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異能力バトルスポーツでチームを結成! ~ルールはまったく知りません!~  作者: おかかむすび
一章.始まり

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14/29

14.VS半グレ集団①


「ポルクス君、お願いします!」

「まずはあたしからー」


 練習試合から学んだことを、クレアは忘れていない。メイカーとして、きちんとポルクスに声をかける。

 それとほぼ同時に、リーンの声がインカムを通して聞こえてきた。


 ♢


▼クレアのアクター「ポルクス」はグランドサークルに躍り出た!

▼即席チームのアクター「リーン」はグランドサークルに躍り出た!


▼リーンは『アシスト』の効果により、自身の精を1段階上げた!


▼リーンは『傷の灯』の効果により、状態異常に掛かった味方の数だけ、自身の精を上昇させていく!


 ♢


「あれ、あんたメイカーだったの?」


 リーンから意外そうな声が聞こえてきたので、クレアは返事をした。


「あ、はい。人間です」

「はーっ、何それ? ダッサ! メイカーとかマジ嫌いなんだよねー。人間とかいうクソ雑魚生物に、なんで亜人のあたしたちが従わないといけないわけ?」

「えっ?」


 隠されることのない敵意をいきなりぶつけられ、クレアは頭の中が真っ白になった。


「メイカーもさ、亜人だけでよくない? みたいな? グランドアクトは亜人だけのものでいーじゃん」

「でも、ルールでメイカーは人間しかなれないって……」

「そんなの、人間が自分たちに都合よく作ったクソルールじゃん! ルールがなきゃなんも出来ねーのかよ!」


 クレアは何も言い返せなかった。

 それは、クレア自身が今までに一度も考えたことがなかったからだ。


 どうして、メイカーは人間のみなのだろう、と。


 今だって、ルールで決まっているからだとしか思っていない。だから、リーンへ言い返した時も、ルールを理由にしたのだ。


 理由は簡単だ。クレアが人間だからである。

 人間だから、自分がメイカーになれるというのが当たり前すぎて、考えるどころか疑問にすら思ったことがなかった。


「おい、今は試合中だ。持論が語りたいだけなら、舞台から降りとけ」

騎士(ナイト)様に庇って貰えて嬉しいねー? てか、よくよく見たら男のアクターばっかじゃん。これが姫プレイってやつ? ギャハハ!」


 これだけ好き放題言われているのに、何を言えば正しいのかが分からなくて、喉が乾いたみたいに声が出ない。

 こんな風に、真正面から全力で否定されたのは生まれて初めてで、クレアはどうしていいのか分からなくなってしまった。


「クレア。指示は出せそうか」

「あ……あ、うん、ごめん。指示を出さなきゃ。大丈夫、私がメイカーなんだもん。しっかりしなきゃ」

「落ち着け。全部、俺が抜いてやる」

「……出来るの?」

「メイカーが望むことに、全力で応える。それがアクターだ。性別も、種族も、関係ない」


(そうだ。グランドアクトはチーム戦。メイカーである私も入れた、チーム戦なんだ)


