ヒロとアキ
「おはよう。」
シイは毎日ヒロとアキの元を訪れていた。今日も温かな食事を届けに来たのだ。
「いつもありがとう。アキもかなり回復して来たから、ババ様に挨拶に行きたいと思うんだ。」
「私、ちゃんとお礼が言いたいわ。まだ皆んなの顔も知らないんですもの。」
「そうだな。食事が済んだら行ってみるか?」
「ええ、お願いするわ」
「悪いが少し待っていてくれ。」
「いや、一度戻って、ババ様に伝えてから、また戻って来よう」
「そうか、わかった。よろしく頼むよ。」
アキは顔色も良く、本当に元気になっていた。
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「よく来たね、寒いから早くお入り」
「はい、お邪魔します」
「体調はどうだい?」
「前よりも元気なくらいです。」
「さあ、こっちにお座り」
ババ様は暖かな敷物を敷いた所にアキを座らせる。
「いいかい、身重のときは絶対に冷やしては駄目なんだよ」
「はい、ありがとうございます」
「ババ様、シイ、改めてお礼を言わせてくれ。俺達家族を助けてくれてありがとう」
「本当にありがとうございました。」
「アキ、貴女も、この村の大切な仲間さ。仲間は助け合うものなんだ。当然のことだよ。」
アキは目に涙を浮かべて、
「ババ様、ありがとう」
「うんうん。そうだ、貴方達、この家に来ないかい?私はアキとお腹の子が心配でならないんだよ」
「いいんですか?」
「ああ、このババの為にもそうしておくれ。」
「ヒロ、甘えさせてもらいましょう?」
「うん、ババ様、よろしくお願いします。」
「うんうん。これで安心できるよ」
「カイは出かけてるの?」
ババ様はシイの顔を見て、
「呆れた。シイ、何も話してないのかい?」
「話すのは苦手だ。ババ様に任せる」
「まったく、しょうがないね」
こうして、ユーパロ村に住むことになったヒロとアキは、恵みの大地での人生を歩み始めたのだった。




