみよう、みたいな感じでお願いしていくのがいい?」


 どういった方針で鍛錬するかは指示できても、それを実際にこなすのはアクターだ。

 言われた目標に向かって進む中で、どうしても出来ないことも出てくるだろう。その時は、何なら出来そうか話し合い、どういった方向へ舵を切り直すか。

 これを一緒に考えてあげれられたらそれでいいと、バラムに言われた。


「それから、僕も一度スキルを変えようと思ってる。今のところ考えてるのは、『聖火の指針』を『パーペチュアル』へ変更することと、『傷つけること勿れ』を『誰も傷つかない世界』に変更しようかと思ってる」

「スタイルアクティブスキルを二つも変更する気か? いつぐらいに出来るんだ、それ」


 習得するだけでも一苦労だと言われているそれらを、別のスキルに置き換え直すのはどの程度の難度なのか。

 クレアには正しく理解することが難しい部分だが、ポルクスの反応を見る限りでは、かなり難しいことだというのは伝わってくる。


「え、明日か明後日には多分いけるけど」

「は――クソッ、これだから天才は……!」

「……これ、振り? むしろ、なんで出来ないのかわから――」

「わーっ! わーっ! バラム君! それ振りじゃないから! 一言多いからやめましょうねー!!」


 クレアは全力タックルをかまして、バラムの口を塞ぎに両手を伸ばす。

 どこまでかき消せたかは分からないが、多分効果は薄かった。だって、ポルクスがめちゃくちゃ悔しそうな顔をしているから。


「ねえティル君、この二人って仲悪いの?」

「良くはない、かなあ……」


 何とも言い難い雰囲気が残る中、反省会はこれで終了となった。

 クレアは引き続き、対戦相手探しとアクター集めを。チームメンバーたちはそれぞれ鍛錬に励んでステータスやスキルの習得、あるいは調整を頑張ろうということで、話はまとまった。


 グランドアクトスタジオを出て、クレアは帰るための電車に乗った。

 もうすぐ年末ということで電車内はがらがらなので、遠慮なく空いている席に腰を下ろす。すると、そのすぐ隣に誰かが座ってきた。


「クレアさん」

「あ、ティル君!」


 電車の扉が閉まり、ゆっくりと発進し始めた。

 人は自分たちの他に二人いるほどで、その人たちもそれぞれイヤホンを付けて音楽を聴いているようだ。


「その、ごめんね」

「どうしたの、急に」


 クレアがいきなり謝るので、ティルは困った顔をした。


「この間もそうだったけど、ティル君にはいつも損な役回りばかりさせてるから、申し訳なくて……」

「ああ。それはもう、勝負の世界だからね。仕方ない部分だと、俺は思ってるよ」


 気にしていないと言われても、クレアは上手く返事が出来なかった。

 どうしても、メイカーがそこを簡単に頷いてしまって良いのかと、ぐるぐる考えてしまうのだ。


「俺はね、クレアさんにすごく感謝してる。実はさ、今が一番楽しいんだ。俺、夢とか目標とか何もなかったから、何となく生きてるだけの毎日でさ。しかも、就活には失敗するし、自分は何してるんだろうってすごく焦った。でも、何も変わらなくて、毎日が嫌になってた」


 その気持ちは、クレアも痛いほど分かる。

 社会から拒絶されたような疎外感。誰の期待にも応えられない自分。


 どうにかしないといけないと思うけど、それをどうしたら解決できるのかが分からなくて、才能がない自分を責めることしか出来ない毎日は、本当に苦しいものだった。


 クレアはメイカーとしてまだまだ未熟なので、苦しくなることも多い。

 それでも、自分は前に進もうとしている。結果はまだまだ出ていないが、変わらない毎日を過ごしていただけのあの頃に比べれば、自分は成長していると胸を張って言えるぐらいには、クレアは自信をつけ始めていた。


「俺、決めたよ。就職活動は切り上げて、グランドアクトに集中する。クレアさんのチームで、プロになりたいんだ」

「ティル君……」

「だから、一緒に頑張ろう。知識を付けて、鍛錬して、前に進んでいこうよ」

「――もちろん! 頑張ろうね! 目指せ、脱初心者! 目指せ、Cランクプロ!」


 電車の中なので、小さな声で目標を再確認する。

 そして、二人は拳を突き合せた。

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