 相手の言葉に、思うところがあったとしても。

 泣いて立ち止まるのは、今じゃない。


「えいっ!」


 パチンと、軽快な音がなる。叩いた両頬だけでなく、手のひらも痛いが、良しとしよう。


「いけるな?」

「もう大丈夫! ありがとう、ポルクス君!」


 ♢


自陣:ポルクス

役割:エース

アクティブスキル

『回帰時計』@1/1

『エアライズシフト』@2/2

『マジカルトス』@4/4

『刹那』@3/3

『心変わり』@5/5

パッシブスキル

『タイムバウンド』@1/1

『ループライド』@1/1


敵陣:リーン 精+1

役割:アシスト

アクティブスキル

『???』

パッシブスキル

『傷の灯』

『???』


▼Tカウント「1」


 ♢


「相手はアシストだったか。まあ、悪くない相性だ。スタイルがリバイヴなのが、少し気になるところだが」

「『傷の灯』は、バラム君も覚えていたよね? 確か、自身を含む状態異常に掛かっている味方1体につき、自身の精神力が1段階ずつ上昇するってやつ」

「自身に再生を付けて、おまけに精神力の上昇まで狙うのは、リバイヴの得意とする戦術だ。……プロの、という注釈付きになるがな」


 つまり、それが出来る人物はそもそもプロの世界に行っているはずなので、彼女がそこまでのことをしてくるとは考えなくていい、ということだ。


「じゃあ、今はヘビ族の最速は100が限界だから、ポルクス君なら確実に抜けることの方が重要かな?」

「種族別の上限値も覚えてきたのか? 良い感じじゃないか」


 ストレートに褒められたことに、クレアは嬉しさと同時に恥ずかしさを覚えた。

 実を言うと、クレアが覚えられているのは、チームメンバーにいる三人の種族だけなのだ。今回は、偶然相手がヘビ族だったから、言い当てられただけなのである。


「その……ティル君のためになると思って、ですね」

「動機はなんだって良いんだよ。努力して覚えたんだろ?」

「ポルクス君が、すごい褒めてくれる……!」

「俺を何だと思ってんだ」


 いつもどおりのやり取りに、クレアの顔に笑顔が戻った。


「さて、ヘビ族の特徴は分かってるよな」

「うん。魔法力と精神力に長けている、だね。アシストの効果で精神力が1段階上がってるから、倒すのは大変かも……」

「だな。とはいえ、まだこっちには攻撃力に長けたアクターはいないからな。相手の実力は未知数だが、バラムの兄貴が言ってたことが本当なら、言うほど強くはないはずだ」

「役割もアシストだから、強い攻撃はあまり持っていないとみていいかな?」


 まずは、相手の能力を下げるところから、始めてみても良いのかもしれない。

 そう考えたクレアは、初めて変化技を選択した。


 ♢


▼ポルクスの『心変わり』!

▼リーンの精が1段階低下した!


▼リーンの『留まるは我』!

▼ポルクスは「恐怖」状態になってしまった!

▼リーンは『留まるは我』の効果により、自身の攻が1段階上がった!


▼ポルクスは『タイムバウンド』を発動!@0/1

▼自身が状態異常を受けた時、次のターンの間、自身の攻撃技の優先度を+1する!




『心変わり』…100%の確率で相手の精-1する

『留まるは我』…100%の確率で相手に「恐怖」を付与し、100%の確率で自身の攻+1する


 ♢


「恐怖状態か。これで俺は、交代出来なくなったな」

「殴ってこないってことは、やっぱあんたがエースだったんだ? アッハハ! 先発エースとかありえなーい! 頭の悪いメイカーを持ってるあんたが可哀そうで、泣けてきちゃったー!」


 リーンのあからさまな笑い泣きに、クレアはムッとする。

 だが、ポルクスが交代出来なくなったということは、終盤に発揮されるエースの効果を受ける方法がなくなってしまったということだ。

 まずい状況になってしまったのは、間違いない。


「なんでポルクス君が、エースだってバレたんだろ……」

「効果が発動するまで、役割は分からないっていうのがルールだ。とはいえ、キラーの役割は相手の能力が1つで上昇していれば、防、精、速を無視できるんだ。普通なら殴る場面だと言える」

「ブレイカーとか、オーバーライドの可能性もあるよ?」

「ブレイカーならアシストと対峙した時点で、相手の上昇した能力を全部元に戻してる。オーバーライドは、単純に3vs3だと滅多に選出されないんだよ。あれが真価を発揮するのは5vs5辺りからだ」

「つまり、消去法でエースだと予測を付けていたってこと? あの人、私より頭いい……!」


 リーンの言い分はともかく、メイカーとして見習わなくてはならないところは大いにある。こういった判断を、今後は自分でも出来るようにならねばと、クレアの脳みそはフル稼働だ。


「どのみち、メンバーが揃わない間の俺は、倒れるまで殴るのが仕事だからな。することは大して変わらん。というか、今回に限って恐怖はありがたいぐらいだ」

「交代出来なくなっちゃったのに?」


 状態異常の中で、明確に有利な効果を持つのは再生だけ。だというのに、交代できないことがありがたいとは、一体?


「いいか。恐怖状態による交代不可は、技による交代も同様だ。つまり、俺は一番威力の出る『エアライズシフト』を連続して撃てる、ということだ」

「そっか! 交代技は成功したら、その時点で交代できる味方と必ず交代することになっちゃう。でも、今はそれを無視できる!」


 相手に不利な効果を与える状態異常も、使い方によっては有利にも出来る。

 グランドアクトの奥深さに、クレアは楽しくなってきた。


 ♢


自陣:ポルクス 状態異常「恐怖」

役割:エース

アクティブスキル

『回帰時計』@1/1

『エアライズシフト』@2/2

『マジカルトス』@4/4

『刹那』@3/3

『心変わり』@4/5

パッシブスキル

『タイムバウンド』@0/1

『ループライド』@1/1


敵陣:リーン

役割:アシスト

アクティブスキル

『留まるは我』@1/2

『???』

パッシブスキル

『傷の灯』

『???』


▼Tカウント「2」


 ♢


「今の俺は、攻撃技の優先度が+1されている状態だ。変化技には効果が適応されないから、注意しろ。今回は関係ないが、気にする癖は付けとけ」

「うん。次は攻撃してみて、ダメージを見てみよう」


 ポルクスの案を採用し、一番威力の高い『エアライズシフト』を仕掛けてみる。


 ♢


▼ポルクスの『エアライズシフト』!

▼リーンに「特大のダメージ」!


▼リーンの『フェードショット』!

▼ポルクスに「まずまずのダメージ」!


