Act64 『顔の無い獅子』討伐作戦4
ルシュはアノセに生を受けてから15年ほど経つ
しかしここまで耳が潰れるような音は初めてだった
海に巨大な穴が開き、爆風を喰らう
しかしその爆風は厄災のものでは無かった
やがて風が収まると、空は雲ひとつ無い青空
天から光の柱が降り注ぎ、海水が雨のように落ちてきた
「……倒……した……の?」
ルシュは震えた声を出した
「確認しますよ!デルガリヒ!キリナ!」
ヴィクシー達は海面の近くまで走っていく
走る3人を見る中、隣に座っていたカマリが
両手を地面に付けて 白い顔をしていた
「糸が……切れた……」
それは、その場にいる全員を絶望させるには
あまりにも残酷な言葉だった
「あは……カマリ様、じょ、冗談が過ぎて……」
アランが必死に耐えるが、カマリの顔は変わらず
そのまま頭を砂浜に打ち付けた
「いや……ダメだよ……そんな……」
手の震えが止まらない
ルシュはの視界はみるみるうちに悪くなる
脳を直接揺らされたような吐き気がする
「嫌だッ!嫌だ嫌だぁ!ヒビネ、やだよぉっ!」
涙を流しながら海の方へ走る
足が上手く動かず転ぶ、立ち上がりまた走る
ヴィクシー達の確認作業を通り過ぎ、海へと入る
警戒海域など関係なく、絶えず探す
──しかし、いつまでも見つかることはなく
濡れた身体に冷たい波を打ちながらルシュは放心した
「私が……私が私……わた、わ、、」
「ルシュ!!!!!!!!!!!!!!」
大きな声でルシュを呼ぶキサラ
「はやく!」
手を引いてルシュを走らせる
たどり着いたそこには──
「あ……アンタがルシュ?」
──金髪の……派手な女の人がいた
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体が動かない、冷たい──
あの爆発のあとどうなったんだろう
厄災は倒せたのか、皆は無事か
どうなってるのか不明だが確かなことは──
(たぶんこのまま死んじゃうな……ぼく)
痛いという感覚はもう無くなっており
血液が残ってるのかもわからない
段々と薄れゆく意識の中、何かに引っ張れる
一瞬の激痛のあと、恐らく砂浜へと放り出された
「うっ、ごホッ……」
「……あの人には内緒で1回だけ助けたげる、まぁ多分バレるんろうけど……」
「ぁ……」
「ル……しゅ……」
響音の意識は完全に途切れ、静かになる
「……ほかの女と名前間違えるなんて、サイテー」
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「だ、誰ですか貴方」
「……」
目の前の金髪の女性は、ジロジロと私の顔を見てる
顔をグイッと近づけ瞳の裏側を覗く勢いだった
「……わたし、コイツの彼女」
「え……」
「早く治して……起きたら伝えて」
「貸しひとつ……って」
女は音もなく、消えた
さて……?