Act1 黒海堂響音 15歳
初めまして、へびうろこと申します
以前は脊髄という名前で投稿をしてました
本日より月末まで毎日投稿となります!
よろしくお願いします!
……続いてのニュースです
……県 ……市の住宅で男性1人の遺体と……重体の女性が発見されました……
亡くなった男性は 神阿 光大 27歳……
女性は意識不明の状態で病院へ運ばれました……
この住宅には被害者の神阿さんと……
その子供と思われる少年の2人が住んでいましたが……
少年の方は現在……行方が分からないとして……
警察は重要参考人として捜査を続けています……
──
常識というのは恐ろしいものである
毎日食事をとること、毎日睡眠をとること
毎日お風呂に入ること、毎日歯磨きをすること
誰もが同じことを思い、誰もが同じ行動をする
だからこそ、この少年は
自分が暴力を受けていることを「常識」だと
死ぬまで疑うことなく、思っていた
──死んでなかった場合は除くものとする
黒海堂響音は父親である神阿光大にバットで撲殺された
何発殴られたかは覚えてないが、両手両足で数えても足りないのは確かだ
最後の一撃は後頭部への重い攻撃
常に暴力を受けてきた響音にとっても「死」という概念が生まれた
死んだ後は天国に行くと月に数回しか行かなかった
先生に教えてもらった
学校にも行けない悪い奴は地獄行きだろうなと
隣に座っていた男子は言っていた
天国だか地獄だかは知らないが、寒い
体全身が水に包まれてるような心地であった
小学校3年生の時のプール開きで
響音は1人の女の子を泣かせてしまった
今でこそ理由はよくわかっていないが
女の子曰く、この傷まみれの体は変だと
その日の夜は家に大人の人が来たのを覚えてる
父親は頭を下げていたけど、その日の夜は特に殴られたのを覚えてる
次の日からは学校にも行かなくなり
月に数回の学校だけに行き、そのまま中学生になった
中学生の時はクラスではなくて特別なクラスになると
父親に教えてもらった
特別なクラスということもあり
先生と僕、あとは男女2人の4人の教室だった
そんな昔……昔でもない記憶を思い返していると
心地よい感覚は徐々に苦しいに変わっていく
自分が水の中にいるとようやくわかると急いで
僅かな光がある方向に顔を上げた
どんな大海の中に居たのだろうと顔を水面からあげると
なんとも小さな湖だった深さは自分の身長はすっぽり入る程の深さで……なんとも情けないが25mプールの中で苦しんでいたらしい
陸に這い上がったあと 周囲を確認すれば
天にまで届く木々と空には黄色……いや赤黒い月が浮かぶ
時間帯は夜であろう、真っ暗で何も見えない
ただ近くに光があることに気づく
とても明るいという訳では無いがこの暗さなら
容易に気づくことが出来る光だ
その光の先に
明らかに、1人の人間が木にもたれかかっており
それを襲わんとする者がいた
人の背丈はおそらぬ自分より小さい
対して襲っている方は自分の2倍以上はある
人ではない、恐らく獣
こちらの世界で言うと……熊?
先生に「世界には自分の身長の2倍位の熊がいる!」と
教えてくれていたが本当に存在したとは
冷たくなっていた体がさらに冷たくなる
大きな熊のような獣は大きく手を上にあげる
手先についた月の光に反射したのは恐らく爪
体は勝手に動く、いまにも倒れ込みそうな人に向かって
ふたつの影の間に割って入っていた時には
大きな獣の腕は脳天に直撃していた
つい先程バットで殴られたばかりなのに……
そこで僕の意識は、完全に無くなっていた