決意
古龍には言い伝えがある。
この地に平和が満ちる時、追いやられた闇が集まり種となる。
その種は宿主を探し出し、その宿主を食い尽くして、その花を咲かす。
『私達は、達也を守ろうと闘った。達也も、私達を守ろうと必死だったわ。』
『それで達也は結局、自らを餌に闇の種を誘き寄せて、自分諸共、闇の種を消滅させたの。その時、達也の魂の一部が鏡面界へと辿り着いたのよ。』
「そう…パパはそれで鏡面界へ…」
『達也は極端に弱体化していたでしょうね。強い力を持つ、私や雪乃では鏡面界に渡れなかった。助けられなかったわ。そして、今回狙われているのは、カイよ。』
『同じ過ちは、決して繰り返しはしない。皆で立ち向かうのじゃ。誰も犠牲になってはならぬよ。』
『龍神様やマーサも動いてくれているわ。今回は、カイに張ってあった結界で弾けたけれど、龍神様の結界は抜かれているの。もう油断は出来ません。』
「対抗する手段は、あるの?」
『決して闇を受け入れない事じゃな。如何に奴と言えど、宿主の許可無く宿ることは出来んのじゃ』
『だからこそ、様々な弱みに付け込んで、落とそうとして来るはずよ。』
『それに種とは言うが、実体が有る訳では無いのじゃ。誰かに宿る前は、強い封印をするしかないのじゃよ。』
『今はまだ私と雪乃、それに龍神様の力が上回っています。種の力が私達を上回れば封印は出来ません。時間との勝負でもあります。』
「オレ達じゃ、敵わないんだな。」
『フレアでも無理じゃろうな。』
「………」
『しかし、及ばずとも、少しでも力を付けておくことじゃ。』
カイとレイヤ、坊は決意を持って頷く。
『この階層を封鎖する結界を張るから、カイ達はこの階層で修練するしかないわね。』
「良く分かったよ。」
『ええ。私は暫く龍神様と行動するわ。』
「シロさん、絶対無理はしないでね。」
シロは微笑んで頷くと、一人ひとり強く抱きしめた。
『行ってくるわね。』
薄く明けていく空。少しひんやりとした朝の風が流れている。
皆んなが見送るなかで、シロは森へ消えて行った。




