黒い翼
『ぴーちゃん、気を付けて行くのよ』
『拾い食いは、真似してはいかんよ』
「そんな事してないぞ!」
「フフフッ、クロも行きましょう?」
「「「 行ってきます! 」」」
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「おーい!ミケ!」
「おや?今日は大人数なんだね?」
「今日から、ぴーちゃんとクロが一緒なんだ!」
「白い鳥がぴーちゃんよ。黒いネコがクロ。よろしくね。」
「初めまして。ミケっていうんだ。よろしく。」
ミケはネコの姿になって、クロとぴーちゃんにスリスリして挨拶している。
その後三匹で何やら会話していたが、何を話していたのだろう。
「そうだ、次の階層に行きたいんだろう?」
「そうだけど…急いでいるわけでもないわ。」
「そうかい?滝は無いけれど、この階層を抜ける階段ならあるよ」
「…そうか。教えてくれるのかい?」
「ああ、あの山の向こうに祠があるんだ。着いて来なよ。」
クロは余程ミケが気に入ったのか、しきりにチョッカイを出している。ミケも楽しそうに戯れて遊んでいた。
ぴーちゃんも知らないところに来て嬉しいのだろう。飛び回っては坊の頭に止まり。また飛び立ってを繰り返していた。
「綺麗な景色だわ。こんな景色を見ずに寝ているだけなんて勿体ないわね。」
「里の皆も同じ景色を見ているのさ。夢の中でね。」
すると、突然クロが震え出した。毛を逆立てて固まっている。
「クロ!どうしたの!?」
「大丈夫か!」
一際大きくぶるっと震えて走り出すと、
「…飛んだわ」
「すげー!クロ!すげー!!」
何とクロの背には真っ黒な翼が生えたではないか。
「クロずるしちゃダメだよ?」
ミケもぴょんと飛び跳ねると、身體と同じ三色模様の翼が生えて、クロを追いかけていった。
「…ネコって、飛べたんだね」
「…割と普通なのかも知れないわ」
「ネコってすげーな!」
『ぴーぴー!』
ぴーちゃんも、嬉しそうだ。
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「ほら、見てごらんよ。」
「あの祠ね。清らかな繋がりを感じるわ!」
「ミケ、俺達の仲間になってくれないかい?」
「え?俺が?いや……」
「ミケが里の皆んなから離れたくない気持ちもよく分かるさ。でもさ、」
「俺、昨日のアルバムが、それを見たミケの顔が、どうしても忘れられないんだ。」
「…………」
「戻る気になればいつでも戻って来れるしさ!一緒に遠い湖を見に行こうぜ!」
クロもぴーちゃんもミケに身體を寄せてくる。
「……そうだな。それもいいか。」
ミケもクロとぴーちゃんにスリスリする。
「皆んな、ありがとう!これからよろしくね!」
こうして、ミケも加わり一気に賑やかになったのだった。
俺は昨日の最後のページが頭から離れなかった。
動画の中の小さな男の子が抱いていたのは、間違いなくミケだった。
夢の中のミケは幸せそうに男の子にスリスリしていた。
それを見ていたミケの悲しい顔が、どうしても忘れられなかったのだった。




