表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傷まみれの旅人  作者: へびうろこ
第三章 「中級警戒区域合宿」
78/81

Act75 依存

響音は現世で人を泣かせた事が1度だけある

小学校4年生の水泳の着替えの時間の時だ

響音が通っていた学校は4年生から水泳の授業が始まる

その日は初めてのプール開きでクラスの小さな子達は皆

テンションが最高潮だった


男女別の教室に別れ、皆が喜びの声をあげる中

響音は1人、着替えられないまま出た

水着を持っていないからだ


しかし周りにいるのは精神も幼い子供

一人着替えない響音を見た同級生は

面白がって響音の服を無理やり脱がした


──響音の身体は、普通の子供が負っていいものではない

怪我を身体中にしていた


服をぬがした制度はその異様な身体を見て恐怖のあまり

泣き出してしまった


これが響音が唯一現世で人を泣かした瞬間だった


──今の僕は


何回あの子を泣かせてしまったんだろうか


────────────────────


サヴァン王女の謁見から10日程がたった

厄災の一柱を撃破したこと

魔人を単独で討伐した事は既にアヴェルニア全土


ひいてはアヴェルニア以外の四大国家にも影響を与えた


だが、その功績を上げた少年、クロード・ヒビネ

もとい、地球からやってきた黒海堂 響音は今


本当の意味での精神崩壊を起こしていた


コウダイ────


「ヒッ……」


聞きたくない文字、忘れたかった言葉


影はついてくる

どこまで心を満たそうと過去からは逃げられない


コンコン


「だれ……!?」


ドアの音を叩く音が聞こえ、響音は部屋の隅に移動する


「ヒビネ、私だよ、ルシュ……」


「あ……」


響音はドアまで近づいて開ける

廊下には心配した顔のルシュが食事を持っていた


「あ、あれ、ご飯さっき食べたよ」


「……ヒビネ、最後に食べた日からもう4日は経ってるよ」


「……」


「入るね?」


ルシュは響音の部屋に入り、布団の上に座る

サイドテーブルに食事を置くと

自分の隣をポンポンと叩く

吸い込まれるように響音が横に座る


「……食べれそう?」


「…………少しなら」


「食べさせてあげようか?」


「い、いや、そこまでは……」


食事の中にあるスープを1口飲んで少し落ち着く

それでも強烈的な精神の作用はそう簡単に治るものではなかったのだ


「うっ……」


「……大丈夫?」


ルシュが響音の背中をさすりながら

落ち着かせている


「…………あり、がとうルシュ……」


そのまま気絶する様にルシュの方に倒れ込む


「……また寝ちゃったか……」


寝息を立てる響音の髪の毛を瞳にかからないようにするとそのままベットに横にさせる


「ヒビネ……」


目から雫をこぼしたルシュは響音の胸に顔を埋める

しばらくしてから響音から離れて、外へと出る


「……また明日、ね」


外に出るとアシュレイとエクレアが不安そうな顔で見つめていた


「どうだ?」


ルシュは首を横に振る


「ちょっと……今日でもう10日目よ、大丈夫なの?」


いつものトゲがないエクレア

響音の事は王下直属部隊も含め全員が心配していた


「魔人も、厄災も倒せちゃう子なんだから、きっと明日には出てくるよ」


「……アンタも今日は休みなさいよ、そんなに目を晴らして……」


「あ、うん……」


2人を見送ったあと、涙の跡を洗うために洗面所へ行った


顔を洗い流しタオルでふき取ったあと、鏡を見る


──そこには少し笑った顔の女が映っていた


「……あれ」


その顔は紛れもない自分の顔だ


「変だな、また顔がにやけてる……」


ココ最近、顔が緩む事が多かった、理由は──


「おい」


「えっ……」


洗面所の廊下側から声をかけられる


リクだ


リクは1歩、1歩とルシュに近づく


「な、なに?」


リクとはあまり接点が無いため困惑する

掲示板依頼で一緒になった時も一言も喋らないのもザラにあった


「お前……」






「ヒビネに依存してないよな」


「…………イゾン?」


いぞん?なんの言葉がわからないルシュは気まずい雰囲気のままその場を離れようとした


「ご、ごめんね、また明日」


「顔がニヤけてる」


ピタリ、とルシュは背中を向けたまま動きを止める

そのまま何も言えずにその場にとどまってしまう


「……この10日間、ヒビネは顔を出さない」

「誰が行っても顔を出さないが──」


リクはルシュの正面まで立つと目を合わせる


「……お前が行った時だけはドアを開ける」


「厄災を倒し、魔人を倒した存在が、精神を今壊している」


「誰にも会いたくない、誰とも話したくない、だけど」




「「私とだけは、会ってくれる……」」



「ツッ……!?」


無意識のうちに発言した言葉がリクと重なる

その異常さに気づいたルシュは口を手で隠す



「自分だけがヒビネと話せる……ヒビネだけは自分に弱音を吐いてくれる……自分だけがヒビネに食事を渡せる……」


「……いいか、俺たちは一刻も早くヒビネを通常の状態に戻さないといけない」


「その為にやる事を……間違えるなよ」


そう伝えたリクは自分の部屋の方角へ消えていく

ルシュはリクの言葉の数々が自分の胸に突き刺さっていた


「……」


「えへへ……」


「……あれ」


「……ほんとにどうしちゃったんだろ、私……」


鎖が巻かれたような足取りで、ルシュは部屋へと戻った


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