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本を買ったら、その日のうちにカフェで読め!

「新書1冊ですね。1100円になります!」

会計を済ませた私は、そのまま書店併設のカフェへと駆け込んだ。

どうやら、1000円以上のお買い上げで、おかわりが一杯無料らしいからだ。


席に座ると、コーヒーの香りが鼻腔をくすぐり、心地良いピアノの音色が耳を撫でていた。


私は先ほど買った新書を開く。

柔らかい毛皮のような、わずかにくすんだ紙の手触り。


そして前書きから、読む。

目を目いっぱいに見開き、眼を動かす筋肉が疲労するくらいに目を上下にスキャンさせ続けながら、食い入るように、早く、最後まで、読む。


私にとって、本を読むというのは極めてアクティブで、能動的だ。

そう、映画のような感動とスポーツのような心地よい疲れが、終わった後にどっと来るものだ。


それは一般に言われるような「ベッドで横になって、暇つぶしに…」のようなものとは全く違う。

読書とは、娯楽であり、著者との戦いだ。

しかし、楽しければいい。戦の勝敗はどうでもよくて、その過程が楽しければいい。


批判読みにしても、主張を忠実になぞるにしても。

しばしば本の内容は私の理解できる範囲を超えてくるし、内容も覚えきれない。

しかし、それに何とか食らいつこうとして、その過程を楽しむ。


私たちのワーキングメモリーはびっくりするほど小さくて、前のページで書いていたことを忘れてしまうことはしばしば。

「第四章で議論したように」・・・え、第四章にそんなこと書いてたっけ⁉、みたいに。


だから、読んで、引き返して、また読む。

やばい、脳の限界だ。集中力が、切れてきた。

レジに向かって、メニューを眺める。

スコーンか、カフェモカか…今日はスコーンの気分かな。あとコーヒーおかわり。

スコーンの甘みが口を満たすと、すっと頭が冴えてきた。

見える、私にも敵が見える…!

そうやって何度も躓いては、引き返すうち、だんだんと左手に感じるページ数が減っていく。

そして筆者の語りは最後に向けて加速していくにつれ、ページが進むにつれ頁をめくる手に汗がにじむ。

そして、「あとがき」に目を通して、本を閉じる。


ああ、楽しかった。

まるで映画を見終わったような達成感、高揚感だ。


そう、私がカフェで本を読む理由。


それは動画配信が盛んになっても映画館が存続している理由と同じだ。

映画館は、「映画館に来たし入場料も払っちゃった」し、「生活から切り離された空間で熱中する」ためにある。

カフェもまた、「コーヒー頼んじゃったし」「生活からは切り離された空間」である。

さらには「迷惑にならない範囲で読み切らないといけない」という期日付きだ。

人の集中力は通常の場合は40分で切れるから、40分で読み切る勢いで読む。

脳がブドウ糖を猛烈に要求するから、そのくらい読んだらちょっとしたデザートを齧るのもいい。

カフェインと心地良い音楽は読書の高揚感を適度に増強してくれて、報酬系を刺激し、読書をより「楽しいもの」として脳に刻み込む。


そう、ベッドサイドに置いておいても、積読は減らない。

複雑化しノイジーになったいま、本と真剣に向き合うには「場」が必要なのだ。

そして、読むのに一番モチベーションが高い時間。


()()()()()()()()()()()()()()|》《・》


買ったら勢いそのままに読んでしまう。

そして、「そういえばあんな話書いてあったなー」と読み返すために、手元に置いておく。

覚える必要はない。


本屋にまずは足を運ぼう。

そして、薄くて、平易で、1時間で一気読みできる、自分が面白い本を探そう。

読むのが遅いなら、ちょっとした冊子でOK。

そして、まずは一冊買ってみて、買ったらその日のうちにカフェで最初から最後まで読んでみよう。

本屋併設のカフェなら大抵怒られない。


てきとうでいい。覚えられなくていい。

そこからがブック・リハビリテーションの始まりだ。




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