小さな誤解
次の日の朝、柳は冒険者ギルドの用事で、宮川を手伝いにホテルへと帰って行った。
坊とレイヤは、もうすっかりこの家の家族になっている。
朝ごはんの片付けをしながら、
『世界樹まで行くのじゃったら、蜂蜜をもらってきてほしいのじゃ』
「蜂蜜って、誰にもらったらいいのかしら?」
『皆が会いに行くお婆さんがくれるわよ?シロに頼まれたと言ってね?』
「わかったわ」
どうやら、レイヤも俺達と一緒に行くらしい。知らない間に色々決まったようだ。多分、昨日の女子会で決まったのだと思うが、俺達に通達は無い。
『気を付けて行くんじゃぞ』
「はい、行ってきます」
俺達はレイヤ隊長に連れられて出発した。
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ここから世界樹まではかなり歩くので、途中でそれに気付いた俺達はレイヤに水鏡を出してもらった。
「うわー!見晴らしがいいな!」
そう、昨日レイヤはフレアに連れられて来たので、水鏡を出た所は雲に近い程高い場所だった。
「少し景色を見て行こうぜ!」
「ええ、何度見ても素晴らしいわ!」
ここがダンジョンの中だとは思えないほど広く広がる世界は、見える限り何処までも続いている。
「坊、レイヤ。俺達の目的地まで凄く遠いっていうのは知ってると思うけど、本当に遠いんだ。」
「シロさんも言ってたわね」
「フレアも言ってたな!」
「シロも雪乃もあの湖に行った事があるらしくてさ。シロで300年、雪乃でも400年かかったらしいよ?」
「結構遠いな!」
「いやいや、無理でしょう。私そんなに長生き出来ないわよ」
「だよね、そうなんだよ。」
「私、ババ様からカイのこと聞いたわ」
「………」
「パパと同じ魂を持ってる事や、カイが龍だって事も」
「なんだ、カイは爺さんと同じなんだな!」
「成りかけらしいよ?自分では分からないけどね。」
「私も龍の血が流れてるらしいから、付いていける所まで一緒に行きたいの。」
「もちろんさ!なあ、カイ!」
「え?俺達の隊長はレイヤに決まったんじゃないの?」
「?」
「昨日の女子会で…」
「……カイ。あなた、覗いてたわね…。」
「え?ち、違うよ?それは違うよ?」
カイはそれから暫く、レイヤから変態呼ばわりされてしまうのであった。
「いや、ホントに違うってば!」
「近寄らないで!変態!」




