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傷まみれの旅人  作者: へびうろこ
第二章 「養成所邂逅編」
35/81

Act33 響音の新しい先生

新しい先生

城下町でアリシアと出会った時から疑われていた


黒海堂響音という異端な存在


アヴェルニア王国、辺境の地以外の人間の顔を全て把握しているアリシアからすれば


目的を持つ可能性のある人間を放っておく訳には行かない


──ましてや出会った場所に見知った人がいるなら


今まで人との交友関係が少ない妹が


見知らぬ男といるのは……


万が一邪な感情を持っているなら


(殺すしかない…………!)


───────────────────────


目の前に座る(アリシア)は人を葬る覚悟の目をしていた


下手な回答をすればそのまま首が刎ねそうな……


「ルシュ……」


響音は隣に座るルシュに耳打ちする


「……ちゃんと……言おう……」


そう伝えると響音はアリシアの目をしっかりと見て──


「アリシア様……僕は……」

「……違う世界から来た……人なんです……」


響音とルシュはこれまであったことを話した


3ヶ月前ほどにこの世界に来たこと……


響音が実の父親から虐待を受け続けていたこと……


魔獣やオルトを退けた力は何もわかってないこと……


一つも包み隠さず答えた


全てを話し終えたあと少し考え込んだアリシアは口を開く


「……今の言葉に嘘は無いと思うか?」


アリシアは目線を明らかに後ろに向けて話していた


「緊張の音はあったけど、嘘は無いと思うよ」


その場に居ないはずの「4人目」の声が聞こえた

ルシュと響音が振り返ると


そこに立っていたのは……なんとも胡散臭そうな目隠れの男だった


「ビックリした?」


男はアリシアの隣まで移動すると

響音に向かって挨拶をする


「初めまして俺は……」


そこまで言うと男は少し止まり


「……ベニア……ベニアって呼んでくれ」


「……アリシア様、この方は?」


ルシュが疑問を投げかける、それもそうだ


今、響音がした話は出来れば聞かれたくない内容だ


「……その前に話さないと行けないことがある」

「実は、響音君が外の世界から来たのは……知っていた」


今度こそ2人は驚いた声を出す


「それはどうして……」


「今は話せない」


強めの言葉で否定された2人は萎縮する


「……だけど、いつか必ず話そう」


直ぐにいつもの顔に戻っていた


「……そしてもう1つ、君自身に魔力が無いこともわかった」


「魔力……?」


聞きなれない言葉に疑問を抱く響音

これにベニアが割って回答する


「アノセに産まれた人間なら誰しもが持つ魔力」

「北のタイタン、西のエルドラシル、南のヴァルテン

そして東のアヴァルニア」


「どんな金持ちも貧乏人も男でも女でも獣人でも」


ベニアはそう言いながら左手の上に土の塊を発生させる


「必ず体に流れている……それが魔力」


土の塊が人の形になってテーブルの上を歩く

響音とルシュの目の前までたどり着くとそのまま崩れる


「実は、君が寝ていた3日目の試験の中に魔力量の確認があったんだ」


響音はそうなの?とルシュの方をむく

ルシュはコクコクと頷く


「……君が寝ている間、私とベニアの2人で君の魔力量確認させてもらった」

「結果、君は魔力が無い、少ないではなく、そもそも魔力が流れているはずの繊維が存在しない」


「なのに、だ」


アリシアは響音の近くに行くと

響音の右腕に触れる


「オルトを殴り飛ばした時、熊型魔獣を粉砕した時」

「君のこの細腕では到底なし得ない事だと考えられる」


それに続いてベニアが会話を始める


「つまりねヒビネ、君は魔力以外の「何か」が動力になってるんじゃないかと思うんだ」


「それを探るために……今日から君は俺の生徒になってもらおうと思う」


「……ん?」


響音のかわいた言葉に説明を付け足す


「本題はここからだヒビネ君、君は今日からベニアと2人で一年を過ごして欲しい」


「合格者を伝えた日を覚えてるか?」

「私はこの時「仮の合格者」と伝えたはずだ」


10人目の仮合格者、それが黒海堂響音だった

「仮」の意味が不明だったが、今回収される


「単刀直入に言おう、1年以内にその力を自分のものにできなかったら──」


「君はこの養成所から抜けて貰う必要がある」


「そんな……!」


ルシュが身を乗り出してアリシアに詰寄る


「だからこそ、ベニアの存在だ」

「経歴は詳しく話せないが、魔術師としての素質は私以上にある」


「私としても、ヒビネ君の力が完全に物になれば、我々としても、この国の力になれると思っている」


「俺としても未知の力を近くで見れるのはメリットでね〜」

「どうだろう?俺なら君の役に立てると思うんだけど」


ベニアは右手を響音の前に差し出す

響音は少し黙ったあと、ベニアの手を掴む


「……よろしく、お願いします」


ベニアの口元が笑う


響音の長いようで短い1年が始まろうとしていた


とあるゲームをやりすぎて……ギリギリでした!

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