Act72 中級警戒区域合宿 その後
前代未聞の中終わった中級警戒区域合宿
『顔の無い獅子』『憤慨の魔人 ゴウゼン』
この2つの驚異を排除した養成所の候補生達
たった3日で起こった出来事として
これは後に「スミダ海域の戦い」として語り継がれる
合宿所が厄災の影響により半壊
そのまま合宿は1時中止という流れに落ち着いた
4日目にアリシア、ローガンの2名が合流し
2名の名のもとに『顔の無い獅子』の完全討伐が確認
養成所候補生達は全員何事もなく無事であった
クロード・ヒビネはレア・エバルタを蘇生後
そのまま倒れ眠っていた、体に相当な負荷を負っており
ヒビネの治癒力を持ってしても修復に時間がかかっていた
5日目の明朝──
まだヒビネは目を覚まさないが
バロンの大型バ車の元 王立機関アクロアヘ帰宅
その日、候補生と王下直属部隊は泥のように眠った
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響音は夢を見た
どこまでも無限に続く地平線
快晴と美味しそうな綿雲
大地には柔らかい草木が茂り、沢山の蝶が舞っている
太陽が輝くが暑くない、かといって寒くもない
自分の手足に違和感を感じた
傷がひとつも無い、顔にフォークで削られた傷も
腕にある火傷のあとも綺麗に消えていた
視線をまた前に戻すと──先に女性が立っていた
見た事ない女性であった、が
響音は何故か、それを求めるように歩く
1歩、1歩と歩くがその度に女性は小さくなる
「あ、あの」
声を出してみるが届かない
響音は走ってみるがやはり動きに合わせて
女性は小さくなる
これはダメだとなった響音は歩みを止める
歩みをとめた瞬間、たえがたい眠気が来る
流れるように草原の上で横になる
重くなるまぶたに抵抗しようとするが
心地よい風と鳥の声で限界が来る
落ちる数秒前──目の前に、先程の女性が
覗き込んでいた
── ──、──
何かを話しているが響音にはよく聞こえなかった
ただ、最後の一言だけは聞き取ることが出来た
──ごめん、連れてきてしまって
女性の涙が頬に当たる
響音の意識は静かに落ちていった
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とある場所──1人の少女は苦しみに悶える
「あぁもう痛いッ!痛いッ!」
本来ならふたつあるはずの翼が片翼しかない少女は
身体を治すため治療を受けていた
「我慢しなさい……」
悶えるのは快楽の魔人キュララ
テキパキと治療をするのは畏怖の魔人ミョラだった
「クソ!クソ!本当にあの男……!絶対許さないんだから!」
ちぎれた羽の断面を見てミョラは不気味に思う
(……魔人の体にこうも簡単に……)
「名前は覚えてるッ!治ったらすぐに殺しに行ってやるわ」
「……どこにいるか、わかるの?」
「……」
「……今は治すことに専念しなさい、これは少し時間がかかるわよ」
興奮するキュララを抑えると、バタバタと足音が聞こえる、呼吸を荒くして現れたのは、誠実の魔人 シェンドであった
「おい!キュララ!ゴウゼンは……」
「うっさいわね!死んだわよ!」
「──誰に、誰にやられた」
「ヒビネって奴よ!あぁもう、今痛いから後にして!」
そう吐き散らかしキュララは寝台に踞り閉め出される
シェンドは仲間を失い冷静で居られずただ、その名前を連呼していた
「ヒビネ……ヒビネ……………ヒビネ……」
そして思い出す キサセイ村で出会ったあの少年
初めてしっかり対話した人間──
「アイツか……」
あの日掴まれた手首を眺めると
シェンドは深く呼吸をして心構える
「──仇は取ってやる、憤慨のおっさん」
正義と悪──
クロード・ヒビネとシェンドの存在は
これから起こりうる様々な事件で関与していく
今はただ、見守るしかない