Act66 レア・エバルタ
「この子、本当になんの才能も無い……」
5歳の誕生日の時、母親にそう言われた
私の家は5人兄弟だった
特に貧しくもない、凄いお金持ちでもない普通の家
だけど、母親は人一倍子供の能力にうるさい人だった
私は次女でした
お兄ちゃんが2人とお姉ちゃん、そして弟がいる
1番上のお兄ちゃんは村でも有名な近衛兵
アヴェルニアの王都を守る兵隊として活躍してる
下のお兄ちゃんは「魔具製造師」の資格を持つ人だ
皆が日常的に使っている魔具を作れる人
お姉ちゃんは北の国、タイタンに身を置いている学者
アノセの歴史を人々に伝えるために一人で旅立った
自分の居場所がほしい
お兄ちゃんとお姉ちゃんが家を出た時、やっと自分の居場所ができると思ってた
──弟が産まれた時その希望はもう潰えたけど
弟はまだ家にいる、今は10歳の小さな子だ
だけど、私たち4人の誰よりも魔術の才能がある
「治癒魔術」を使える、だから私の家は国の庇護を受けている、お母さんはとても嬉しそうだった
私は弟と誕生日が同じ
弟が生まれた日に、弟は取り上げてくれた人の疲れを癒していた
治癒魔術じゃないですか!?と聞かされたお母さんの顔を私は今も忘れられない
あの日私は5歳だったけど、泣きもしなかったし
嫉妬もしなかった
ただ、この世界に私の居場所は無いと認識しただけだ
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何もかもが嫌になった
この家をとにかく早く出たかった
そんな時──思い出した
王立試験
合格すれば寮に入れる
そのまま上手く行けば王下直属部隊への道がある
……何も才能がない私でも、一筋の光があるかもしれない
だからお金を貯めた、毎日毎日働いた
私は人の前に出るのが苦手だから
裏方作業の仕事をとにかくこなした
──家を出る日が来た、なるべく最低限の荷物で
悟られないように、逃げるように
家を出て歩く時、声をかけられた
「なに、どっかいくの?」
お母さん、膝には弟がぺったりついていた
弟は私の方に来るとニコニコしていた
頭を撫でて「すぐ帰るよ」と伝えた
多分もう二度と会うことは無いけど
さようなら、お母さん
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──暗い、暗い静かな洞窟
ぴちょん、と水滴が落ちる音がする中
私は今──捕まっている
忘れもしない、今私の目の前にいるこの2人──
キサセイ村で見た、魔人のふたりだ
「キュララ!コイツ、捕まえてどうすんだ!オイ!」
大柄な男と、やけに露出の多いこの女──
「餌よ、餌♡この子がいちばん厄介そうだしね〜♡」
「あの連中は絶対助けにくる……その時ついでに2,3人殺せ ればラッキー☆って感じ〜♡♡♡」
レアの身に……刻一刻と危機が迫っていた……