Act45 襲来
夏休みだ!!!!!!!
8/31まで毎日最新話!!!!!!
ずるい日あり!!!!!!!!!!
「本当に助かりました、こちら受け取ってください」
王城から村までの護衛を終えた響音たちは
依頼人から報酬を受け取って帰路につく所だった
ただ、1番初めに苦言を呈したのはエクレアだった
「えっ……今から帰るんじゃないわよね?」
発言を聞いたレアも疲れた声で返す
「ちょっと辛いけど帰らないと…明日は訓練の日だし」
その話を聞いてた依頼主の老夫婦が提案をする
「もし宜しければ1泊して行ってはいかがですか」
「お礼の1部だと思ってください、お食事も用意します」
「賛成!もう疲れちゃったよ俺」
ネカリとエクレアは揃って老夫婦の後を追う
「じゃ、一応養成所の方にワロウス送っとくよ」
「レアとヒビネは先行っててね」
こうして5人はキサセイ村で一夜を過ごすことになった
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パタタ……
「あれ?これウチで飼ってるワロウスじゃない?」
養成所のリビングの小窓にキサラが放したワロウスが止まった、ルシュが足首に結んである文をとる
「なになに……『一晩キサセイ村に泊まる事になったから宜しく〜ご飯作っちゃってたら朝食べるからとっといてほしー』だって」
「この時間じゃ確かに夜森を通ることになるから、村がいい場所で良かったな」
アラン達が会話してると、リクがその場を立ちどこかへ行く
「あら?リク様どちらへ?」
レセナが声をかけるがリクは何も言わずに姿を消す
「……思えば、リクの事を何も知らないな」
本を読んでいたアシュレイがふと呟く
「そうですね……この間のエルーシャ様が目覚めた時に話したくらいしか……」
外にでたリクは一人で何かを話していた
「……ああ、一応頼む」
「キセサイ村……確か『ナワバリ』だったはずだ」
この会話が何かは、また近い未来に……
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太陽は深く沈み、世界を見下ろす月が登る
闇に染る村に、獣避けの火がぽつぽつと焚かれていた
眠れない響音は、村の端にある井戸に腰掛けていた
少しずつ暖かくなってきたため半袖でも外に出れる
ただ、響音の体には過去の傷跡が多いため、皆を困らせないように基本的には長袖を着ている
響音がこの世界に来てから半年──
日本では6月14日だった
かすかに聞こえる井戸の水音を聴きながら
響音はわずかだが昔の記憶を修復していた
僕は死んだ……そうだ、『12月23日』
あの日、父親に殺された 冬休みに入る前だ
……どうして殺された?
確かに毎日、痛みを伴ってはいたが
殺すこと自体は無かったはずだ
つまりその日は、『父親が僕を殺す理由があった』
なんだろう、思い出せない
もう少しで、もう少し……
「ヒビネちゃん?」
「ッ……!?」
正面から声が聞こえる
少し低めだが、どこか幼さが残る声
キサラだ
「あ……ごめん、考え事?」
「あ、いやごめん、なんでもない」
そう?と言いながらキサラが地べたに座る
自分よりも小さいからか、さらに小さく見える
その後、少しだけ会話したあとキサラが不思議そうに
「……よく笑うようになったよね、ヒビネちゃん」
「……え」
「前はルシュとしか居なかったし、今にも死にそうな顔だったのに」
「私が毎回……飛びついてた甲斐があったものよ」
フフンとドヤるキサラを見ながら響音も返す
「キサラも……今みたいな喋り方の方がいいよ」
え、という顔でキサラは驚く
「猫の王様来た時、つらそうだった」
「でもやっぱり、今みたいな話し方の方が」
……
「キサラみたいで好きだよ」
「……」
しばらくキサラが黙って頭を搔く
「あー、これは……」
「ヒビネちゃんは将来色んな人から刺されそうね」
「えっ…」
キサラがケラケラと笑ってると
突如立ち上がって森の奥を見つめる
髪の毛は張り詰めたように蠢き
前傾姿勢で戦闘態勢に入っていた
「下がっててね、ヒビネ」
ザリ、ザリと足音がする
足音の主はやがて月の光と共に現れる
「誰?」
現れたのは人影
黒と青が混ざったような服を着た男だ
見るからにわかる、自分より高い背丈
そして体の底から感じる、異常なまでの「嫌悪感」
「誰……か」
1歩1歩近づく度に圧力がかかる
無意識に後退している事を自分でも気づかない
「お前たちが殺した……魔獣の仲間とでも言おうか」
おそらく閉じていたであろう相手の目が開く
赤色の目
違和感の正体が今わかった
──噂だけど知識を得た魔獣はね……
「……魔人」