古龍の逸話
『龍神様、シロです。』
「おはいり」
『ご無沙汰しております』
「元気そうじゃな。達也は残念であったのう」
『………はい。あれ以来ですね』
「………」
『………』
「…カイの事じゃな?」
『はい』
「あれのことは、わしにもよう分からん。じゃが、良からぬものが生まれたのは確かじゃ」
『闇にまつわるものでしょうか』
「そうじゃ。達也の時と同じ波動を感じた。お主もであろう?」
『はい。放ってはおけません』
「じゃが厄介じゃ、ここは広過ぎる。見つける頃には手遅れかも知れん」
『…………』
「カイが狙われておるのは間違いない。お主らがカイを守ろうとする様に、カイもまたお主らを守ろうとするじゃろう。」
『……………』
「余り時間は無いかも知れん。わしも動くとしよう」
『ありがとう御座います。』
「無茶をするでないぞ」
『はい』
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古龍には言い伝えがある。
この地に平和が満ちる時、追いやられた闇が集まり種となる。
その種は宿主を探し出し、その宿主を食い尽くして、その花を咲かす。
達也は自らその種を宿して、私達を守るために自らを闇と共に滅ぼした。
その時の魂の欠片が鏡面界へと流れ着いたのだ。
シロは再び闇の種の気配を感じている。
カイは守り抜いてみせる。
この命に代えても。




