Act56 葛藤
8/13日の分、遅くなりました!
先日の分が本日の16:00に出てます、そちらも合わせてお願いします!
目が覚めると知らない場所だった
頭に冷えた感触がある
「あ……気づいた?」
傍らにルシュが座っていた
こういったシーンを何度も見ている気がするが
ルシュもそろそろ慣れたのか果実の皮をサクサク剥いてる
「……どれくらい寝てた?」
「いや、今回はそこまでだよ、あと少しでお夕飯」
ランニングが終わりから換算すると
響音が眠っていた時間は3時間程だった
丸一日以上寝ていた時よりも成長(?)はしていた
「はい、あーん」
ルシュは果実の一切れを響音の口に運ぶ
そのままシャリという音と共に口の中に酸味のある味が広がる
「……?」
知っている味がする、夏場にミノル先生が持ってきた……
「梨……?」
「美味しいよねー、ヒノク」
冬に取れるリンゴみたいなのがヨノク
夏にとれるのがヒノク……
世界が変わっても取れる果実の種類は変わらない
「……何があったの?椅子も蹴飛ばされてたし」
「ッ!そうだ、さっき……」
──ここまで言って口が止まる
今ここで、「この10日間のうちに、誰かが死ぬ」など
一体信じてくれるだろうか
それどころか全員がパニックになってしまい
身が入らないのでなmwいのだろうか
「……いや、なんでもないよ」
この話は皆にしてはいけない
その後夕食を食べたあと、響音はある場所に向かった
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コンコン
「はい、どうぞ」
「失礼……します」
「あら……ヒビネ君、どうしました?」
響音が向かったのは王下直属部隊の待機部屋
デルガリヒ、ヴィクシー、キリナ
そして明日来る予定であったカマリがいた
「……えっと」
なんと切り出そうか迷う
知らない女が入ってきて……いや
10日間以内に誰か死んじゃうかも!……いや
超絶迷った挙句、先に口を出したのはカマリだった
「ヒビネちゃん、はいかいいえで答えられる?♡」
「……は、はい」
「今からしようとする話は重要な話?♡」
「はい」
「……この合宿に対しての話?♡」
「………………は、はい?」
「んー、合宿に対しての文句の話?♡」
「いいえ!」
「話さないと、まずいかもしれない話?」
「はい」
「……養成所候補生と、私たちに関わる話……?」
「……ッ、はい!」
そこまで話したところで暫くカマリが考える
「…………………………誰かに被害が出る可能性ある?」
「……はい」
カマリのクローズクエスチョンで絞った内容
後ろで二人を見ている王下直属部隊のメンバーも
不安な顔で二人の会話を聞いていた
「ヒビネちゃん、話したい内容の中で」
「1番最悪な場合のパターンで結論だけ教えてくれる?」
「……10日以内に、誰かが……死んじゃう、かも……」
その話を聴いたヴィクシーは直ぐに何かを書き始めると
ワロウスに結び付けて飛ばした
「とりあえず、アヴェルニア王国に伝えました」
「一旦明日は室内で過ごそう、宿の管理人には俺が言っておく」
「室内でできるメニュー考えておくッス」
響音の一言で、全員が自分の行動を始めた
その姿に響音は少し戸惑う
「なんで……」
「……もしかして『信じてくれるわけない』って思った?」
カマリが呟くとゆっくりヒビネの頬を包む
「信じますよ、可愛い候補生のことなんやから♡」
「……」
自分の話を信じてくれる──
それだけで、響音の目には雫が溜まり始める
「あらあら、可愛い顔が台無しやわ、こっちおいで」
カマリが座らせると、ヴィクシーが冷たいお茶を出す
「──廊下で聞いてる貴方も、入りや?♡」
少しの静寂のあと、扉が開く
聞いていたのはアシュレイだった
「──すまん、廊下を歩くヒビネが見えてな……」
「……いや、アシュレイにも聞いて欲しい……」
「まだ、話とかないと、いけないこと、ある」
「……わかった、ゆっくり聞こう」
アシュレイも座ると、ヒビネは今日の昼時に起こったことを話していくのだった