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傷まみれの旅人  作者: へびうろこ
第一章 「王立試験編」
26/81

Act25 王立試験 最後の夜

約2週間ぶりの投稿となり申し訳ございません!

3/5~3/11の間は毎日投稿投稿をしますので

よろしくお願いします!!!!!!!

響音は夜に目を覚ました


気絶した後目を覚ましたという場面は何度目だろうか

枕元にある棚に淡く光が灯ったランプが置いてある


体質上二度寝ができない響音は廊下に出て外の空気を

浴びに養成所裏にある小さな休憩場所まで出歩く


まだ冷え込む時期もあり歩く度に白い息が揺蕩う

休憩場所には気持ち程度の灯りが屋根の隅に付いてる


一番奥にあるベンチに座ると響音はただ静かに目を瞑る

試験者たちが使ってる部屋は全体に暖かくなる魔道具が

使われているが


響音はまだそれに慣れておらず冷えた場所で微睡む

ルシュの家にいた時も響音は夜中起きて外で寝る事が度々あった


響音がこの世界に来てから3ヶ月が経っていた

日本でいうと今日は3/26──


ルシュと出会った日から長い時間が経つ

それでもなお響音の心臓に深く抉られた傷が癒える事はまだなかった

10年を超える傷はそう簡単に修復できるものではない


10年


……


響音は虚ろな状態で物事を考えていた


──そもそも僕はいつから暴力を受けていたんだっけ……?


いつ死んだんだっけ、なんで死んだんだっけ


そもそも、なんで死ぬ事になったんだ


……12月……確か冬の長い休みに入る前だ


……冬休みに……入る前の日に……


死んだ?


「ヒビネさん?」


「はッ!!?!?!?!?」


真後ろから高い声が聞こえる

半分夢の中にいた響音は思わず大声を上げてしまう


「ご、ごめんなさいそんなに驚くと思わなくて……」


「……あ、きみは……レア……?」


「あっ、覚えててくれたんですね」


話しかけてきたのは試験の2日目で一緒になった

レア・エバルタだった


「お隣いいですか?」


「あ、うん」


自然に横に座ったけど、この世界の女の子はルシュといい距離が近いな


「最終日、ヒビネさんも残ってたんですね」


「うん」


「普通に過ごしてくれって王下直属部隊の方に言われたんですけど、結局なんだったんですかね?」


「うん」


「やった事も食事して、その場にいる人と話して……」


「うん」


「……あの、ヒビネさん?」


「うん」


「あの……」


「うん」


「……もしかして私の事、嫌いだったりしますか……?」


「うん……………………ん?」


今なにか、もの凄いことを言われて物凄い発言をしてしまわなかっただろうか?


恐る恐るレアの顔を覗き込むとレアは今にも泣きそう

というか泣いていた


大きな瞳から流れる大きな涙が響音の心をさらに抉る


「まっ……て、ごめんなさ……、ごめ……ごめん!」


響音は基本的に会話はしない

自分から会話を広げないので相槌しかしない

ルシュはそれをわかってるので気にしてないが

事情を知らないレアからしたら適当に受け流されているとしか思われないのである


しかしその思い虚しくレアはポツポツ話し始める


「私……っ、見ての通り根暗で……」

「そのせいで私が住んでた場所でも相手にされなくて……」

「そんな自分が、嫌になってここに来て……」


レアは自分がこの試験に来た理由を話し始めた

響音には理解出来なかったが、最後まで聞く耳を持つ


「2日目の試験で一緒になった時……理由は違うけど」

「志す思いは同じだから……」

「《友達》になれたかな……って勝手に思って……」


友達?


───────────────────────


じゃあ、響音ちゃん

最初の友達は、先生にしてくれる──?


友達はね 気づいたらなってるものなんだけど──


───────────────────────


「……レアは、友達に、なってくれるの……?」


響音も同じように、涙を流した


「レアの事……嫌いなんて……思ったことない」

「ごめん……なさい」


響音とレアはその後ひとしきり泣いた

気づいた頃にはお互い目を真っ赤にしていた

「また明日」と何気ない言葉を交わした


──その光景を見ていた、2人の影に

響音とレアは、最後まで気づいていなかった


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