Act15 王立試験 2日目 朝
危ない!間に合った!
2日目の朝が来た
1日目の夜は場を理解できなかったルシュが
「失礼しましたー!!!」と僕を抱えて養成所の横にある
寮にまで逃げ込んたのが最初の始まりだった
そのあと2人で自己採点をして
響音は94点、ルシュは86点だった
「うわーん!納得できない!!!」と
ルシュも1人部屋に戻って言った
響音もそのまま部屋に戻りそのまま眠り
1日目は終わったのだった
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少しだけ時間が戻り、1日目の深夜
養成所内の一室では
王下直属部隊のカマリとキリナ、そしてもう1人
王下直属部隊【四聖】隊長
ヴィクシー・Y・アグロニアが筆記試験の採点を行っていた
「うーん、やっぱり今回からガラッと試験内容が変更されたのもありますけど、やっぱり合格点の85点を取れない人は結構いるッスね〜」
キリナがクルクルとペンを回しながら採点をしている
「最初は80点以上で合格って事やけど……まさか直前に85点に変更とはアリシアもようわからん事するわぁ♡」
「あっ……最初に自己紹介までしたのになんでLとR間違えるんやろなぁ……」
問題にあった現王下直属部隊の6人を答える問題で
自分の名前が間違ってることにショックを受けるカマリ
「……まぁ、私達も部隊に選ばれてから初めての試験官ですからね……、一年前はこんなことになるとは思ってもいませんでしたから」
口調は柔らかくとも採点をする手捌きは一人前の
ヴィクシーが懐かしむ顔をしながら採点していた
「17歳で王城に配属してそこから1年で隊長ですからね〜本当に凄いッスよあの子は」
「厳密には隊長になったのは配属されてからたったの半年でしたからね……厄災級魔獣を討伐、四大精霊へ会いに行ってまさか光の精霊の場所まで行くとは……過去にも見た事ない人ですよ」
「そこからローガン様以外の王下直属部隊を総入れ替え……もう何が何だかわからないまま私らも配属になったからねぇ♡」
王下直属部隊はおよそ半年前──全てが生まれ変わった
まず初めにアリシアは異常な速度で功績を半年内で重ねた
本来は様々な功績を長い期間積み重ねた上で選ばれる王下直属部隊、だが
国の最高峰部隊と言っても内部は正直ずさんなものであった、皇族贔屓、年功序列、金銭取引問題等々……
会社でいえば「上層部のみで上から順番でいいでしょ!」
くらいの勢いで作られていたのは事実である
それをアリシアは1人で全てを塗り替えた
皇族などお構い無しに除籍、金銭取引問題は全て晒してから吊し上げ、歳だけとった隊長は若く実力のある物に総入れ替えするなど──
無論これは当時多くの反感を受けた(特に皇族から)
これに対しアリシアは
「私の代から全てを変えますので、申し訳ございません」
ただ1つ
「お前が勝手に部隊を決めるならそれは先人と同じなのでは無いか」という質問にだけ
「私はアヴェルニア王国の城下町と行ける所までの村の人間は名前から適正魔術まで全て知っています」
その場にいた人間の名前から功績まで
全てをこと細かく伝えるとその場は静かになったという
それ以外にも南国ヴァルテンのトップと会談、燃料鉱山の発見、安全な陸路の配備など様々なことをしてきたが
それはまた別のお話である
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そして朝……
「……はー!終わったッス〜!」
前日の夜の8時頃から初め外は日が昇っていた
時刻は朝の9時、外を覗くと一部の試験者は日課の鍛錬を行っていた
「途中で寝ちゃってたけどね……キリナ」
「や……すいません」
「まぁ……熟睡してるカマリもいますし」
カマリはソファの上で満足そうに眠っていた
「とはいえ眠いですね……あと1時間もすれば試験者を集めないといけませんし……」
「そ、だから今日はここで交代だぜ」
ドアの外から男性の声が聞こえる
「入って大丈夫か?」
「はい、どうぞ」
部屋の中に2人の男女が入ってきた
1人はアリシア、もう1人は……
「眠そうだな3人とも……1人は寝てるか」
王下直属部隊 【三帝】隊長 デルガリヒ・アフルレイド
赤髪が特徴の気さくな男だ
「あれ……?交代なんてあるんスか?」
「あるに決まってるだろ……昨日からほぼ1日経ってんだぞ、時代が時代なら殺されてるぞ」
「申し訳ありません、御三方、本来は昨日の18時に来る予定だったのですが、色々問題がありまして」
「ただ……目的は果たせましたので」
アリシアはそう言うと3人目の人物を部屋の中に入れる
「その方が?」
「はい、次の試験に早速参加して頂きます」
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王立試験 2日目 10時
「おはよう諸君、デルガリヒ・アルフレドだ」
昨日の女性ではなく男性が立っていた
「早速だが本日の試験を開始する」
「まずは我らがアリシアより伝えることがあるぞ」
軽く挨拶をしたあとアリシアに場を譲る
アリシアは1枚の紙を持ちながら前に出る
「おはようございます皆様、王下直属部隊【一凪】隊長」
「アリシア・ピァーニと申します」
目の前に彼女が立つだけで
周囲の皆が騒ぎ出す、18歳にして【一凪】の隊長と言うのは若者にとっても希望の星に見えるからだろう
「早速ですが先日の筆記試験の結果から本日の脱落者をお伝えします、呼ばれた方は養成所のホールに来てください」
その一言で一気に場の空気が凍りつく
それもそうである、なぜなら本来3日間の試験が全終了してから合否の発表があるからである
「あっ……あのアリシア様!」
「はい、どうしました?」
「あの……ひ、筆記のみで脱落者が決まるのですか?」
「はい、そうですが」
「え……」
1人の男性が絶望した顔でアリシアを見つめる
「ま……待ってください!自分はこの日のためにずっと鍛錬を続けて来たのです!それがこんな……、あんまりではないでしょうか!?」
「力があっても頭脳と常識が無くては意味がありません、事実、我々王下直属部隊が一新する前は権力と皇族の上層しかおらず何も役に立っておりません」
「しかしながら私が【一凪】の隊長となり一新した結果はここ半年以内で民と王城内からは良い声を頂いています、隣国のヴァルテンとも交易が繋がりましたし、力よりもまず常識の方が重要だと思いました」
「……何かありますか?」
「……………………いえ、なにも」
「では名前を呼びます──」
そのあと30分くらいをかけ名前を読み上げて言った
呼ばれた人は泣くものや次の準備をする者もいた
呼ばれた全員が養成所内に戻ると
残った人に向けて再度話を始めた
「今この場にいる皆様、おめでとう」
「あと2日、残れるように励んでください」
そう呟くとアリシアは壇上から下がり
養成所の方へ消えていった
最初にいた人数は316人──
名前を呼ばれたのは……235人
残り人数は81人
「……初の試みによる試験とはいえ、ここまで減るものか……」
デルガリヒはくすんだ顔になる
響音は辺りを見回す
レセナ、オルト、アシュレイの3人は見える
そして……
「ヒビネ……!良かった……」
ルシュも残っていた
「ルシュ……よかった……」
2人はお互いに抱きついていた
「さ!友達、恋人のと再会出来たら次の場所に行くぞ」
「次の試験会場はフィールドエリアだ」
デルガリヒは森の奥へと歩いていった
王立試験、2日目が始まる