Act12 王立試験 1日目の試験前
明日投稿すれば2週間連続投稿!
なんか変なのは一個あるけど……
恐らく300人くらいの人が着席した
響音とルシュは離れた位置にいた
(大丈夫かな……)
響音はパーカーのフードを掴みながら苦い顔をした
周囲の人を見ると全員が落ち着いた表情をしている
響音は前から2番の列に座っている
「それじゃあ試験を開始しますよ♡」
カマリが腕を振りながら声を出す
「時間は180分♡途中で終わりでよければ用紙を袋に入れて退室して」
「もちろん私は【五幻】の隊長なので──」
その言葉と共に……室内は響音とカマリだけになった
「……あれ?」
響音はその場に起立する
「…………あら?♡」
バチリとカマリと目が合う
カマリは目を丸くしたあと目を細める
「……ごめんなぁ?キミ……大丈夫だから座ってええで♡」
「あ……ごめんなさい」
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カマリ・R・アランセルは自分を落ち着かせるために
髪の毛を執拗に触っていた
今この室内には2つの魔術が巡らせてある
ひとつは隠霧魔術
これは単純で、範囲にあるものを
極限まで視認しにくくする
人が使う魔術ではなく教室内に貼られた魔術痕を利用した魔術
もうひとつはカマリの使う支配魔術
自分が設定した魔力の量を下回る生命を視認する事で
命令を下せる魔術
ただし対象が多ければ多いほど高度な命令をこなせなくなる、例えば他者に「自分の首を落とせ」と命令する場合
まずその言葉を認識できる生命体、対象は1人と制限がかかる
さらに支配魔術第三級禁忌指定魔術──
そもそも使うこと自体が禁止なのである
なのでこれを使えるのはアヴェルニアでただ1人
王下直属部隊 【五幻】精神魔術のエリート「R」を持つ
カマリだけなのである
王下直属部隊の信頼と国王の誓約により
カマリに許可が降りている
先に紹介した隠霧の弱点として
意識すれば見える、動けば普通に見える……という点
なので今回カマリはこれと合わせて
室内にいるおよそ300人に「椅子から立たない」
という命令を下していた
「椅子から立たない」なので倒れれば動けるし
それ以外の攻撃も何もかも行動ができるので
300人に下せる命令としては
ギリギリの支配になっていた
が──
今この目の前にいる子は
いとも容易くその場を立った
「…………あら?♡」
(……は?)
黄色いあまり見ない服を着てる少年が
間違いなく驚いた表情で私を見つめていた
(私が設定した魔力は自分の最大魔力量のはず……!)
今回のこの試験は──皇族級の人間が
4人居るのは知っていた
ヴィクシーの妹ちゃん…… 「Y」の冠
水魔術の始祖……「T」の冠
風魔術の始祖……「U」の冠
最後の一人は……皇族最強と言われる……
現国王アヴェルニアの理解者「C」の冠、最高傑作
この4人が──魔力を超えるならまだわかる
だけど今目の前にいるのは
何も分からない、誰だ?
私が知らない皇族?
考えてもわからない、ただわかるのは
このこの魔力量は私の魔力量を超えてる
ただそれだけ
(とんでもない才能……?いや……それにしては申し訳ないけどオーラも特に感じられませんわぁ……?)
(変に行動しても……あれやね……)
「……ごめんなぁ?キミ……大丈夫だから座ってええで♡」
よく分からないことは、後で考えることにした
「……はい!それじゃあ試験開始♡」