Act46 誠実の魔人 シェンド
魔人
魔獣 アノセにおける人類の敵 人を襲う どこから来るかは不明 海の果てから来ると伝えられている 赤い目が特徴
魔人 魔獣が何かしらの形で知恵を得た存在
20年程前に存在が確認されたと噂がある
魔人に対しての情報が少ないのは
対峙した際の生存率が絶望的に低いためである
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人間は得体の知れないものと出会うと恐怖すると
誰かが言っていた
だけど目の前に居るのは間違いなく自分と同じ人の形だ
それでもなお、手足が震え、額に冷たい汗をかくのは
対峙するものが人間では無い「何か」を思わせる
「…魔人」
キサラが小さく口にした瞬間、魔人と思われる者は
大きく地面を蹴り飛ばす
えぐれた土塊がキサラと響音に襲いかかる
「ッ!」
逆立ったキサラの髪の毛は勢いよく飛んでくる土塊を撃ち落とす、防ぎきれない細かい塊が頬をかすめる
当の相手は何事も無かったように語りかける
「俺は魔人という名前ではない」
「我が名はシェンド 王の魂より『誠実』を与えられし獣」
「お前たちの名前はなんという?」
目の前から発せられる威圧に声が出ない
集中はしているがキサラの心臓は今にも壊れそうだ
「響音」
後ろからいつも通りの声が聞こえた
いつも会話している声だ
「キサラ、僕この人と話してるから皆起こしてきて」
響音は普通に歩きだした
大丈夫?怖くない?殺されない?しなないよね?
「大丈夫だよ」
心でも見透かされたように響音が答える
キサラは落ち着きを取り戻したあと
他の3人が眠る宿まで走る
「おい……」
シェンドは手先を走るキサラに向ける
が──それよりも早く響音がその手を掴む
「人と話す時にはよそ見しちゃダメだよ」
響音が手首を掴み、シェンドの顔が少し歪む
そのうち徐々に自分の魔力を奪われてるのを感じる
(なんだ……?魔力を吸われている……?)
シェンドは強く手を振りほどく
顔を近づけるが響音は動じない
「ヒビネッ!」
後ろからネカリ達の声が聞こえる
シェンドは大きく跳躍して距離をとる
「うわ……不快な体してるね、この人」
顔を歪めたネカリが刀で指す
全員がいつでも戦闘をとれる状態になっていた
「5人か……」
一呼吸ついたシェンドは両手を大きく開き構える
「多人数という誠実さには欠けるが問題ないッ!」
地面が抉れる踏み込みのあと、ネカリの刀身に
シェンドの拳が刺さる
1度鍔迫り合いをしたのち、体重を落とし後ろへ下がる
空いた隙にキサラの拳がシェンドの鳩尾を狙う
シェンドが膝を上げ受け流したあと横から光が映る
「【雷魔術】《バリダ》!」
エクレアの魔術がシェンドの顔面に飛び掛る
大きく頭を後ろに──「今です!ヒビネさん!」
上を見上げた先に響音の足が映る
(回避が──)
ズドン、と大きくシェンドの体が吹っ飛ぶ
が──
「……やるな」
大きなダメージを与えたように見えない──!
「少しだけ使うか……」
シェンドが大きく呼吸をすると
顔面に白い紋様が浮び上がる
「……!明らかに魔力の流れが変わった!気をつけろ!」
まだ、夜は続く──