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傷まみれの旅人  作者: へびうろこ
第三章 「中級警戒区域合宿」
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Act54 ヴィクシーの気持ち

11日目!間に合った!


「なぜこの子を合格させるんですか?」


ヴィクシーは王立試験最終日の夜

アリシアにこの質問を投げかけた


「なぜ、とは?」


アリシアの逆の問いかけにヴィクシーは縮こまる


「あ、いえ……」


「いや、別に気に障る訳ではない、恐らく100人の人間がいたら100人は疑問を持つからね」

「率直な意見が聞きたい」


「……試験を通して思いましたが、この子はまず基礎がなっていない……という問題ではありません『常識が通用しない』」

「……かと思えば、オルト様を一撃で戦闘不可能状態まで持っていく謎の魔術」

「それでも普通に日常に溶け込んでいる……裏表の無い性格」

「最終日、アシュレイ様やレセナ様……アランとも、キサラともルシュちゃんとも仲良さそうで」

「……なにかのトリガーで自分が戦意喪失するかもしれない、と、私なら……」


ヴィクシーはそこまで語ると目をつぶる

やがて纏まったようにまた口を開く


「……おそらく私は、あの子が怖いのです」


「なるほどね」


アリシアはヴィクシーに体を向ける


「それはね、私も一緒なんです、ヴィクシー様」


「え……」


「ヴィクシー様、前にあった熊型魔獣が2体出現したのを覚えてますか?」


「ええ、私が行こうとしましたが……アリシア様が行ったものですよね?」


「実は、その時私はヒビネと会っているんです」


「!それは……」


忘れもしないアヴェルニア城下町で起きた事件

魔獣を吹き飛ばし、ルシュを守った……


「もっと怖いことを言いますね、ヴィクシー様

あの日、あの子の腕は骨が見えるほどボロボロでした

だけど……すぐに腕の回復が始まったんです」


「……!?ど、どういうことですか!?」


「言葉通りですよ、『回復を始めた』のです

私は治癒魔術も使ってません、えぐれた腕の骨が、皮膚が、肉が全て戻ったんです『攻撃を喰らってない』かのようでした」


「……」


ヴィクシーはバケモノでも見るような目で唖然とした


「……思ったんです、このまま放置していて万が一、邪な考えをする輩に見つかったら?」


傷ついた体が勝手に修復される魔術──かはわからない

だがそれがもし、実験として使われたら?


「だから送ったんですよ、招待状」


「……ッ!?ハイッ!?」


今まででいちばん大きな声をヴィクシーは出す


「わわわ、渡したんですか!?アリシアが!?誰にも渡さないって言ってましたよね!?」


そう叫ぶやいなや、アリシアに金色の首輪をつけたワロウスが飛んでくる

アリシアは文書を読むと動く支度をする


「ちょ、ちょっと待ってください!なんで……」


「私を殺せる可能性があるかもしれなかったからだ」


それだけ言うとアリシアは去った、顔が真っ青なヴィクシーを残して……


──────────────────────


「はい!ヒビネとルシュ、キサラとリクは終了!

水分取って宿まで一回戻って!」


「はぁー疲れたね、はいヒビネ」


ルシュが響音に冷えてる水を渡す


「ありがとう、ルシュ……」


「ほらほらーリクちゃんも飲みなほらほらほらほらほらほら」


「やめろ……」


リクの頬にしつこく水を当て、やがてキサラから水を奪い取るとそのまま宿に向かう


「ていうか、ヒビネちゃんもルシュちゃんもよく私とリクに着いてきたねー、自分で言うのもなんだけど、私とリクって体力おばけだからさー」


「うーん、私もよくわかってないんだよね、なんでだろ」


「おそらく、無意識下で自分の筋肉の動きを調整出来ているんですよ」


会話を聞いていたヴィクシーがルシュの頭を撫でる


「リクさんとキサラさんは……おそらく無地蔵の体力があるので100の力で100を出してます」

「対してヒビネさんとルシュさんは、体力がない代わりにどこをどう動かせば、最小の力で100を出せるかが無意識にわかってるんだと思いますよ」


ヴィクシーはじっ……と響音を見つめる

瞬きもしないその目に響音は少し距離をとる


「あ、あの……なにか?」


色々と考えた末に


「ヒビネ……さん、楽しいですか?養成所……」


ヴィクシーの質問にルシュとキサラの目が丸くなる

ヒビネは特に考えず──


「……多分、たのしい、んだと思います」


「そうですか」


なら良かった──と、ヴィクシーは思う


まだもう少しだけ、見守っていこうと決意した

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