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傷まみれの旅人  作者: へびうろこ
第三章 「中級警戒区域合宿」
73/81

Act 70 〇〇〇〇

ゴミだらけの部屋 鎖とバット 響音の部屋

死ぬ直前になると昔の思い出が頭に浮かぶ「走馬灯」

響音は先生に教わっていた


「……」


部屋の真ん中で響音は座り込んでいた

手と腹部に穴が開き血が流れている

しかし何故か苦しいという感情はなく

むしろ気持ちの良い感覚になっていた


「っと」


目の前に男がいつの間にか座っていた

響音は前を向くが、男の顔は影が濃くよく見えない


「奪え」


男の短い言葉に、響音は戸惑う


「弱いから奪われるんだ」


言葉の意味を理解できない響音だが

響音の頭に痛みが走る──


「だれ……だ……?」


「めんどくせぇな、ごちゃごちゃ言うな」


男は立ち上がる

響音も何故か立ち上がっていた


男は、響音の首をつかみ、ゆっくりと──絞める


「あ……がっ」


響音は抵抗しようとするが、手が動かない


「苦しいだろう、理不尽だろう」

「辛いだろう、泣きたいだろう」


男はニヤニヤとしながら首を絞める

その力はさらに強くなる


「痛いだろう、怒りたいだろう」

「殺したいだろう、殺したいだろう、殺したいだろ!」


男は首を離すと響音を蹴り飛ばす

いつの間にか響音の後ろは奈落に変化しており

響音はそのままゆっくりと落下していく


「奪われる側になるな、奪う側になれ」


「最初で最後の俺からの手向けの言葉だ、よく聞け」


男は自分で──自分の首を締めた


「流れる魔力を奪え、奪った魔力を利用しろ」

「耐えなく奪え、奪い続けろ」

「あとはてめぇでなんとかしろ」


響音は体を動かし、頭から落ちる

自分自身の首を持つ


「──そうだ、それでいい」


男は塵となって消えた、落ち続け闇だけとなった

響音は目を開く、目の前に小さな──自分がいる


泣いてる、体は傷まみれだ


響音は、自分を優しく包む


よく頑張ったね、辛かったね


世界は光る 白の光に包まれる


さぁ─────────────







────────────────────





洞窟──

体が痛い、声が出づらい、焦げ臭い、尿臭い


「あっ♡気づいた?ヒビネ──」





殺そう





響音は自分の首を強く絞める

紫色の光が響音の周りを包む

腕に浮かぶ紋様はやがて赤と紫が混ざりあった色になる

響音の目はギラギラと光る


右腕は絶えず輝く赤紫の光 どろどろした光を放つ

左手は手が黒く染まる、黒より深い黒、漆黒


「……ぇ、なにこれ………………ッ!?」


キュララは今まで感じたことの無い恐怖を読み取り

大きく後ろに下がる


「あ?なんだ、オイ──」


立ちながら油断しているゴウゼンの首を左手で掴む

響音の黒い手は、ゴウゼンの首から舌を闇で包む


「……!!?ォィなんだよ、こ──グ!?」


ゴウゼンは白目を向き苦しみの声を上げる

響音が左手を離すとそのまま膝から崩れ落ち

泡を吹きながら倒れる


「……!!……!!?……!!!!?」


言葉を発せなくなったゴウゼンに跨ると

響音はゆっくと右手を上げる


その異様なオーラに倒れていたキリナが目を覚ます


「な、なんスかこれ……ヒッ!」


キリナは──

この時の響音の様子をこう語った


あれはまるで──おとぎ話に出てくる


悪魔のようだ、と


響音の右腕がゴウゼンの顎を打ち砕き

そのまま頭を吹き飛ばす、洞窟は大きく揺れ

天井の石が砕け、落ちる


「ガハアッ!オイ!ちょっとまて、オ──」


ゴウゼンの頭が再生したと同時に

響音は頭を引きちぎる──

その後何度も再生するゴウゼンの頭を潰してちぎり

ひねり、まげて、目玉を引き抜く


ぐちゃ ぐちゃ、びしゃ ずちゃ ぶち


頭だけでは止まらず手の指を、歯を、胸を壊し尽くす

それはもう戦いではなく──


ただの蹂躙だった


再生が遅れるゴウゼン、顔は半分しかなく──


「ゆ、ゆるし」


「死ね」


最後の一撃を首元に叩き込み

巨大な赤紫の魔力が爆発する

その一撃で──洞窟、及び前方の大木まで

全てが粉々になっており、空から灼熱の太陽が顔を出すな


ゴウゼンの体は、完全に動かなくなっており

再生が始まることは無かった


立ち上がる響音はキュララを見る


「ひ……」


キュララは翼を広げ、行先も決めずに飛び立った


(まずい……まずいまずいまずい……!)


(何……?あの力……!ゴウゼンが手も足も……!)


とにかく速さが許す限りの速度で空を飛ぶ


「と、とにかく王に報告を──」


「おい」


その短い言葉に、キュララは凍りつく

背中に──彼が乗っている


響音はキュララの左翼を握りしめる


「ヒギャアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」


神経を直接握りつぶされたような感覚をキュララは喰らう

響音はそのままブチィとキュララの翼をもぎ取る


「ッ─────────────!」


キュララは苦しみながら氷魔術を展開し響音を振り落とす

流石にそのまま響音は落ちて行く──


「次はもう片方、お前に食わせて殺す」


そう言い残し、消えていった



──ついに賽は投げられた


これから向かうのは正義か、悪か──


Act 70


強 奪 魔 術




あとは、破滅に進むだけです

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