13.初めての3vs3に向けて
無料アプリで呼び出したアクシィが到着するまでの間、お互い作戦会議に入った――そのすぐに、クレアは怒った。
「バラム君! なんであんな挑発するかな? 危ないじゃない!」
「ああいう手合いは、頭に血を上らせたら話が早いから」
「十割本音だったろ」
「否定はしない」
「ちゃんと反省してよ!?」
まさかのバラムが問題児筆頭だったとは。クレアの目では当然、見抜けるはずがなかった。
「で、作戦なんだけど」
「ぐぬぬ、切り替えが早いっ。後でもう一回、説教だからね? 今は作戦を聞かせてくださいっ」
「ポルクスを使いつぶす。以上」
「それするなら、俺に再生残して命賭けとけ」
「ごめん。もっと穏便かつ、私に分かるよう説明してくれない?」
バラムが酷いことを言い出したかと思えば、ポルクスがそのはるか上を行く切り返しをするので、クレアの脳みそがショート寸前だ。
「俺は?」
「見た感じ、あの女はティルと同じ、ヘビ族だろ? 同族対決したいっていうなら、全然譲るぞ」
「相手がもしアシストだったら、キラーのティルなら一方的に蹂躙できるよ。良かったね」
「良か……え、いいことなの? 物騒過ぎない?」
「やだ……。私のチームメンバー、過激すぎ……?」
バラムの怒りに関しては、理由もあるのでまだ分かる。だけど、何故にポルクスまでこんな戦闘狂のようなことになっているのか、これが分からない。
「というか、なんであの女の人がヘビ族って分かったの? ……そういえば、あの竜人族の人もバエルさんをオオワシだって言ってたけど、何で判別してるの?」
「ヘビ族は目の下にうろこがあるだろ。……待て。じゃああんたは、ティルをどうやってヘビ族だって判別してんたんだ?」
「えっ! あれってただの隈じゃないの!? ティル君はクラスメイトだから、自己紹介の時にそういってたなーって……」
「俺のも隈だと思ってたんだ? ほら、ちゃんとうろこになってるよ」
よく見えるようにとティルが顔を近づけてくれるので、クレアはじぃーっと見てみる。そして、よく見てみるとティルの目の下にあるのは隈ではなく、黒い小さな鱗だった。
「隈じゃないっ! 鱗だ、これっ!」
「マジかよ。亜人の見分け方って、一般常識の範囲じゃなかったのか?」
「どうせ、耳とか尻尾みたいな、分かりやすいのを持ってないのは全部一緒くたにして、亜人って言ってたんでしょ」
「ギクゥッ! い、いや! オオワシ族とフクロウ族の違いと、リッチとかが分からないだけで!」
「フクロウ族の羽根は、柔らかくて縞模様が入ってるのが特徴的。オオワシ族の羽根は硬くて、黒が多くて根元が白いか、全体的に茶色かって感じ。兄さんは茶色い方ね」
「リッチだけ分からないことは同意する。あれもう人間だろ」
クレアの相変わらずなポンコツ具合に、みなそれぞれの反応を返しながら手慣れたように話を戻していく。
「ティルの扱いの話に戻るけど、キラーはかなり重要なポジションでさ。グランドアクトのエースが強いっていうのは、言わなくても分かる――あ」
「え、なに? このタイミングで何かあるの?」
突然言葉を切った後、バラムが固まるのでクレアはドキドキし始めた。一体、今度は何を言い出すんだろうか。
「ポルクスって、クレアに『正念場』の説明、した?」
「あ」
完全に失念していたと、ポルクスも口を開けた。
「ま、待って! 私も勉強してる! 一人でも勉強してる! 正念場については、分かってます!」
「じゃあ言ってみて」
「今回は3vs3だから、チームメンバーが残り1体になった側から、正念場という状態になるんだよね。正念場になると、エースは全能力が1段階上昇して、さらに任意の能力をもう1段階上げられる!」
「クレアが正解した……だと」
「私がみんなのメイカーなんだからね? もうちょっと信用して?」
威厳がないことは認めるが、もう少し信用してくれても、ばちは当たらないと思う。
いや、さっきの流れを思い出してみれば、当然な扱いだった。
「で、作戦の詳細だっけ。相手の役割がどれを採用しているかは分からないけど、エースが出てくるのはまず間違いないから、そこにティルをあてたいわけ」
「エースは条件さえ満たせば、全能力1段階上昇に加えて、好きなのをさらにもう1段階上げられるから、使わない理由がないってことだね?」
「そういうこと。だけど、この能力上昇に対してキラーは強く出れるからね」
「同じエースのポルクス君はダメなの?」
エースの能力が上昇する正念場のタイミングに入る方法は、一定数以下になる以外にも、エース同士が対面する場合でも起こる。
この方法はどうなのかと、クレアは質問した。
「たまたまかち合ったならそのまま抜いてもらうけど、エースが出てきたからあてに行くっていうのは、まずやめた方がいいね。最低でも味方がやられた後かな。後は、エース勝負に負けるとそのまま引っ込まれて、最終盤にもう一回出てくるから手が付けられない」
