Act19 王立試験 2日目 終了
19話です
響音とレア、森の中で起きた出来事を話したあと
オルトの反応は良い物ではなく……
「……これが私たちの森の中の出来事です」
響音とレア(主にレアだけだが)は森での出来事を
オルトに話す
「ヒビネ、そんな事があったんだね?偉いね!」
隣に来ていたルシュも満面の笑みで聞いていた
……まるで上手に絵を描いた子供を褒めるようだ
それを聞いたオルト
彼の顔は本当に何もわからないようだ
「……は?」
「今の話の中になんの意味があんだよ?」
オルトの顔は冷静だが首元には青筋が浮かんでいる
抑えているつもりなのだろうがオルトの周囲は
風が絶え間なく流れている
響音の目から見ても「殺気」が溢れ出ていた
「……王下直属部隊の三大理念、言えるか?」
「あ?なんだよそれ」
「わかるわけないよな」
「お前……筆記試験何も書いてなかったしな」
その場にいた試験者達がザワつく
「…………」
「1 己の正義を信じよ
2 己の力を己だけに使うな
3 己の行動が我らの行動になる」
「これの2項目目、これは「他人を助けろ」って意味だ」
デルガリヒは指を2本ヒラヒラしながら
説明をする、これは確かに試験問題にもあった
「お前は相応しくなかった」
「お前の近くにも居たはずだ、助けを呼んでいた声が」
「……」
オルトは……思い当たる節のある顔をしていた
確かに──声は聞こえた気がしていた
だが目先の欲望だけに囚われ、全てを無視して……
「……お前に置いてかれたもう1人、そいつが助けてなかったらどうなってたのかな」
「……もう一度言うぞ、オルト・U・リセイス」
デルガリヒの次に出る言葉はその場の誰もがわかった
「──お前は脱落だ」
「…………………………………………ハッ」
「【絶望風襲】!!!!」
オルトが魔術を詠唱する
その瞬間とてつもない風と周囲の瓦礫や木々、砂と塵が
デルガリヒを一直線に襲う
「【大盾】」
デルガリヒは短い詠唱で龍の様な風を止める
──しかし、例え粗暴は悪くも皇族
デルガリヒの大盾は一瞬留めたものの砕け散る
「ふむ……この威力、特級魔術か……」
デルガリヒの体に傷が多く付く
血が少しずつ溢れ初める
「……やむを得ないか」
デルガリヒは腰に提げていた銃を取り出しオルトに向ける
しかしオルトはこれに何も億さずにいた
「ハッ、いいのかよ、撃てるのか?」
デルガリヒは軽く発砲する
しかしそれは全てオルトの周囲に吹く風によって
地面に押し流され、威力を完全に殺される
「おいおい、本当に撃ちがった!」
オルトは手を叩きながら笑う
完全に人を馬鹿にしていた
「お前がなんで王下直属部隊に選ばれたかは知らねぇ……、けどな皇族でもない魔力の質の悪い一般人が俺に勝とうなんざ100年早ェんだよ!」
オルトはそう言うと歩き出し、地面に倒れる響音に近づく
「おい、デルガリヒとか言ったな」
オルトは響音を無理やり起こす
「コイツを脱落して、代わりに俺を合格させろ」
「コイツは肩ァ揺らされた位で泣きわめく雑魚だ!」
オルトはあの夜のように響音の肩を乱暴に掴む
「う……っ」
「ぐ……」
その瞬間、オルトはまた脳震盪のような歪みを覚える
が、今回は戦闘態勢の影響で持ちこたえる
「……よく分かんねぇ気持ち悪い魔術だな」
オルトは響音の首を掴むとそのまま地面に叩きつける
「ガ……っ!」
「……!ヒビネ!」
「ヒビネ……君!」
「貴様!その子は関係ないだろう!」
響音が苦痛の声を上げ
ルシュとレア、デルガリヒがそれぞれ反応する
「あるさァ!理屈はわからねぇが俺は昨日コイツに恥をかかされてな!!」
オルトの力がますますあがり、風の勢いも強くなり響音の体は切り刻まれる
「オラどうすんだよ王下直属部隊様ァ!コイツこのままだと死んじまうぞォ!?」
オルトが全身全霊の力でもう一度響音を叩きつける
響音は糸が切れたように目が虚ろになる
「……!【反消──」
デルガリヒが詠唱を始める……その時
響音がゆらりと立ち上がり、オルトと視線を合わせる
「……あ?お前なんで立てて──」
言葉を最後までいい切る前に
響音は、オルトの顔面に拳を叩きつけた
直撃した瞬間紫色の光が炸裂する
オルトは養成所の壁に叩きつけられ、崩れ落ち
そのまま動かなくなった
「ヒビネッ!」
風が収まりいち早く動き出したルシュ
倒れる寸前だった響音を、それよりも先に動いていた
デルガリヒが受けとめた
口から目から血を垂れたがし、気絶する響音
──しかし治り始める傷
デルガリヒは神秘のような光景を見ていた
「アリシア……お前は一体何を見つけて来たんだ……?」
空には笑っているような月が昇っていた
王立試験 2日目 終了
残り人数 32名……