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傷まみれの旅人  作者: へびうろこ
第一章 「王立試験編」
19/81

Act18 王立試験 2日目 試験終了前

18話です

怒りくるったオルトに語る響音とレアの行動とは……?

時はコインをオルトに奪われた場面に戻る


レアが響音の肩を揺らしてる際に「音が聞こえる」と

ありえない方角に走っていった


「……?レ、レア……」


小柄な体が木々の間を抜ける

それを追い続けると耳元……微かに子供の声が聞こえた


「……?……!」


距離を縮める度に子供の声は鮮明になる

荒い息使いの少年がこちらに向かって走っている

その後ろには……赤い目をした獣


狼型の魔獣──3匹を視認できた


「助けて!」


自分より遥かに小さい少年がボロボロになりながら

裸足で響音とレアの間に入る


「【乱風ランウィド】!」


レアが小さな玉を魔獣の前に投げる

レアの詠唱と共に玉は荒れた風になり魔獣を吹き飛ばす


「おふたりともこちらに!」


響音は少年を抱えながら走る

レアが示す先には川

響音の背丈3倍の幅はある川だ


「緊急ですので……我慢をお願いします……!」


そう伝えると先程の小さな玉を持ちながら

響音の背中を抑える


「あれ……それってさっき風が……」


「なるべく抑えて……【風魔術ウィド】!」


背中から大きな風が起こり大きく宙をまった

急な展開に体が追いつかない響音は背中から落ちる

続けてレアも反対側から飛び上がり合流する


「すごい……」


「け、怪我無かった……?」


「大丈夫、これ、くらいなら、なれてる」


「慣れ……?」


川の方から獣の声が聞こえる

先程の魔獣が川の流れに逆らって追いかけてくる


「今のうちに……!逃げましょう」


響音とレア……そしてボロボロの少年を連れて

森の中、養成所を目指して走る

──途中、身を隠せそうな洞窟がある

抱きかかえる少年は所々に傷があり血が出ていた

手当のために3人は洞窟に身を潜めた

響音は持っていた包帯と消毒液を使って少年の体を

治療して行く、その手つきは非常に手馴れていた


「ほわぁ……お上手ですね、ヒビネ君」


「うん……慣れてるからね……」


「……ヒビネ君、変なことに色々慣れてますね?」

「さっきの川を渡った時も……怪我に慣れたり……」


「……えーと、『元気な妹と色々な場所に行って、そこでよく怪我してたから、慣れてるんだ』」


「妹さんがいるんですね……!」


「……」


嘘だ

響音に妹なんていない

ましてや慣れてる理由は自分の怪我を隠すためだった


このすらすらと述べた嘘はルシュによるものだった


──アノセ以外から来たことを話さない方がいい


これは養成所に出かける前の日

べスキア夫妻、響音とルシュで食事の際に

フォルに言われた事だった


アノセ以外から来たと言うと、今はかなり警戒される……

理由としては魔獣の上位種……「魔人」の存在よるものだ


噂のような存在……知識を得た魔獣が進化すると

人と全く同じの見た目の「魔人」となる


べスキア夫妻この話をルシュの父親、ゼノンから聞いていたようだった、現在から約20年ほど前……


言葉を話す──魔人が観測された

魔獣と同じ赤い目をした、青い影が揺れる

しかしこの話は、王下直属部隊の中で記録が抹消され

魔人はその後姿をくらましたらしいが……


「もしもアノセの外から来た……というのが信じて貰えなかった時、何をされるかわからない……特に試験は王下直属部隊もいるはずだから……」


と、フォルさんに念押しをされたのだった


これの対策のために、響音とルシュは外から来た事がバレないよう、色々設定をしたのだった


クロード・ヒビネ 好きな食べ物はパン

両親は他界、妹がいたがそれも魔獣に襲われて死亡

同じ思いを他人にさせない為に今回の試験にきた


大まかな設定を貼り付けて自分に関する質問が来た時の回答などもいろいろ用意された


これがアノセでの黒海堂響音……

もとい、クロード・ヒビネであった


「……『魔獣に襲われて亡くなったんだけどね』」


「あっ……」


「『同じ思いをさせない為に……今回の試験に来たんだ』……」


「……!」


我ながら嘘をつくのは気が引ける……と思いながら

響音は少年の治療を終える


「ありがとう……おにいさん」


「……ううん、だいじょうぶ?」


少年は答えると立ち上がる

外の方を指さす


「……お母さんが待ってるの、早く出ないと」


「そういえば、君はなんでここに……?」


「お母さん……病気で……治らなくて……」

「そしたら本に……金色のヨノクを食べると……治らない病気も治らなくて……」


少年は懐から一冊の本を出すと真ん中のページを開く

そこには「金色のヨノク」というタイトルで書かれた……

御伽噺の1節だった


「これは……」


レアはすぐにこれは存在しないものだとわかった

しかしこんな子供に純粋無垢な子供に対してどう伝えればいいかと考えていた


「わかった……じゃあ一緒に探しに行こう……」


響音はなんの迷いもなく、少年に声をかけた


「でもいま……試験の途中だから……」

「一旦大きい建物まで……行こうか」


少年は笑顔になって首を上下に振る


「レア……そろそろ……行く?」


「あっ……はい!」


3人は洞窟を出るとそのまま養成所に向かった

幸いも魔獣も近くにおらず、何もないまま養成所に着く

着いた時には他にも色々と人がおり、響音とレアのペアは最後の方に到着したようだ


最初に声をかけてくれたのはデルガリヒだった


「おう!お帰りお二人さん……ん?その子は?」


「森の中で迷い込んでしまったようです」

「一旦、保護をお願いできませんか?」


「迷い込んだぁ?理由はなんであれ養成所の森は生徒以外は立ち入り禁止なんだが……まぁいいか」


デルガリヒは少年と少し言葉を交わすと養成所の方に少年を走らせる


「……そうだ!あと魔獣を確認しました狼型の魔獣、一般級だとは思うのですが……」


「何?それは本当か?」


デルガリヒの目付きが険しくなる


「事実です」


「僕も……見ました」


響音の同意もありデルガリヒは

耳元を抑えながら話し出す


「あー、俺だ 悪いが森の中をエリアに分けて捜索してくれ、魔獣が発生してる可能性がある、何かわかったらまた連絡くれ」


デルガリヒは誰かに命令を伝えると再びこちらを向く


「これで一旦は大丈夫だ、お前らで最後だからこっち来てくれ」

「合否を発表するぞ──」


デルガリヒはニヤリ、と笑う


───────────────────────


「ふざけんじゃねぇ!!!!!!!!!!」


そして場面は──オルトが怒号を上げた所まで戻る

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