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傷まみれの旅人  作者: へびうろこ
第二章 「養成所邂逅編」
40/81

Act38 ネコ探し

時は少し進み──冷たさは薄れ、風が心地よい日常に

響音がいた世界では5月の中旬頃であった


響音は起きるのが早い、現世では父親よりも先に起きて食事を作らなければいけなかったからだ

その影響もあり、響音は眠気覚ましにコーヒーを飲む

それはもちろんこの世界でも同じであった


「ヒビネちゃん、早いね」


「あ……おはよう、キサラさん…………ちゃんと服着てね」


響音の次に起きるのは獣人種のキサラ

体温が非常に高いため度々上着を脱いでいる


「ごめんごめん、私もコーヒー貰っていい?」


「いいよ、ミルク3つだよね」


「ありがとー」


響音から渡された漆黒の液体をくいーと飲み干す


「今日から掲示板依頼が始まるねー、楽しみだねー」


掲示板依頼──


アヴェルニアに住んでいる住人なら誰でも利用出来る

現世だと「単発バイト」のようなもの


響音達は養成所の候補生なので

通常より少し上の階級の依頼を受注できる

それが解放されるのが今日なのだ


───────────────────────


「猫探し……?」


「そ!ネコ探し!」


響音とルシュは城下町を出て

少し歩いた場所にある小さな森にいた


養成所における初仕事は王下直属部隊のメンバーが

選定した依頼を受けるものだった


響音は初めて、尚且つアノセの色々を知るため

「出来るだけ依頼に同行して欲しい」とアリシアより

指定があった


今回は初依頼もあり、緊急事態が起きた場合

判断できる人材という意味で


響音 ルシュ アシュレイ レセナの貴族二人という

豪華なパーティーになっていた


「ヒビネ、ネコは知っているか?」


アシュレイが響音に話しかける

この1ヶ月ほどで響音も前のような怯える事は少なくなった


「猫……知ってるよ」


「まぁまぁ、ネコはご存知でしたのね」


人類が何を使っても勝てない存在だと

響音は現世でミノル先生に教わっていた

「猫が幸せだったら問題ない!」が口癖だった


「なら話は早いな、今回はある家庭から「ネコが脱走したから見つけて欲しい」という依頼だ」


「追跡魔法は付けてるらしいので、あとは根気よく捕まえるだけですね〜」


響音はこの世界に来てから猫を見てないので

少しだけ口元は緩んでいた、現世でも日常の中で少しでも痛みを和らげる癒しになっていたからだ


しばらく森の中を歩くとルシュが足を止めて

手を挙げた後にゆっくりと拳を握った

「止まって、静かに」の合図だ


「前方に反応、いるよ」


ルシュが小声で伝えると

ポケットから2滴が何とか入りそうな小瓶を4本取り出す


「これを手首に、一定時間だけどネコの臭いと混ざれる」


「ネコは警戒心が強い、足も早い、ギリギリまで近づいてレセナ様の水とアシュレイ様の氷ですぐ捕まえるよ」


そう言うと手で輪っかを作り「わかった?」の合図

続けて2人も同じ動作で同意を得て、そのまま進んだ


ここでふと疑問に思う響音

猫に対してそこまでするのか?


確かに逃げられたら困るけど凍りつかせるまでしなくてもいいんじゃないか──と


「ねぇ……ル──」


響音はその時、何かを感じた

次の瞬間、一同の前に大きな影が出現した


「ニギャア゛ア゛ア゛ア゛ア゛オ"オ"オ"オ"!!!」


その生物は金切り声をあげながら響音に襲いかかる

アシュレイは首根っこを掴み響音を後ろに引かせる


「ニギャ!!?ギャギャギャ……」


目の前の生物が少しその場でふらつくが

何事も内容にまた動き始める

その姿は、巨大な爪と目が3つある化け物だった


「ヒビネ、下がっててくれ」


アシュレイは腰に提げた双剣を取りだし戦闘態勢に


ルシュとレセナもそれに合わせて構える


「後方は任せてください、お2人は抑制をお願いします」


「「了解!」」


響音は唖然としていた

響音が知っている「猫」とはあまりにも乖離したものであったから


「僕が知ってる……猫じゃ……ない」


こうして4人による「ネコ(アノセでは中々の化け物)の捕獲」が始まったのであった

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