心の強さ
サラと宮川は、達也がこの恵みの大地でどのように暮らし、どうして鏡面界へと渡ったのか、殆ど知らなかった。
知りたいと思う気持ちはあったが、探る事は何か違う気がしていたのだった。
「そうだったのね。」
『ババ様、龍神様が後程、お話に伺うと仰っていました。』
「分かりましたよ。あの悪寒は爺さんだったのね。」
『……で、では私は戻りますね』
シロは、若返って往年の力を取り戻したババ様の感のよさに気圧されてしまう。
宮川は静かにババ様を見ている。
「ババ様?私達は何をすれば良いのかしら?」
「何も変わらないさ。何も出来ないしね。これは私達には天災と同じ。神々の理であるのだからね。」
「それ程の事なのですね。トカゲとの争いとは比べられないほどの」
サラには事態の深刻さはまだ測りきれなかった。
「でもね。私達は恵みの神様の祝福を存分に受けて生きている。その感謝を忘れない事だよ。疑い、不安な感情を抱くとつけ込まれるのさ。」
「そうだな」
ヒロとアキは、心の世界での経験がある。この話は良く理解出来た。
そこで宮川が口を開く、
「ババ様、闇の種と闘った時の達也様は、どの位の実力をお持ちだったのですか?」
「例えが難しいけれど。そうだね、やろうと思えば、ここからお月様くらいは真っ二つに斬れただろうね」
「……それでも滅せなかったと?」
「だから天災なのさ」
サラはやっと事の深刻さが理解出来たようだ。
「なんて事……」
「サラ。心の強さと力の強さとは、また違うものなんだよ。サラが思っているよりずっとね。」
ババ様は優しくサラを抱きしめる。
「私達には強い繋がりがある。暖かな家族がいる。恵みの神様も見守っていてくださる。何も疑い、不安になる事など無いのよ。」




