研究所への招待
Dr.ラビットの案内で、スカーレット達は夜の街を抜け、郊外へと向かっていた。
ラビリントシティの煌めくネオンが遠ざかるにつれ、人工の光は薄れ、やがて霧に包まれた森へと足を踏み入れる。
「……本当に、こんなとこに何かあんのか?」
スカーレットが腕を組みながら、不審そうに辺りを見回す。
「すっごく怪しいわねぇ、Dr.ラビット?」
ベリルは妖艶に微笑みながらも、その瞳は鋭い。
ノワールがふと立ち止まり、わずかに目を細めた。
「……気配が変わった。ここから“結界”の内側ね。」
スカーレットがキョロキョロと辺りを見回すが、特に何も変化はないように見える。
「結界ぃ? そんなもん、どこにあるんだよ?」
「鈍感ね。空気の“流れ”が違うわ。」
ノワールの指摘に、Dr.ラビットはニヤリと笑った。
「さすがだな。まぁ、ここはただの森じゃないってことさ。
やがて、霧の向こうから古びた洋館が姿を現した。
——まるで時が止まったかのような、重厚な建物。
「……うわ、すげぇ」
スカーレットは思わず感嘆の声を漏らす。
「時代錯誤な洋館ねぇ……こういうの、ホラー映画の舞台になりがちよね?」
ベリルが肩をすくめる。
ノワールは、霧の向こうにわずかに光る監視カメラのレンズを見つめた。
「外観は時代遅れでも、中身はそうじゃないみたいね。」
彼女の視線を追って、スカーレットもカメラに気づく。
「……おいおい、なんか見られてんぞ?」
「私たちが来ることは、最初から“想定済み”だったってことかしら?」
ノワールが低く呟くと、Dr.ラビットは無言で扉を押し開けた
ギィ……
重厚な扉が軋む音を立てながら開かれると、そこには——
まるで未来都市のような、近未来の研究所が広がっていた。
「うわ、何コレ!? ハイテクじゃん!!」
スカーレットが思わず叫ぶ。
「……意外ね。」
ベリルも驚いた様子で、周囲を見渡した。
室内には無数のモニターが並び、壁際にはガラスカプセルに収められた奇妙な装置が並んでいる。
「ようこそ、私の研究所へ。」
Dr.ラビットはメガネをクイッと持ち上げながら言った。
「ここでは、“バニー・バトラーズ”の戦闘データを解析し、アビスに対抗する手段を研究している。」
「へぇ〜……」
スカーレットは興味津々で研究機材を眺める。
「じゃあ、私らを”バニー”にしたのも、アンタの仕業ってこと?」
「正確には”適性があった”ということだ。」
Dr.ラビットは、スクリーンに映し出されたデータを示した。
「君たちは皆、“バニー因子”を持っている。それが、アビスの影響を受けた時に”バッド★バニー”として覚醒したんだ。」
「ふぅん、そうゆうもんなのか?」
スカーレットが小首をかしげる。
しかし、ベリルの目が鋭く光る。
「……あなた、何か隠してるわね?」
ノワールはわずかに眉をひそめた。
「……単なる研究施設じゃないわね。」
彼女はモニターに映るデータを睨みつける。
「“バニー・バトラーズ”の戦闘データ……? ずいぶんと手際がいいこと。」
その言葉に、Dr.ラビットは少しだけ口元を歪めた。
「……さて、“次の戦い”に向けて準備をしようか。」
フッと微笑み、話を逸らした。
ノワールは、視線をデータからDr.ラビットに移し、鋭く睨んだ。
「……まぁ、いずれ“本当の目的”はわかるでしょうけど。」
それ以上の追及はせず、静かに息をついた。
その頃——
ラビリントシティの地下深く。
そこには、黒い霧が渦巻く空間が広がっていた。
「……また”バニー”が増えたようだな。」
不気味な声が響く。
霧の中から現れたのは、長い黒髪の男だった。
彼の背後には、無数の”影”が蠢いている。
「だが、所詮は”ウサギ”……“狼”には勝てまい。」
男は冷たく笑いながら、手を掲げる。
すると、闇の中から”巨大な腕”が伸び——
ゴゴゴゴゴ……ッ!!
地面が揺れ、異形の怪物が姿を現した。
「……さぁ。“狩り”の時間だ。」
その瞳が、不気味に赤く光る。
「くしゅんっ!」
スカーレットが突然くしゃみをした。
「……誰かに噂されてるんじゃない?」
ベリルが呆れたように言う。
「ま、まさか……敵が新しいヤツを送り込んできたとか!?」
「……あり得るわね。」
ノワールが静かに言った。
その瞬間——
ビーッ!ビーッ!
警報が鳴り響く。
「アビス・クリーチャー、出現!! 汚染レベルA!!」
機械のような声がスピーカーから響いた。
「おいおい、もうかよ!?」
スカーレットは舌打ちしながら拳を握る。
「どうやら”本番”が来たようね。」
ベリルが楽しげに微笑みながら、銃を回転させる。
ノワールは無言でカタナを抜いた。
「……行くわよ。」
そして——
“バッド★バニー・バトラーズ”が、次の戦場へと駆ける——!!