Act32 地球の先生
腕を掴まれていた
歩くスピードが合う事は無く、半ば強制的に歩かされてる
中学生になった響音は父親と共に学校へと向かっていた
「だりいなぁ、てめぇが学校行かねぇからクソみたいな説教喰らったじゃねぇか」
そう言いながら父親は響音の腕を強く掴む
やせ細った響音の体は今にも折れそうなくらい跡が付く
どんなに苦しくても言葉には出さない
「痛い」とでも言えばさらに痛みが増えるから
春、祝福を奏でるはずの桜の色は響音には霞んで見えた
学校までのこの道でどれだけ自分の体はまた削れたのか
もう問題を起こしたくない
小学校は「問題を起こして」死ぬ1歩手前までにされた事がある
いくら痛みに慣れてきたとはいえ
死んでしまっては元も子もない
──そうこうしているうちに中学へたどり着いた
前住んでいた場所とは違う区域の中学だ
今日からこの中学内にある「支援教室」に入る
……玄関の前に1人の女性が立っている
女性はこちらに気づくと近寄ってくる
父親となにか話すと、そのまま父親は去り
女性とふたりになった
……女性は腰を下げる、下に俯く黒色の目を覗き込む
「大丈夫だよ」
言葉の意味がうまく理解出来なかった
ただその一言に何か救われた気がして
気がつけば響音は涙を流していた
初対面の人の前で、ここまで泣くのは始めてだ
女性は響音の手を握る
「私 赤塚ミノルっていいます」
「3年間、よろしくね」
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「……ネ……ヒビネ?」
「……え?」
少し昔のことを思い出していたらしい
今この空間は、寮の1階にある唯一、鍵の付いた部屋
扉には「相談室」……あらため雑に「怒られる部屋!!!」
と書いてあった
誰が書いたかは何となくわかるが……
この部屋にルシュと響音は呼ばれた
呼んだ人物は──アリシア
「早朝に呼び出してしまいすまない、本当は昨日の夜に伝えたかったんだが、緊急の予定が入ってしまってな」
響音達は先日入寮し、昼間に寮内を散策したあと
夜は王下直属部隊(1部)のメンバーと入寮祝いの宴をした
本来【二蓮】以外の部隊が来る予定だったが──
急遽【一凪】【二蓮】【五幻】が来れずにいた
「この後は養成所内の案内もある……手短に終わらせよう」
「クロード・ヒビネ……君は、どの世界からやってきた?」