Act73 森の聖女
スティアノア……?
響音は目が覚めると知らない部屋にいた
殺風景な白色で構成された部屋
清潔感のある布団と薬品のような匂い
暫くすると体に違和感があることが気づく
四肢の部分に針のような物が刺さっている
けれど痛く無く、むしろ身体はとても好調であった
針に触れると「ジジッ」という電気が点いた様な音がした
パタパタとどこからが音が聞こえ
奥から女性がやってきた
「あ、起きました?」
ポニーテールの少し気だるそうな女性が
ひょっこりと顔を出してきた
女性は手首の脈をさわり、目に少しの光を当てる
「べーして」
響音は舌を出すと口内を照らされる
「んー、大丈夫そうだね、帰って大丈夫だよ」
「え、ここ……」
「ここ?治癒魔術師が運営してる施設だよ」
「つっても5人しかいないからねー、治ったんなら、ほら帰った帰った」
ベットから下ろされ施設の玄関までぐいぐい押される
「もう、来るんじゃないよー」
バタン!
「……………………どこだろ、ここ」
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場所が全く分からないのでふらふらと響音は彷徨う
──響音がいる場所はアヴェルニア王都の裏側の町だ
つまり王都を目指せば自然と養成所の方へつくのだが
土地感のない響音は反対方向の森の中へ進んでしまった
しばらく歩いたあと──
ぽつん、と 教会のような建物がでてきた
「…………違う道だったかな……」
気づいた響音は戻ろうと元いた道に戻ろうとした
その時──
「誰かいるのですか?」
教会の中から1人の少女が現れる
真っ白な髪、真っ白な肌、真っ白な服を着た──
まさに「聖女」を具現化したような人だった
「あ……えっと」
「……もしかして、迷ってしまったのですか?」
「は、はい、そうです」
「……もし良かったら1晩お泊まり下さい、この森は魔獣が出ます、今日はもう預かり子もいないので……」
「いや……でも」
「貴方は「ケガレ」が一切見えません……貴方のような人は初めてです、どうぞ遠慮せず」
少女は教会の中へと入っていく
時刻は夕暮れを過ごしていたが、教会の入口だけは光が指しているように見えた
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夕飯に軽い食事を出されたあと、寝室へと移動した
ただ、慣れない環境かやはり眠れなく、少し外へと出る
光が一切ない森の中、空で遊ぶ星達が見える
「眠れないのですか?」
教会の少女に話しかけられ振り向く、理由は不明だが
突然話しかけられても不快感がなかった
「そういえば名乗っていませんでしたね」
「私、この教会のシスター ルノン・スティアノアと言いい
「……クロード・ヒビネです」
「素敵なお名前ですね……おや?ヒビネ様……?」
ルノンと名乗る少女は自分の事を知っているようだった
「……あ、いえ人違いかもしれません、ごめんなさい」
少女は空を見上げる、風に揺られて1枚の絵画のようだ
「空は綺麗ですか?」
「……星は、見えるけど……」
少女と会話してから響音は違和感を感じる
ずっと目を閉じているのだ
「……あ、私、生まれつき目が見えないんです」
「……いつか、空を見てみたいんです、皆が綺麗だと
言っているので……」
暫く止まったあと、そろそろ冷えますよ、と中へ入った
少女と話したあと、理由は不明だがすぐに寝ることが出来た
ルノン・スティアノア──
どこかで聞いたことがある、と響音は眠りに落ちた