Act79 大嫌い
2週間もサボってしまって申し訳ないです……!
お詫びも兼ねて今回は長めです
竹林が背丈関係無しに並ぶ
入る人の方向感覚を無くすのその場所に
がらんと開いた土地がひとつ
真ん中には隣に経てば夜を思わせるような巨大な岩
その前に──疲れが入り交じった目をした女性が立つ
王下直属部隊……
「元」王下直属部隊 【六導】キリナ……
「懐かしいな……ここも……」
冷えた岩に手を添えて、コツンと頭を置く
無機質な物体を前にキリナは暫く身を預けていた
「ここにいましたか」
キリナの背に話しかけるのはネカリ
先の戦いでの傷がまだ完全には癒えておらず
右手には包帯を巻いている
「…………ウジマ……」
覇気の無い薄れた声を絞り出す
「皆さん心配してますよ」
「……特にヒビネなんて、目が覚めたばかりなのに
探しに行かないとって……」
「ヒビネ」という名前に肩がピクリと反応するキリナ
「……何故、辞めようと思ったのですか?」
「キリナ様……いや、姉さん?」
ネカリ・ウジマとキリナ・コンラージュ
2人は──血の繋がった兄弟
憤慨の魔人が村を燃やし尽くしたあの日
キリナはネカリの手を引いて遠くへ逃げた
命からがらたどり着いた竹林の村で身を潜め
いつの日か復讐の為キリナは自分を鍛え続けた
母親の姓をキリナが、父方の姓をネカリが受け継いだ
「魔力の流れを読み取る種族」唯一の生き残りとして
「……もう、終わった……」
「あの魔人はもう……死んだじゃない」
「ならもう、私があそこにいる理由は無い……」
うわ言のように呟くキリナの言葉に
ネカリは曇った顔で答える
「……嘘なんだね」
──魔力とは気の流れのようなもの
父と母に再三と教わったものだった
魔力の質が上がれば上がるほど
魔力の揺れは起こらない、が──
「ハハッ……」
「……あの時、何も出来なかった」
キリナは震える声をぽつり、ぽつり呟いていく
「……レアを助けるためにヒビネくんとあの洞窟に入った」
「ゴウゼンと対峙した時思った、ああやっと、父さん母さん……村の皆の仇が取れるって」
キリナはゆっくりとネカリの方へ振り向く
そこには、おおよそアヴェルニア王国最強の部隊の隊長とは思えない、露に濡れる顔をしていた
「何も出来なかった!」
竹林に響く声をあげる
「アイツに攻撃を入れられたのは最初だけ」
「いざアイツの魔力を見た時に……感じた……感じちゃったんだ」
「『勝てない』……って」
「アイツに勝つために今まで鍛錬してきたつもりだった」
「でも……あの日よりもアイツの魔力は強大になってた」
弱気な言葉を紡ぐキリナをネカリは何も言うことなく聴き続ける
「ここで終わるんだと思った、何も出来ないまま父さん母さんと同じように殺されるんだって」
ここまで語ったキリナは顔をあげて
ネカリの前まで歩く、肩を勢いよく掴むと
黒く濁った瞳を揺らしながら再度語る
「────なぁ、あの子は何者だ?」
「……あの子?」
「ヒビネ……、クロード・ヒビネだ」
肩を掴む手の震えが収まり、力がはいる
「──なんでこの子を合格させたんだ?って」
「こんな子よりリスクを取ってオルトー様でも入れた方がいいんじゃないか?」
「魔力がひとつも見れない奇妙な子だって、思ったろ?」
キリナの問いかけにネカリは押し黙る
「面白い体をしてる」と濁したが、魔力が無い体、というのはこの世界では有り得なかった
「そんな子が……あのゴウゼンを……魔人を……」
「たった一人で倒した……しかも、私は見てた、もう1人の魔人にも致命的な傷を与えてた……!」
「…………姉さん、もしかして……辞める理由って」
キリナの心の奥底を見破ってしまったネカリ
遂にネカリの胸を押して聞いた事のない大きな声をあげる
「ああそうだ!!!嫉妬だ!!!」
ガァ、と森の中にいた鳥たちが一斉に飛んだ
「私が倒すハズだ!村を焼いた!全員殺された!
あの日決めた!これは私に課せられた使命なんだって、手の骨が飛び出るまで自分を追い込んだ!」
「──父さん母さんの場所へ行くはずだった、ごめん、やっぱりダメだったって……諦めたつもりだった、ネカリを置いてくのは苦しかったが……どうか自分の意志を継いでくれるかと、身勝手に思ってた……あの時までは!」
怒りと悲しみが混ざった声は小さくなっていき
キリナは膝から崩れ、砂を掴む
「積み上げた時間もゴウゼンに否定された、復讐すらもあの子に奪われた……」
「もう、生きてる意味ないじゃないか」
「…………何がって、何が1番嫌だってさぁ!」
「こんな、醜い感情が出てくる、自分が大ッ嫌いだ……! 」
ポト……ポト……
追い打ちをかけるように空からゴミを洗い流す様に
雨が強く降り注ぐ
地面に這いつくばりながら泣く姉をネカリは
ただ、そばに居ることしか出来なかった