▼リーンは『フェードショット』の効果によってシフトゾーンへ戻っていく!

▼即席チームはアクター「ネズ」が交代でグランドサークルに躍り出た!


▼ネズはリーンから『アシスト』の効果を受け、自身の攻を1段階上昇させた!




『フェードショット』…魔法でダメージを与え、味方と交代する


 ♢


「いったぁー! マジありえないんですけど!」


 リーンはギャンギャン吠えながらも、交代技の『フェードショット』でシフトゾーンへ戻っていく。そして、交代で出てきたのはもう一人の取り巻き、クマ族の男、ネズだ。

 正念場にならないところを見るに、彼がエースではないようだ。


「やはり、竜人族の方がエースか」

「兄貴がエースなのは当然。とはいえ、せっかくリーンがお前を恐怖状態にして潰してくれたんだ。わざわざ兄貴を当てる理由がねえ」

「元々、キラーは対エース用となることが多い。だったら、エースと思われる俺をここで落とせば、キラーとしては十分って判断か」

「そういうこった。最も、一番の理由はメエメエ鳴いてたヒツジのガキを、兄貴が捻り潰せるように邪魔なのを排除することだがなぁ!」


 バラムへのヘイトが凄まじいことになっているが、あれだけの啖呵を切っているのを目の当たりにしている身としては、擁護しにくい。

 むしろ、メイカーとしては謝るべきなのではないだろうか? いやしかし、相手も大概な連中だった。


「ヘビ女は逃がしちまったが、最低でも7割は削ってる。それに、『留まるは我』で攻撃力を上昇させたのに、物理技は使ってこなかった。おそらく、あいつは物理技を覚えてない」

「ポルクス君をエースと見たから、とにかく恐怖状態を狙ってきたんだね。だけど、次に出てくる時は、アシストの効果で体力を回復されちゃうし……うーん、出来れば倒しておきたかったね」

「アシストによる精神力上昇がなければ、ワンチャンあったかもな。まさに、役割の効果が大きく試合に絡んでる。……楽しいだろ?」

「うん! すっごく!」


 考えることは多いし、ミスはやっぱり怖いけど――それでも、こんな風にアクターたちと意見を出し合って、勝つために努力するのがすごく楽しい。

 クレアは今、グランドアクトを心から楽しんでいる。


 ♢


自陣:ポルクス 状態異常「恐怖」

役割:エース

アクティブスキル

『回帰時計』@1/1

『エアライズシフト』@1/2

『マジカルトス』@4/4

『刹那』@3/3

『心変わり』@4/5

パッシブスキル

『タイムバウンド』@0/1

『ループライド』@1/1


敵陣:ネズ 攻+1

役割:???

アクティブスキル

『???』

パッシブスキル

『???』


▼Tカウント「3」


 ♢


「クマ族は見てのとおり、鈍重なパワー自慢だ。体力も高い。多分、俺は一発で落ちるだろう」

「ポルクス君は防御力が低いから、物理技は痛いよね……。交代も出来ないから、最後に一撃入れてもらって仕事は終わりになっちゃうかな?」

「技の選択は任せる。俺から最後に言えるのは、クマ族よりヘビ族の方が素早さが高いってことだな」


 重要なのは、ポルクスが落ちた後にどちらを出すかである。

 バラムは防御力が高く、あのクマ族の攻撃も受けきれるはずだ。

 しかし、相手は推定キラー。アシストの効果による能力上昇は強制なので、そこから手痛い一撃を受けてしまう危険性がある。


 一方で、ティルを出せばそういった心配はないものの、純粋な殴り合いで勝たなくてはいけないことになる。ヘビ族も防御力は高くないので、ポルクスが耐えられない一撃をティルが受けきれるとは考えにくい。

 素早さについては教えてもらったが、相手が素早さを上げていないとは限らない。そこを加味して最後の判断を下すのは、メイカーであるクレアの仕事だ。


「うーん! 悩みどころだけど、いっそのことポルクス君が倒してくれても構わないよ!」


 むしろ、そうしてくれたら助かるという願いを込め、クレアが指示を与えた。


 ♢


▼ポルクスの『エアライズシフト』!

▼ネズに「特大のダメージ」!


▼ネズの『メモラルリンク』!

▼ポルクスに「致命的なダメージ」!

▼ネズは『メモラルリンク』の効果により、魔が1段階上昇した!


▼ポルクスは倒れた!




『メモラルリンク』…優先度-3 物理でダメージを与え、相手を強制交代させる 100%の確率で自身の魔+1する


 ♢


「全快でも耐えられなかったな――後は頼む」

「任されたよ!」

「ハッ! エースのくせに大したことねえなあ!」


 相手はそう言っているが、ポルクスから受けたダメージは小さなものじゃない。残りの二人でも、十分倒しきれるはず。

 そのように見当をつけたクレアは、次のアクターを場に出した。

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