Act13 王立試験 1日目 試験の後で
昨日は申し訳ないです!
本日はあと一本上がります!
試験中──
(終わった…)
響音は開始60分ほどで全ての問題を埋めていた
不明な問題が5問程出題されていたが
それ以外はルシュと家にあった書物の内容でほぼ埋める事ができた
響音は理屈が分からないが誰も座ってない机の間をぬって
室内の外に出る
試験前にルシュより
「早く終わったら退室して左奥の休憩場所にいて!」
と言われていたので響音は向かっていた
左奥の休憩所にはテーブルと横長のソファが3つ置いてあった、そこに人影がふたつ見える
1人は黒く長い髪の女の子、もう1人は銀髪の男の子だ
「あら……?次はオルト様辺りだと思ってたんですが……」
女性は起立してこちらに向かってきた
──大きい、響音は少し後ろに下がる
生物の本能を垣間見た女の子は腰を少し下げる
「怖がらせてしまいましたか?私、レセナ・T・カロットと言います、よろしくお願いします」
レセナは右手を前に出す
その瞬間響音はビクリと目をつぶる
響音はいままで対面してきた人はルシュとアリシア、そしてべスキア夫妻のみだった
ルシュは襲われている際に助けに入り
アリシアは混乱してるさいに話しかけられ
べスキア夫妻はルシュ経由で話すことが出来た
なので響音は完全素面の状態で
アヴェルニアの人間ときちんと会話するのはこれが初めて
であった、しかも出てきたのは「手」
過去に受けた暴力を思い出すのは仕方がなかった
「あの……ごめん……なさい」
響音は振り返ってその場を離れようとする
しかしたまたま後ろにいた人にぶつかる
そこには今にも怒りそうな顔の男が立つ
「あ?誰だお前」
「あら……オルト様」
背丈は少し上くらいの顔にタトゥーの入った
青年が見下ろしていた
「ひ……」
前からも後ろからも知らない人間に挟まれた響音は
今にも嘔吐しそうな顔になる
「おい……人の顔みて失礼だろうが」
オルトと呼ばれた青年は響音の肩を掴む
その瞬間響音はついに声を上げてしまう
「やめて!!!」
響音はその場に耳を塞いで蹲る
──響音の瞳が一瞬、紫色に光る
「うおっ!?」「あ……っ?」「……!」
その場にいた響音を除く3人が強烈な倦怠感に襲われる
一瞬ではあったが3人の体に何か異常が起こっていた
響音が次に目を開けた時
目の前にあったのは手のひらだった
「大丈夫ッスか?」
後ろから声が聞こえた
今、おそらく後ろから手で目隠しを軽くされている状況であった
視界が暗いと少しだけ落ち着いていく
目の前にあった手は徐々に晴れていき
頭を優しく撫でられる
「深呼吸しましょ〜、はい吸って〜吐いて〜」
頭から手が離れるとゆっくりと声の主の体が目線を合わせながら下がってくる。
知らないうちに両手を握りながらうずくまる響音と完全に声の主と目線があった
褐色肌に短い髪型──武闘家を思わせる服に身を包んだ
女性が膝を着いて座っていた
次に女性は響音の頬を両手で包む
体温が非常に高いのか、心臓の音は一定にまで下がった
「キミ、落ち着いたっスか?」
「……あ、う……あい」
女性は手を握ったまま一緒に立ち上がり
自分が来ていた羽織を響音に被せる
「……キ、キリナ様……」
レセナは目の前にいる女性に酷く困惑していた
それもそのはず、今目の前にいるこの女性
「さて……理由を説明してもらうッスよ?」
王下直属部隊 【六導】隊長
キリナ・コンラージュ
アリシアの次に若い王下直属部隊の隊長であった