Act55 2人目
先日出せずに本当に申し訳ない……
8/13日は16:00と21:00付近に2話出します!!!
初日の長距離ランニングが早くおわった響音は
合宿所にある食堂の長机でうたた寝……もとい疲れた体を癒していた
(つかれた……)
近くが海辺なのもあり、潮風がただよう
水泳の授業の後のあの感覚に似ている
この後夕飯があるのに……ウトウトしていると
ポン、と誰かに肩を叩かれた
振り向こうとすると、顔を優しく掴まれて
前向きにされる
「だーれだ?」
後ろから声をかけられ、戸惑う
誰……と言われても顔を見ないとわからない
とまで考えたが、ここ半年養成所にいたため
響音の頭は少しだけ柔らかくなっていた
(そういう遊びかな……)
間違いなく養成所メンバーではない
流石に全員の声は覚えている
声質的にも女性のはずだ
ここまで声が高い男性はいないはず(⚠︎響音視点の話です)
(あとは一緒に来ているヴィクシー様か、カマリ様……)
ヴィクシー様はこんな事するタイプではないだろう
つまり消去法でカマリ様……
…………………………
……カマリ様が来るのは……明日だ
「……誰?」
今自分は知らない可能性のある人間に頭を掴まれてる
恐怖と共に「侵入者だったらどうしよう」と少しだけ考えた、ここは中級海域、魔人が出る可能性だって0じゃないはず……
「そんな警戒しなくてもいいじゃん」
声の主はそういいながら手を離した
この隙に素早く動いて距離をとる、そこにいたのは……
「…………誰?」
金髪でふわふわした髪型の女性だ
アリシア様が金髪だが、明らかに違う
「えっ、酷くない?」
「……あ、そっか、これでわかる?」
そう言うやいなや、女性の横に同じくらいの大きさの穴が現れた、彼女はそこに手を突っ込むと
派手な色をしたネオンのパーカーを取りだし、着る
「…………あ」
派手な見た目の金髪の女の子
かなり前に熊型魔獣がアヴェルニア城下町に現れた時に出会った3人組のうち1人だ
「思い出した?」
「アンタもあの時よりはずっと強くなったみたいね」
「……でも、まだ開花してないか」
「開花……?」
意味深な発言をした彼女に一瞬困惑するが、直ぐに切り替える
「ど、どうやってここに入ったんですか?」
「どうって……普通に鍵空いてたけど」
「え、あ、そうだった」
あまりに当たり前の言葉に響音の調子が崩れる
「今日は警告を伝えに来たんだ、あの人がどうしても言ってきて欲しいって言うからさ……」
『あの人』という単語を気にかけるが
考える前に彼女が先に口を開いた
「あんた、今日からの10日間の内、大きな戦いが2回くるよ、死相は1枚見えてる」
その言葉に電流が走る
2回来る戦い──ではなく最後の言葉だ
「し、そう……?」
「言葉の意味だよ、この10日間の内、気をつけないと誰か死ぬよ」
「………………誰かは不明って事ですか?」
彼女はコクリと頷くと今度は後ろに大きな穴が空いた
次はしっかりと前から見ることが出来た
真っ黒な空間に煌びやかな星のようなモノが
散らばめられていた
「ね、アンタ名前は?」
魔王のような佇まいの彼女
その話し方はまるで、初めて隣の席に座った様な……
「……ヒビネ、クロード・ヒビネ」
警戒しながらも自分の名前を述べる
「そ、私もじゃあ紹介しなきゃね」
「私はカノンよ」
「『奏』でる『音』って書いて──奏音よ」
「………………!!!!」
彼女の発言に大きく目を見開く
自己紹介の時、なんと書くか教える時の──
「ヒビネ……『響』く『音』で響音かしら?
あれ、私たち名前のニュアンス似てるね」
「クロードはちょっとわからないけど『くろうど』と言った所?漢字はちょっと推測できないけど」
確信した「漢字」という単語を難なく使った
『響』と『奏』といった単語に何かしらの繋がりがあることもわかった
この女──いや、カノンは自分と同じ、日本人だ
「……あ、苗字は鳴木場ね、鳴木場奏音」
「ヒビネ!なんの騒ぎ!?」
遠くからルシュの声が聞こえてきた
「あ……カノジョさん来たみたいだから帰る、またいつか会おうね、今度は開花した状態でね」
「待っ……!」
響音は走って掴もうとするが
カノンは穴の中に消え、穴は跡形もなく消え去る
何も無い空間を掴んだ響音はその場で呆然とする
──自分の他に、この世界に迷い込んだ人がいる
情報がオーバーしてしまった響音はその場で倒れた