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傷まみれの旅人  作者: へびうろこ
第四章 「響音の理由編」
82/84

Act79 大嫌い

2週間もサボってしまって申し訳ないです……!

お詫びも兼ねて今回は長めです


竹林が背丈関係無しに並ぶ

入る人の方向感覚を無くすのその場所に


がらんと開いた土地がひとつ

真ん中には隣に経てば夜を思わせるような巨大な岩


その前に──疲れが入り交じった目をした女性が立つ


王下直属部隊……

「元」王下直属部隊 【六導】キリナ……


「懐かしいな……ここも……」


冷えた岩に手を添えて、コツンと頭を置く

無機質な物体を前にキリナは暫く身を預けていた


「ここにいましたか」


キリナの背に話しかけるのはネカリ

先の戦いでの傷がまだ完全には癒えておらず

右手には包帯を巻いている


「…………ウジマ……」


覇気の無い薄れた声を絞り出す


「皆さん心配してますよ」

「……特にヒビネなんて、目が覚めたばかりなのに

探しに行かないとって……」


「ヒビネ」という名前に肩がピクリと反応するキリナ


「……何故、辞めようと思ったのですか?」


「キリナ様……いや、姉さん?」


ネカリ・ウジマとキリナ・コンラージュ

2人は──血の繋がった兄弟


憤慨の魔人が村を燃やし尽くしたあの日

キリナはネカリの手を引いて遠くへ逃げた

命からがらたどり着いた竹林の村で身を潜め

いつの日か復讐の為キリナは自分を鍛え続けた

母親の姓をキリナが、父方の姓をネカリが受け継いだ

「魔力の流れを読み取る種族」唯一の生き残りとして


「……もう、終わった……」

「あの魔人はもう……死んだじゃない」

「ならもう、私があそこにいる理由は無い……」


うわ言のように呟くキリナの言葉に

ネカリは曇った顔で答える


「……嘘なんだね」


──魔力とは気の流れのようなもの

父と母に再三と教わったものだった


魔力の質が上がれば上がるほど

魔力の揺れは起こらない、が──


「ハハッ……」


「……あの時、何も出来なかった」


キリナは震える声をぽつり、ぽつり呟いていく


「……レアを助けるためにヒビネくんとあの洞窟に入った」

「ゴウゼンと対峙した時思った、ああやっと、父さん母さん……村の皆の仇が取れるって」


キリナはゆっくりとネカリの方へ振り向く

そこには、おおよそアヴェルニア王国最強の部隊の隊長とは思えない、露に濡れる顔をしていた


「何も出来なかった!」


竹林に響く声をあげる


「アイツに攻撃を入れられたのは最初だけ」

「いざアイツの魔力を見た時に……感じた……感じちゃったんだ」


「『勝てない』……って」


「アイツに勝つために今まで鍛錬してきたつもりだった」

「でも……あの日よりもアイツの魔力は強大になってた」


弱気な言葉を紡ぐキリナをネカリは何も言うことなく聴き続ける


「ここで終わるんだと思った、何も出来ないまま父さん母さんと同じように殺されるんだって」


ここまで語ったキリナは顔をあげて

ネカリの前まで歩く、肩を勢いよく掴むと

黒く濁った瞳を揺らしながら再度語る


「────なぁ、あの子は何者だ?」


「……あの子?」


「ヒビネ……、クロード・ヒビネだ」


肩を掴む手の震えが収まり、力がはいる


「──なんでこの子を合格させたんだ?って」

「こんな子よりリスクを取ってオルトー様でも入れた方がいいんじゃないか?」


「魔力がひとつも見れない奇妙な子だって、思ったろ?」


キリナの問いかけにネカリは押し黙る

「面白い体をしてる」と濁したが、魔力が無い体、というのはこの世界では有り得なかった


「そんな子が……あのゴウゼンを……魔人を……」


「たった一人で倒した……しかも、私は見てた、もう1人の魔人にも致命的な傷を与えてた……!」


「…………姉さん、もしかして……辞める理由って」


キリナの心の奥底を見破ってしまったネカリ

遂にネカリの胸を押して聞いた事のない大きな声をあげる



「ああそうだ!!!嫉妬だ!!!」




ガァ、と森の中にいた鳥たちが一斉に飛んだ


「私が倒すハズだ!村を焼いた!全員殺された!

あの日決めた!これは私に課せられた使命なんだって、手の骨が飛び出るまで自分を追い込んだ!」


「──父さん母さんの場所へ行くはずだった、ごめん、やっぱりダメだったって……諦めたつもりだった、ネカリを置いてくのは苦しかったが……どうか自分の意志を継いでくれるかと、身勝手に思ってた……あの時までは!」


怒りと悲しみが混ざった声は小さくなっていき

キリナは膝から崩れ、砂を掴む


「積み上げた時間もゴウゼンに否定された、復讐すらもあの子に奪われた……」

「もう、生きてる意味ないじゃないか」

「…………何がって、何が1番嫌だってさぁ!」



「こんな、醜い感情が出てくる、自分が大ッ嫌いだ……! 」


ポト……ポト……


追い打ちをかけるように空からゴミを洗い流す様に

雨が強く降り注ぐ


地面に這いつくばりながら泣く姉をネカリは

ただ、そばに居ることしか出来なかった


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