「あ、そっか。正念場のタイミングが二回来て、さらに相手のエースはいないから、やりたい放題なんだ」
役割が増えただけで、考えることがたくさんだ。クレアは小さな頭を使って必死に考え続ける。
「まあ、指示はあんたに任せる。負けてもバラムがボコされるだけだ。気負わずいけ」
「それはめっちゃ気負うんですけど!?」
これから先に待っているどの試合よりも、今日だけは絶対に負けられない。負けたら最後、バラムの命が保証されないのだ! 勘弁してほしい。
「先発はどうする? 初手キラーを警戒するなら、エースのポルクスが先発。考えるのがあれなら、僕の耐久で黙らせてもいい。ティルは大事にね」
「ポルクス君は、出来れば残り1体の時の方が良いんだよね?」
「エースの使い方は基本そうなる。が、ここにバラムっていう、バグみたいな存在がいるってことは頭に入れとけ」
「僕の使い方の理想は1体以上がやられた後ってことは、伝えとくね」
とにかく、グランドアクトに詳しい二人が言うには、バラムがおかしいらしい。自分でもそれを言うぐらいなので、相当自信があるのだろう。
それから、キラーであるティルは大事に使え、ということみたいだ。
「アクシィ出張サービスを、ご利用いただき、ありがとうございます、です! お呼びいただいた、リーン様、ですか?」
「あ、きたきたー。うちら、グランドアクトの即興試合がやりたいんだよねー」
「かしこまりました! 即興試合用の、アクトフィールドを展開、です!」
グランドアクトスタジオにいたアクシィと全く同じように、体から光の波紋が出力される。同時に、周囲の姿が変わっていく。
中央にはグランドサークルがあり、これらの左右に互いのシフトゾーンと、メイカーの所定地を示すマーカーが光っている。
「即席チームは、公式データに残りません! また、メイカー不在でも戦えますが、自分で自分に指示を出すことになります、です! 交代には、ご注意ください、です!」
メイカーの有無にかかわらず、シフトゾーンとグランドサークル間での通信は一方通行のみ。そのため、場に出ているアクターがその場を対応をしていく形になるようだ。
「泣いて許しを請うなら、これが最後のチャンスだぞ?」
「さっさとミサンガを返してくれれば、こんなことしなくてすむんだよね」
「ハッ! 女の趣味が悪い奴はかわいそうだぜ」
お互いに言いたいことだけ言い合った後、それぞれのマーカー元に集まるとメイカーパネルが展開される。
今回は少し画面が変わっており、即席チームで行うか、登録チームで行うかの選択画面から始まった。
「私たちは登録チームだね」
クレアが声に出しながら確認を行い、画面をタップする。次の指示に従い、アクトリンクを立ち上げたスマホをかざすと認証が通った。
「えっと、今回も先発はポルクス君にお願いしたいです」
「分かった。出来るだけ、エースへの道を切り開こう」
ポルクスからの同意を得たクレアが、先発と待機メンバーを選択する。これが登録されるとクレアのそばにいた三人の足元が光り、次の瞬間にはみんなシフトゾーンへ移動していた。
「二回目にもなれば、びっくりしませんとも」
タイミングがいまだによくわかっていなくてちょっとドキッとしたけれど、クレアはわざと虚勢を張って自分を誤魔化していた。
「全アクターの選出を、確認! 今回行われる即興試合は3vs3、です!」
半グレ集団の選出も終わったらしく、グランドサークルの中央にいたアクシィが場外へと移動していく。
「それでは、即興試合、開始、です!」
アクシィの宣言と同時に、試合の流れを表示するモニターに、先発アクターたちの名前が表示された。
♢
【名前】ポルクス ♂
【種族】カラス族
【スタイル】「クロノス」「ファーマメント」
【役割】エース
【ステータス】
生命力:D
攻撃力:E
防御力:E
魔法力:C
精神力:C
敏捷力:A
【アクティブスキル】
回帰時計
エアライズシフト
マジカルトス
刹那
心変わり
【パッシブスキル】
タイムバウンド
ループライド
♢
【名前】ティル ♂
【種族】ヘビ族
【スタイル】「ウィズダム」「メメント」
【役割】キラー
【ステータス】
生命力:E
攻撃力:E
防御力:E
魔法力:C
精神力:C
敏捷力:E
【アクティブスキル】
ジャマーインパクト
反転の構え
堅固の教え
【パッシブスキル】
なし
♢
【名前】バラム ♂
【種族】ヒツジ族
【スタイル】「リバイヴ」
【役割】アシスト
【ステータス】
生命力:B
攻撃力:E
防御力:C
魔法力:E
精神力:C
素早さ:E
【アクティブスキル】
命織りの環
聖火の指針
再起の幕
リジェネコード
傷つけること勿れ
希望が再び芽生えますように
【パッシブスキル】
コンスタントリリース
傷の灯
生者の責務




