Act 41エルーシャの目覚め
Xの方でもお知らせしますが
7月より「月に6回投稿」
8月は夏休みスペシャルとして「毎日投稿」します!
お楽しみに!!!
最後に見た光景は
食い尽くされた同胞達の死体だった
まるでゴミのように乱雑してある仲間たちの死体をひとつひとつ確認する
腕がない、頭がない、目が、のどが、あしが、あしが
「いたぞ!」
背後から声が聞こえる
その声は恐ろしい程の殺気と共に私に向けられた
「死ぬ」と判断した
駆け出した
逃げた
「逃げたぞ!追え!」
「捕まえろ!必ず殺せ!」
「生きて返すな!骨も残すな!」
あらゆる方向から私を消そうとする者たちが襲いかかる
どこで間違えたのか、私達が何をしたのか
祖なるエルドラシル様
どうか、私を……
──────────────────────
「エルドラシル様ッ!!!!!!!!」
「ひああっ!」
養成所の客室で猫の王、エルーシャが目を覚ます
身体は震え、額には冷たい雫がゆっくり垂れる
様子を見に来ていたエクレアが飛び跳ね、床に突き刺さっていた
「ちょっと!急に大きな声……じゃなくて、起きたのね!?そのまま待って……お待ちなさい!」
廊下に急ぎ出ていくエクレア
しかしエルーシャの耳には届いてないのか、すぐに立ち上がってしまう
「……つっ」
エルーシャはその場に大きく倒れ込む
体に巻かれた包帯の数が自身の体の今を表していた
見えていなくても足の裏は特に酷い傷なのが想像できた
ただ、それでも立ち上がろうとする
「大丈夫か」
頭上から男性の声が聞こえる
エルーシャの冷や汗が加速する
敵?味方か?そもそもここはどこだ
エルドラシルから抜け出せたのか?
「起こすぞ」
床に力なく倒れる傷だらけの猫の王をひょいと持ち上げる
そのままベットに座らされ、エルーシャは恐る恐る目を開ける
そこには後ろ姿で外に出ようとする男がいた
「……!ま、まってっ…っっイッ」
言葉を何とか発するがそれすらもズキンと来る
手を伸ばした反動でまた前に倒れ込む
思っていたよりも体は限界を迎えていたようだ
「寝てろ」
同じように持ち上げられ、今度は横にさせられる
赤い髪で目元までギリギリ隠れる顔がうつった
「……貴殿の名前は……?」
「リク」
養成所合格者の中でも異質な存在 リク・レダ
息を整えたエルーシャは自分が出せる声で話しかける
「……私をここに連れてきたのは貴方ですか?」
「違う」
「……ここはどこですか?」
「養成所だ」
「……」
どうしよう……もう少し話せる人は……
そう失礼な事を考えてしまったエルーシャは
目を見開いて最後の質問をした
「そうだ!ここは……ここは、エルドラシルですか?」
「大陸の話ならここはエルドラシルじゃない」
「アヴェルニアだ」
その単語を聞いた時、エルーシャの暗かった顔が少し明るくなる
「アヴェルニア……!」
「北のタイタンでも、南のヴァルテンでもない……東の国、アヴェルニア……なんですね!?」
「そうだ」
エルーシャの目から涙がこぼれる
「はは……やった……」
「エルドラシル様……」
廊下の方からバタバタと音が聞こえる
恐らく養成所全員がいるであろう音だった
一番最初に部屋に入ったのは──
「エルーシャ様ッッッ!!!!!!!!」
同じく獣人種のキサラだった
「その声、キサ──」
言葉を言い終わる前にキサラがエルーシャに飛びつき
締め上げ……抱きつく
「ああ、エル、本当に無事で……」ギリギリギリ
「──」
「ちょっと!その人、泡吹いてるわよ!」