Act37 糸口
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来週からもよろしくお願いします!
魔術──
体の中に流れている魔力を魔力痕のある物質である
「魔具」へと流す
魔具へと流れた魔力を自身の「詠唱」と共に発動する
これが「魔術」
しかしこの一連の行動には色々と無駄があるとは思わないだろうか?
魔具に流すんじゃなくて直接発動すればいいのでは?
否、身体には魔力が通る線はあるが発動させるための
「魔力痕」が無ければ意味は無い
詠唱してる暇があるなら省略すれば?
否、言葉にやどる魂を侮るな、下手に発動すれば
暴発、威力の超低下が起こって危険となる
つまり、人間の体に魔力痕を入れる事が出来れば
魔力痕を入れた場所が──
粉々になり、肉が熔け、目が裏返り、内蔵が口から飛び出す様子をを見たいなら行うといいだろう
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「殺意に反応する……魔術?」
アランは疑問をベニアに問いかける
「俺が聞いた話だとまずヒビちゃんは過去に3回この謎の魔術で強敵を討伐、撃退してるのを聞いたんだけど、合ってるか?」
この世界に来た時に1回目
城下町での1回目
最後に試験2日目のオルトに対して3回目
「この3つに共通してるのはまず「直前に致死量の攻撃を受けていること」もしくは「近くにルシュちゃんが居ること」なんだけど」
その言葉にルシュは思わず顔が赤くなる
近くにいるキサラが満面の笑みで見つめていた
「だけどそれ、どちらも「攻撃」として発動してるんだよね、さっき俺が食らったのは攻撃というか……」
「【弱体化】とでも言おうか?」
この言葉を皮切りにアシュレイとレセナが顔を見合わせる
この2人は以前、ベニアと同じようなことを体験している
養成所試験1日目の響音がオルトに絡まれた時
「ベニア様、以前私とレセナは同じような現象をこの身で経験しています」
「その時は確かに……オルト様はヒビネさんの【肩を思い切り掴んでおりました】わね」
「あの時は頭を直接揺らされた感覚だったな」
ベニアは少しだけ考えるとまた響音に向かう
「ヒビネ、今のは少しだけ訂正しよう」
「殺意ではなく【敵意】の方が正しいかもしれない」
他人の敵意によって発動する魔術
しかし、そのような魔術はアノセの歴史上を見ても
観測したことの無い現象だった
「……魔力探知と同じような現象、でしょうか?」
「いや、魔力探知にも魔力は使う、しかしヒビネには魔力そのものが存在してないから不可能のはずだ」
「しかし実際問題、魔術は発動してますよね?
間違いなく今の一瞬、魔力の波を私は感知しました」
獣人種であるキサラが言い切ると
響音がその場に座り込む
ルシュが支えると響音は一言
「……おなか……すいたな……」
「もう、ヒビネったらこんな時まで」
食い意地だけは残っていたのであった