Act22 王立試験 最終日
22話です!
王立試験 特例の4日目を受ける響音とルシュ
どうやら2人は色々な噂があるようで……?
王立試験 4日目 朝
響音とルシュは朝食を食べているだけだった
朝起きて、普通に食堂まで歩いて、何も特別な事はせず
それだというのに──
2人は今、大勢に囲まれていた
「ねぇ名前なんていうの?」
「アリシア様の妹って本当!?」
「オルト様を吹き飛ばしたアレってなんの魔術?」
「2人ずっと救急室いたよね?」
「え!?もしかして……お付き合いしてたり!?」
響音は耐えきれずパーカーを深く被る
ルシュは顔を赤くしながら質問に返していく
正直、まともに食事を摂る事ができない状態だ
「ルシュ……」
「ど、どうしようね……」
その時、奥から大きな声と手拍子が響く
「皆!話すのは結構だけど、食事中は静かにな!」
その号令と共に「またね」と人が離れていく
奥に出てきたのは6人の男女
この6人は恐らく事前に説明を受けた合格者の6人だ
その中には見知った顔がいくつかある
アシュレイとレセナ……あの時の2人だ
2人は響音に気づくとこちらに手を振りどこかへ行く
代わりに違う2人が近づいてくる
「余計なことしたか?困ってそうだったからさ」
響音と同じ黒髪の少年が声をかけた
響音と違って髪の毛は切りそろえられている
「初めまして、アラン・ワダチだ」
「よろしくな」
アランと名乗る少年は笑顔で手を差し出す
アランは響音より目線を少し低く、少し離れて話す
「……大丈夫か?アシュレイとレセナから「ヒビネは初め離れた距離で話した方がいい」って言われてな……」
恐らくこの間の出来事を伝えられており
それをくみ取ってここまでしてくれていた
響音はこの時 「人に気を使われる」という意味を知る
「いや……だいじょうぶ……」
響音は恐る恐る手を差し出して握手する
アランはまた笑顔になって握り返す
「なんて呼ぶか……やっぱヒビネの方がいいか?」
「俺の事は好きに呼んでくれていい」
「じゃあ……あ、アラン」
呼び方を響音が伝えると
アランの顔はまたパッと明るくなる
「名前で呼んでくれるのか!」
「じゃあ俺もクロードの方がいいか?」
「………………………………………………………………え?」
違和感を感じていたのは
王立試験の2日目、レア・エバルタと初めて会話した時
何度も確認するが響音は人見知りという域を超えている
幼少期から父親からの暴力、学校での生徒を泣かしてしまった事、中学に至っては週に1度行けたら良い方の家庭環境
……そしてその場にいた3人
先生と同級生2人、それが響音の知る人間関係の大きさ
先生に関しては名前で呼んでいたが、同級生2人は最後まで姓名で読んでいた
皆様のご存知の通り某島国は──
姓名 名前と順番に名乗るのが一般的なため
響音からするとこの世界、例えば「ルシュ・ピァーニ」
この場合響音からしたら「ルシュ」が姓名
反対にルシュからしたら「響音」が姓名なので──
「わっ……私……今までずっと……男の子を名前で……」
こうなる
ルシュの顔は目と鼻が判別できなくらい赤い
それもそのはず、ルシュにとって響音は
初めて喋る同年代の男の子だからだ
「……………………ピァーニさん」
「え……」
「ルシュ!」
ピァーニと呼んだ時の顔を響音はずっと忘れないだろう